以前 cybercat さんが紹介されていた、中国Hisenior Audio製の超低価格Custom In-Ear Monitor(CIEM)、T2 Customを私も購入してみました。
T2 CustomはHisenior Audioの製品ラインナップの中でも圧倒的に安価なことが特徴なCIEMで、一応基準価格は$299と示されていますが、今のところ公式サイト上の製品情報では常に値引きがかかっていて$169が実質的な標準価格となっています。そして年間数回程度特価セールが開催されて、そこからさらに$50程度の値引きがかかりますので、安い時期であれば$119でCIEMが製作できるというわけです。
今回は一つ上のFe3 Custom(3BA)も$399から$80引きとなっていてどちらを頼むか悩んだのですが、私は今までCIEMを作ったことがなく、お試し感が強かったので素直に安価なT2 Customの方を選択しました。
製作の流れは cybercat さんが詳細に説明されていますので、注文の流れは簡単に以下に示しておきます。
まず、私の場合は前回のセール時に公式サイトでアカウントを作ってありましたので、T2 Customの商品ページから注文を行います。支払い方法にはPayPalを指定しました。これが3月4日の20時過ぎです。この時点で$119をPayPalで支払うと、14,354円となりました。円安が進行してしまっていましたね…。
すると約1時間後にHisenior AudioのGareth氏からインプレッション(耳型)を採取するよう指示が来ます。インプレッション作成時の注意点が書かれていて、面倒であればこれを相手に見せれば理解できるはず、となっていました。
丁度翌日はスケジュールが空いていて、秋葉原に行く用事もありましたので、eイヤホンの秋葉原カスタム館地下にあるリスニングラボでインプレッションを作成しました。バイトブロック(上の写真で歯で噛んでいるもの)を使う形だったため、採取代5,000円+バイトブロック代500円の計5,500円で作成しています。
その日の夕方に作成したインプレッションの写真をいろいろな角度から撮影し、Gareth氏にメールで送りました。
翌日Gareth氏から返信があり、インプレッションに問題は無いので、EMSでHisenior Audio宛てに送るよう指示がありました。
その日のうちにEMSのサイト上で送付情報を作成して、翌日(3月7日)に地元郵便局から発送しました。送料は1,300円でした。EMS送付時の注意点もGareth氏から送られてきていて、内容物の価値を$10とすることなどが記載(関税が課せられる可能性を回避するため)されています。
EMS発送時にステータス更新ごとに通知が来るように設定していましたが、配達完了通知が来たのは発送から10日後となる3月17日でした。そこからGareth氏から受領したとメールが来たのは3月20日です。この通知でデザインをどうするか尋ねられましたので、サイト上またはメールで知らされていたデザインリストから選んで指定します。私は特にデザインに対するこだわりがなかったので、いかにも普通のCIEMっぽいデザインを選んで返答しています。
その後デザイン案を確認したという通知があり、完成時にDHLまたはFEDEXの配達(所要時間7~10日)を希望する場合には指定のアカウントに$30をPayPalで送金しておいてほしいと連絡があります。当初は素直に無料のChina Post便(所要時間30~45日程度)を使う予定でしたが、世界情勢の不安定さを考慮して結局$30送金しておきました。
すると1日少々経過した3月22日に写真が送られてきて、このように完成したと通知が来ました。きちんと指定デザインであることを確認すると、そこから何故か6日程経過した3月28日になって、Hiseniorのメールアカウントから完成品を発送したと連絡があり、4月5日になって私の手元に到着しました。
内容物はイヤフォン本体以外にはケーブル、クリーニングクロス、クリーニングツールといったところです。なお、今回端子形状はCIEM 2Pinを選択していますが、MMCX端子を選択することも可能です。
シェルはトランスルーセント(透明)にして、フェイスプレートはシェルと同系統の色のラメ入りとしています。
まあ、いかにもという感じのCIEM調なデザインです。今回はデザインを全く考えていなかったので、デザインを選んでくれと言われた際に何となくこうしただけです。
気になるのはトランスルーセント部に気泡が結構多いということでしょうか。あまり長期的に使うことは考えない方が良いかもしれません。まあ、本体$119に何か文句があるかといえば何もないのですが…。
中域は充実しているがレンジは狭め
まずは添付のケーブルで試聴しましょう。DAPはCayin N6ii/R01です。
一応添付ケーブルは7N OCCの銀コートケーブルということで、それだけみれば結構まともなケーブルです。
この状態では、まず気になるのはレンジの狭さです。最低域方向は出ていませんし、高域は10kHzより手前から落ちてきている印象です。
ただ、出ている帯域、特に中低域~中域の質は思いの外良く、ヴォーカルの質は結構良好です。ドラムの音をモニターすることに向いているとのことですが、バスドラムはやや軽くスネアドラムのキレはもう一歩です。音場は2BAらしく程々に広いでしょうか。
量・質共に落ちるのは高域で、ハイハットの金属感などがあまり出てきません。出ている帯域の質は良いものの、それが狭いという弱点がはっきりしているというのが基本的な傾向です。
ただ、ケーブルの質が判断できませんので、ケーブルを私が実力を十分に把握できているBrise Audio STR7-Stdに交換してみましょう。
はっきり言ってしまえば、イヤフォン本体よりもケーブル本体の方が高価という組み合わせです。
この状態にすると印象は大きく変わります。低域は出ている範囲こそ変わらないものの、力感や解像度が別物のように向上して、バスドラムがビシビシと気持ちよく決まるようになりました。ベースラインも純正ケーブルでは輪郭がぼやけていたのですが、それが明瞭に表現されるようになります。
ヴォーカルや主旋律の楽器の質感も向上して、1万円台のイヤフォンとしては十分に評価できるレベルに到達します。
高域方向はさすがに限界がありますが、ハイハットの金属感はいくらか出てくるようになりますし、解像度もまずまずというところまで来ます。音場の広さは保たれたまま空間の明瞭度が増すので、イヤフォン自体の価格帯が上がったかのような感覚を覚えます。
イヤフォン本体よりも2倍以上という価格のケーブルはやり過ぎかも知れませんが、折角カスタムで作ったイヤフォンをそれなりに活かすのであれば選択肢としてありでしょう。
このクラスのイヤフォンを買う人はリケーブルでも所謂中華ケーブルを選んでしまうことが多いのですが、構造がシンプルな分ケーブルの質に素直に反応する傾向がありますので、きちんと素性の良いケーブルを使うべきと思います。
「CIEMとは何ぞや」を安価に実感できる
この製品の価値は、何といっても$119というイヤフォンとしてさほど高価でも無い価格でありながらカスタムメイドできるという点に尽きます。
シェルの気泡の多さを指摘しましたが、造形などのビルドクオリティは十分に高水準ですし、リフィットなど全く必要ない程きちんと自分の耳にフィットしていたというのは良い意味で予想を裏切ってくれました。
カスタムだけに遮音性が高く、没入感はかなりありますので、CIEMとはどんなものなのかを知るのにこれ以上ない程最適な選択しかも知れません。
このT2にはユニバーサルモデルのT2 Universalも用意されていますので、両方入手してカスタムとユニバーサルの違いを実感してみるのも面白そうです。作成時のやりとりを全て英語で行う必要はありますが、それ以外のハードルは低く気軽に試すのも悪くなさそうです。
-
購入金額
14,354円
-
購入日
2022年04月05日
-
購入場所
Hisenior Audio 直販
harmankardonさん
2022/04/10
こちらはまだUniversalで頑張っています.
cybercatさん
2022/04/10
ここのビルドクオリティは、価格からすると相当高いと思います。
自分のも、クリア部分に若干の筋のようなものはありましたが、形状はパーフェクト。
私はキツめになるようにインプレッションを取る工夫を知っているので、それを駆使すると、音楽流していればほぼ外の音は聞こえません。
音はおっしゃるとおり、中域はしっかりしていますが、上も下も伸びきっておらず、「高音質」という程ではないですが、CIEM体験するには最適な機種だと思います。
CIEMの面白さを知るには結構よいチョイスだと思いますね。
jive9821さん
2022/04/10
カスタムは自分自身で作らないと善し悪しが理解できませんので、
一度だけでも作ってみるべきとは思っていました。
私はユニバーサルのフィットはそこそこ良い方だと思いますので、
敢えてカスタムにこだわる必要はないのかも知れませんが、やはり
カスタムとユニバーサルは異質の存在であることが理解できます。
まあ、この製品のオーダー後にユニバーサルを5本程買っています
ので…。
jive9821さん
2022/04/10
沼に片足を軽く浸けてみただけなので、すぐに戻ります。沈むことは
無いということは確信できました。まあ、64AUDIOの製品展開に
よってはもう1つだけという可能性も否定は出来ませんが…。
私の場合IEMはほぼ外出時に使うものなので、遮音性が高いことが
むしろマイナス要素になることもあり、イヤーピースによって調整が
利くユニバーサルの利点も同時に理解できた気がします。
一度検討していたのが、64AUDIOのカスタム専用モデルをユニバーサル
形状で作って貰うことだったりします。まあ、結局対象モデル相当の
ユニバーサルが発売されたわけですが。