レビューメディア「ジグソー」

中域の明瞭さと、ポップス~ロックのビートの採りやすさが特徴。スーパーハイコスパCIEM、Hisenior Audio T2

自分の一番の趣味はあきらかに音楽鑑賞なのだが、人に迷惑掛けない環境で、時間を掛けて、十分な音量で聴く、 というのがなかなか難しく、普段は小径のスピーカー

を用いたデスクトップミュージックか、ヘッドホン/イヤホン類を用いた鑑賞になる。

 

ヘッドホンも少なからず持ってはいて、その豊かな低音と耳の外で音が鳴る自然な音場を楽しんだりしているのだが、なんせ耐久性が低い。スラックス掛けを流用したヘッドホン掛けに掛けておくだけ、という自分の保管方法も良くないのかもしれないが、長年の使用...というほど頻繁に使用し続けているわけでもないのに、耳や頭頂部のパッド部分が加水分解してしまっているのが多くなってしまった(一つ一つを乾燥剤入れた箱などに随時しまう、と言うあたりまでやればよいのだろうが、そこまではなかなか...)。

 

そこで、最近自分としての音楽試聴環境はイヤホン系が多くなっている。その時、曲調に合わせて、とっかえひっかえしながら聴くなら普通のイヤホンを選ぶが、ある程度アーティストやジャンルによって「これ」と決めて聴き込むなら、CIEM(カスタムインイヤーモニター)が第一選択となる。

 

何度がレビューでも触れているが、cybercatの耳は

・耳の穴が細い

・カラ耳(耳の中がまったく湿っていない)

・耳道が下向き開口

と、「入れづらく・滑りやすく・落ちやすい」と3拍子?揃っていて、通常のイヤホンだとイヤーチップ(イヤーピース)を吟味しないと収まりが悪い....いや、そもそもステム部分が太いと耳に入らなかったり、落ちないようロックできる部分まで押し込めなかったりする場合さえもあって、万人向けのイヤホンではキビシイ点があるものもある(一部のイヤホンで、世のレビューと自分の耳での聴こえ方が著しく違う場合があるのだが、それは、この「市販のイヤホンのいくつかは、耳の形と合わず、メーカーが想定している位置まできちんと入らない」ということに起因しているのかもと思い始めた)。

 

そういうときにはCIEM(カスタムインイヤーモニター)だ。個人の耳型を採ってそれを元にボディを造るため、イヤーチップがなくても高い密閉度が得られる。初期に造ったいくつかは自分の方も慣れていなかったので、密閉度をさらに上げるためのアプローチがこちらからはできなかったが、その後耳型の採り方のコツが判ってきて、

・口にくわえるバイトブロックは、台形の下辺部(長辺側)、割り箸なら縦向きに奥目で咥える

 ⇒要するに口を開け目に採る・・・耳型が大きめ成形になるので、できあがったCIEMも大きくなる

・必ず、「第二カーブの奥まで深めに採って」と依頼する

 ⇒いわゆるステムの部分が長くなり、抜けづらくなる

 

これらのコツがわかってから造ったCIEMは、全てフィッティング良好。

 

ただ、そうはいってもメーカーによって、採取した耳型に対して大きめに(密閉度上げ目に)造るところと、装着しやすくということなのか、やや小さめに造るところとあるようで、今まででつけた感じ一番「みっしりと詰まって」いる感じがしたのは、「HEIR AUDIO Heir 10.A」。

一方、コツがわかったあとに製作したのに、気持ちゆるめの感じがするのは、「Unique Melody MAVERICK custom」。

Unique Melodyは、前に造ったMerlinもややゆるめで、こちらはリフィットまでしてもらったので、これは多分メーカーの個性というか製造方針。でもいずれのCIEMも、イヤーチップを介したUIEMの装着具合と比較すると異次元の安定度で、これにより装着の差(ブレ)による音質の差もないため、そのCIEMの「味」を完璧に味わうことができる。フィッティングがよいCIEMを使うと、音楽に没頭できて、満足度が高いワケ。

 

CIEMは、各機種の持つ「味」を再現性良く堪能できる一方、イヤーチップの変更や耳への装着方法による音質の微調整ができないので、その時手持ちのCIEMにない味を求めて揃えていった結果、ドライバー単発こそ持っていないものの、2ウェイから多ドラマルチ、ハイブリッドまで複数台所持することになり、そろそろCIEM道も極めたかな...と思っていたのだが、2021年GWに思いがけなく新規製作することにした。

 

以前の居住地と違って、簡単に行ける場所にCIEMを造れる店はないし、近くにイヤモニの耳型採取の経験値が高い補聴器店もない。また、他にない特徴(オールシリコンシェル)を持つ海外メーカーと直にやりとりしてCIEMを造ったことがあるが(ちなみに現在そのメーカー=Custom Artは国内で正規に取り扱いが開始された)、

今回も国内代理店がないため、製造社(者)との英語を介したオーダーだったし、試聴してからの購入ではないので、製作はかなりバクチだった。

 

それが今まで聴いた事がないメーカーのCIEMを、メーカーとの直のやりとりをして予定外に購入する気になったのは、どういう風の吹き回し?

 

購入したのは、中国は四川省成都市にあるHisenior AudioというメーカーのCIEM。

 

最近、CIEMは黎明期を過ぎて、二極化(...というか三層化)してきたような気がする。元々古くからあるメーカー、Ultimate EarsやJH AUDIO、Noble Audio、WestoneにUnique Melodyあたり、日本でもFitEarやCanal Worksあたりは、ラインアップを拡充させ、保証体制・製作精度などを向上させて、「幅広い選択肢から」「安心して購入できる」CIEMメーカーとなったが、cybercatがCIEMに着目した10年前と比べると、

当時5~6万円がボトムレンジだった価格は、大幅に高級価格帯にシフトしてしまった。

 

ただ、CIEMの最低価格が上昇したかというと、この間隙を突いて?出てきた新興メーカー、VisionEarsやqdcが普及レンジを埋めてくれて、やっぱりスタート価格としては5万円あたりのものからあるにはある。

 

しかし最近、東南アジアのメーカーや、中国の個人ビルダーに近いメーカーが、今までほとんどなかった「5万円未満のレンジ」に飛び込んできた。

 

まあ、今まででも、例は少ないけれど、FlipearsのAIDENやAAWのA3H+など、新興メーカー製で4万円前後のものならあった。そしてそれくらいの価格なら、全く製作予定がなかったところに飛び込みで買うことにはならなかった。今回のは「総額で」その半額、本体だけなら約1万5千円という破格値だったので心が動いたわけ。もちろん、このメーカー(Hisenior Audio)にとっても、今回選択した機種(T2)は最も安い機種で、上を見ればセール価格でも1599ドル(18万円超)の片耳12BA(通常のBAドライバー8基+超高域ドライバー4基)のCIEMもある。この機種だけ飛び抜けて安いのだ。

 

そのわりに、世の評価は決して悪くなさそうなので、興味を持ったわけ。

 

今回購入したCIEMのディスカウント具合は次の通り(オプション追加料金含む)。

元定価?:$299

 ↓

通常値引価格:$169

 ↓

日本限定・期間限定値引(現在終了~2021/6/9):$119(-$50)

 ↓

Twitterフォロワー割引:$113(フォロワー5%割引適用)

 ↓

有料フェイスプレートオプション:$133(+$20)

⇒PayPal決済レート(2021/5/21):15,097円(およそ113.5円/$)

 

元定価はHPでいつも取り消し線が引かれているので、実際に適用されたことがあるのかどうか判らないが、通常値引価格($169)でも日本円換算約1万9千円の破格値のCIEM。それが今回日本向けに期間限定で-$50、つまりおよそ3割引のディスカウント。さらにTwitterをフォローするだけでそこから5%引きなので、通常値引価格からでも2/3の価格の$113、日本円換算1万3千円が底値。今回はそこに有料フェイスプレートオプションをつけたので、多少上がったが、それでも1万5千円ほどが本体価格(船便返送費込み)。

 

これに含まれないものとして、耳型採取代と、耳型の中国までの輸送費が別途必要だが、それらを合わせても2万1千円少々と、イヤホン専門店にしかない超弩級イヤホンですらなく、一般家電店でも買える高級イヤホンを買うのとおなじくらいの金銭負担で、自分だけのCIEMが手に入るのだからある意味恐ろしい。

 

ま、cybercatにとってみると、CIEM関連での海外とのやりとりは3回目(前述のCustom Artの他に、Mix Waveが取り扱いを始める前にUnique MelodyでMerlinを製作しているので、そのリフィットについて直接本国のメーカーとやりとりした)だし、耳型採るのもどこで採れるか識っていて、採り方のノウハウも把握していたので、「初回の怖さ」はなく、その意味ではハードルは低かったのだが、それでもこの価格ならCIEM未経験者へも「一度造ってみたらいかが?」と勧められる。

 

取りあえず、今回の注文方法を備忘録的に。

 

本来の順番的には前後することになるが(後述)、今回はまず耳型から採った。

 

フォローしているイヤホン系アカウントのいくつかから、Hisenior Audioのセール情報を掴んでいたので、最終的にどの機種を造るか確定はしていなかったけれど、いずれにしても久しぶりに製作依頼場所と耳型採取がセットにはならないので、耳型をどこかで取る必要がある(ここのところポタフェスの会場で機種注文と同時に採取したり、販売店併設の施設で採ったりしていた)。現居住地では、「イヤモニのインプレッション作成に経験がある補聴器屋」というのを識らなかったので、別件でアキバに行けたときに採取をしたわけ。

 

今回使ったのは、自分としては初めてだが、eイヤなど複数のイヤホン専門店と提携しているという「リスニングラボ(秋葉原補聴器株式会社)」。Web上でスマホからも当日予約ができて、耳型を取ることができる。自分も午前中の予定が終わりそうなめどがついたときに、新宿付近で予約を入れて、2時間半後の枠が取れたので、移動と食事で時間をつぶし、あまり待つことなく、耳型採取できた。

 

ここで、いつものように、「第二カーブの奥までしっかりと採ってください」とお願いして、バイトブロック(口の開け方を固定する器具・・・医療行為で喉にチューブを挿入する場合のものとは違って、耳型採取の時は使い捨てのスチロール製のものを使う)を口が開けめになるように咥えて採取していただいた。このときHisenior Audioのサイトにあった「Impression Instructions」を参考にした。これが、4月25日。

耳型は、こういうバイトブロックを加えて取るが、一番厚いところを噛んでいる
耳型は、こういうバイトブロックを咥えて採るが、上では一番「厚い」ところを噛んでいる

 

採取途中はこんな感じね
採取途中は、こんな感じね

 

こんな感じで渡される
こんな感じで渡される

 

Hisenior AudioのWebサイトや、内外のレビューを眺めて、機種を確定して、サイトの「Message Us」から質問を投げたのが、5月2日。これはFacebook Messengerへの投稿となるよう連携されている。その質問に返答があったのが、少し開いて5月6日(どうやら1週間の長期休暇中だったらしい)。投げた質問にはMessengerで解答があって、上記の「Impression Instructions」の案内があり、耳型を取ることの指示。加えて、今後の連絡はeメールに切り換えるのでメアドを教えてという旨のメッセージは、5月6日当日中というレスポンスの良さ。

 

5月7日にメールでもう一度詳しい耳型採取の説明があったが(本来ならこれを受けて採取するのが順序)、上記のようにすでに採取していたので、指示通りその写真を複数枚撮って送付。5月8日に、耳型にはOKが出たので、メールで送られてきた住所・宛先に、指定の方法で送る準備。郵便局のEMSサイト(国際郵便マイページサービス)に登録し、相手方の情報を入れ、スマホを持って郵便局に。郵便局に用意されたプリンターにスマホを当てれば伝票が印刷できるので、それをブツと一緒に提出して送付完了したのが5月12日。その日のうちにPayPalで支払い、連絡を待つ。

今回Hisenior Audioに送った耳型画像①
今回Hisenior Audioに送った耳型画像①

 

同②
同②

 

同③。輪郭がわかりやすいように黒地にはしたが、ご覧の通り素人写真。
同③。輪郭がわかりやすいように黒地にはしたが、ご覧の通りシロウト写真。

 

製品完成連絡が5月28日で(このとき完成品の写真も送ってくれる)、日本で受領したのが6月6日というタイムチャート。タイミングよくうまく耳型さえ採れれば、およそ1ヶ月でCIEMを造ることも可能で、この速さは国内メーカーでも大手ではなかなか望めないレスポンスの良さ。連絡もこまめで、待たされ感はなかった。

Hisenior Audioからメール添付されてきた完成品写真①
Hisenior Audioからメール添付されてきた完成品写真①

 

同②
同②

 

到着してじっくり見ても、見た目は予想・希望通り。今回、他メーカーでは「Watch (Parts)」とか「Time Machine」などとも呼ばれる、歯車入りのフェイスプレート(Punk)をオーダーしたが、Hisenior AudioではPunkは左右色違いのCarbon Fiberと組み合わせる設定だったので、それを選択。

初めて造った歯車フェイスプレート装飾
初めて造った(製作依頼した)歯車フェイスプレート装飾

 

感心したのが、耳道の第二カーブの先まできちんと再現してくれていて、先(装着時奥)の方が少し膨らみ気味に曲がっているという安定感よさそうな形状。実際、フィッティングはメチャクチャ良い。メチャクチャ良い(大事なことなので2回)。つか、フィッティングの密着度・密閉度は、価格10倍の10.Aに勝るとも劣らない出来で、抜けづらさに関してはひょっとしたら手持ちの中で一番高いかもしれない。アクリル部分に泡は少々あるが、形状はパーフェクトで、シェルのビルドクオリティは非常に高い。

先がここまで膨らんでいるのは今までない⇒これが効く!
先がここまで膨らんでいるのは今までない⇒これが効く!

 

シェル(ボディ部)は、透ける黒(B3:80% Transparent Black)を選択したので、中のドライバーの配置や配線も確認できる仕上がり。

シェルは透ける黒なので、内部配線もよく見える
シェルは透ける黒なので、内部配線もよく見える

 

ちな、ドライバーはHPに「Dual Knowles」と明記されていて、外からも大きい方のドライバーのKnowlesのロゴと、「22955」の刻印が見えるので、ひとつは低域が充実した定番BAユニット、Knowles CI-22955。で、このT2はKnowles社ドライバーの2BAと言うことが判っていて、刻印が確認できない高域ユニットの方は、およそ6×4mmのサイズ的にはTWFKかEDっぽい。しかし構成は2way/2driverなので、おそらくKnowles ED-29689かな。CI-22955とED-29689なら、JH AudioのJH5 proや1964 Earsの1964-T等にも採用された組み合わせで、ある意味「安心の定番コンビ」で期待できる。

KをアレンジしたのマークとはCIを表す。
KをアレンジしたKnowlesのマークと22955の数字は、名ドライバーCI-22955を表す。

 

CI-22955の上に乗る6×4mm程のドライバーはか。
大きなCI-22955の上に乗る6×4mm程のドライバーはED-29689か。

 

若干、フェイスプレートの歯車が、他社の高額機種に使われているものよりは薄くて、「装飾用のイミテーション歯車」感があるが、他社のフェイスプレート歯車オプション価格が「片耳6~8千円」ほどしていることを考えると、両耳2千円少々のオプション代...いやそもそも本品は、付属品まで含めた商品価格でも約1万5千円でおさまっているので、「実質無料」のようなものにそこまで求めるのも。

少々歯車の厚みは薄く、よく見るとイミテーションっぽいが、遠目では充分
少々歯車の厚みは薄く、よく見るとイミテーションっぽいが、遠目では充分

 

さらにこのCIEMは、今はなき七福神商事が扱っていたハイコスパUIEMとして、以前一部で話題になった「丸七」のように、ケースも他アクセサリーもケーブルすら全く付属せず、小さなビニール袋に本体のみがゴロンと入っているような簡易包装によってコストを削った....というようなことはなくて、ケーブルはもちろん、ケースはきちんとしたハードケースで、クリーニングブラシ、クロスといったメンテ用品もついてくるという、至れり尽くせりの「スーパーハイコスパ製品」。

「丸七」のように付属品を削って低価格を実現したわけではない
「丸七」のように付属品を削って低価格を実現したわけではない

 

オヤイデの金メッキプラグと、8芯のOCCケーブル
オヤイデの金メッキプラグを持つ、8芯のOCCケーブル

 

ペリカン製でこそないが、しっかりとしたハードケースつき
ペリカン製でこそないが、しっかりとしたハードケースつき

 

ではこの破格値のCIEM、どのような音だったのだろうか?

 

いつもの通り、エイジングを100時間ほどした後、自分にとってのスタンダードDAP=音の素直なONKYO DP-X1A

直結で評価。

 

まず、cybercat的定番ハイレゾ曲から。

 

PCM24bit/96kHzの「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」を吉田賢一ピアノトリオの“STARDUST”

から。中域がノっている。低域は「ある」のだが、主張がさほどには強くない。ちょうどベースの低次倍音域が少々抑え気味で、基音あたりはきちんと出ているのだが、目立つアタック部分は控えめ。それはドラムスにも言え、ジャズドラムの小口径ベードラはアタックがあまり「こない」。高音域も刺さるあたりは上手く丸められ、聴きやすい形...というかライドシンバルの広がりは狭い。一方中域の華はかなりあり、しっかりと芯を伴ったピアノ、スネアの小技とスティックの木の「鳴り」などは良くニュアンスが聴き取れる。特に、ハイハットの閉め方(左足の力のかけ方)の違いによる音色の差はリアル。

 

次に、当時ティーンエイジャーだった宇多田ヒカルの、震える声が美しい名曲「First Love」は、同じくPCM24bit/96kHzの“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”

から。これは「重低音」がないジャズトリオとは違い、低域楽器の音域が下がってピタリと「合った」のか、とてもいいバランス。この曲のベース、結構「ブーミー」一歩手前まで突っ込んであるので、再生環境によっては、ジャマになるほどの塗り壁的存在感で他を覆い隠すが、ちょうど良き。ベース音が若干平坦な感じはするが、価格を考えれば....ヒカルの声の震えと、左右に振り分けられた生ギターの巻き弦を滑る指先の表情などは十分な説得力。そしてやはりヘッドルームはやや狭い。

 

このCIEM T2は「for Drummers」と注釈?が付いているので(英語の製品名?は“T2 Custom In Ear Monitors for Drummers 2BAs”)、一番ドラムスに注目(注耳?)できそうなジャパニーズフュージョン、T-SQUAREの「RADIO STAR」を、セルフカバーアルバム““虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”

から。これは...ファンキィ!JINOことゲストベースプレイヤーの日野賢二のベース、特にスラップのプッシュがグングンと迫ってくる。バスドラも板東(慧)クンの切れの良いダンサブルなフットワークが堪能でき、まさに「for Drummers」モニター。そして、先日の療養退団が惜しまれる河野啓三の、在りし日のリリカルなピアノプレイが熱い!!

 

ダンス系のビートの強い楽曲、アイドルマスターシンデレラガールズの新田美波(CV:洲崎綾)が歌う「ヴィーナスシンドローム

は、いいバランス。このCIEM、ヴォーカルや中域ソロ楽器が「立つ」のが美点だが、音飽和系のこの曲にあっても、あやちゃんの声が近い!そして、クリップ気味なほど大きめのバスドラも「ジャマ」にはならず、ビート感は残しながら、上手くバックに溶けている。ベースは静かなブリッジ部分しか目立たないが、キチンと鳴っている。一方、頭の中を駆け回るキラキラとしたシーケンスフレーズは控えめで、開放感は少々薄い。なお、今までこの曲はCDからリッピングしたwavデータをFLAC化した16bit/44.1kHzのデータで評価してきたが、このCIEMでは、ハイレゾサンプリングされた24bit/96kHzの「ORT(Overtone Reconstruction Technology)版」の方が、あきらかに広がり方が良い。この2つの音源の差が一番大きなCIEMかもしれない。

 

同じく、あやちゃんこと洲崎綾が歌う、藤本巧一作のバラード、「」はメモリアルフォトブック“Campus”

から。元々Hi-Fi的に上下伸びきっておらず、ややこぢんまりとしている曲だが、中域が厚いこのCIEMとの相性は悪くない。この曲もサビになってバックがうるさくなると、あやちゃんのヴォーカルが隠されるようなイヤホン/CIEMも多いが、そこはきちんとヴォーカルメイン。ほぼ同帯域のギター(エレキ、アコースティックとも)も、ストリングスも、ヴォーカルの周りを取り囲み、ベースはやや遠いがきちんと追える。ただやはりツリーチャイムのキラキラした感じや、シンバルの広がりによる「広さ」はあまり感じられない。

 

同様に激している曲ではいないが、「泣きの」ロックとしては、Eaglesの古典ロック「Hotel California」を同名アルバム

から。この曲、元ファイルの問題だが、昔ながらのコンプ弱めの録音で、平均音量が低く、能率の悪いイヤホン/CIEMだと、DP-X1Aの音量を最大まで上げても音圧が取れないのだが、このCIEMはそんなことはなく、ヴォリューム140/160くらいで十分すぎる音量が取れる。相性は、神懸かって、良い。元々録音年代的に上が伸びている音源ではないので、高域が不十分と感じることがなく、スピーカーで聴くことを前提に?Randy Meisnerのベース音量上げめのピラミッド型音像なので、低音が主張する再生環境だと、ベースに全て飲み込まれてしまうのだが、いい感じにいなしている。そして、Don Henleyのヴォーカルがイイ!なかなか男声が上手く前に出るイヤホン/CIEMというのに出会えないのだが、このT2は見事に「センター」。そしてギターとは、イントロのカランとしたアルペジオも、ラストの泣きのツインギターソロも、音色的相性が良く聴き所。

 

2BAではやや荷が重い?クラシック...というかオーケストラ曲として、交響アクティブNEETsの“艦隊フィルハーモニー交響楽団”

から激しい「鉄底海峡の死闘」。さすがに音数的には多ドラIEMには敵わないが、中域に塊感があり、主旋律パートを浮き立たせるT2は、パッと聴き、意外に相性は悪くない。ただ、聴き込むとティンパニの低域アタックや、盛り上がってきたときの弦楽の低音域の圧といった迫力、高域の空間を渡るパーカッションの音などの広がりはない。でも、「塊」としては悪くないんだよなー、バランスとか、圧とか。

 

久しぶりにCIEM作成意欲がかき立てられたHisenior AudioT2。最近高価格帯にシフトしてきて「試す」のが難しくなった他社のCIEMと比べて、一桁低い価格帯の製品がどれほどの実力があるか、またドラム経験者の自分の目線(耳線?)で、「for Drummers」と銘打つCIEMがどういった特徴を持つか興味があって、予定外にCIEMを製作した。

 

本体価格1万5千円ほどと、家電メーカー製高級イヤホンの範疇で購入できる「安価な」CIEMだったが、

○フィッティングの良さとそれによる静寂性の確保は素晴らしい

中域の聴きとりやすさと横への広さは充分

○一部アコースティックジャズ系を除き、ドラムスのビートは採りやすい

○同様にコンテンポラリー系楽曲ではベースラインが採りやすい

●高域は変なクセこそないが、超高域はなく、若干物足りない

●低域はバスドラやベースのアタック帯域が弱く、曲によってはバックに沈む

●中域の主旋律は聴きとりやすいが、音数が少ないとも言える

という感じ。

 

変に欲張らず、ヴォーカル、ソロ楽器、スネア・ハイハットのあたりにフォーカスして際立たせることで、「楽しい」CIEMになっている。また、フィッティングが非常に良く、それにより静寂性と装着安定性がずば抜けて良いので、「うるさめの環境での音楽聴取」や「周りに影響を与えず音楽を楽しむ」と言った方向性が適しているように感じる。

 

すなわち、一番適しているのは「通勤ホン」。うるさい電車やバスの中でも、他者に迷惑を掛けることなく、音楽のエッセンスを味わうことができる。そして名の通り、ドラマーのステージモニターとしても適していると思う。

 

静かな部屋で、じっくりと「味わう」には、少し物足りない面もあるけれど、外で使う分には価格も含めてカジュアルで「使いやすい」CIEM。CIEMの装着感は苦手な人もいるので、試してみる最初の一台としては勧めやすい価格とわかりやすい音質。そして、この価格でもCIEMの最大の美点である装着時の静寂度と安定度は高い次元で味わうことができる。

 

ま、電車で使っていて音楽聴いていたら、間違いなく車内アナウンスは聴き取れないので、乗り過ごしには注意だけれどネ!あと、歩きながら使うのは警笛などが聞こえない可能性大なので、避けた方が吉。

 

気軽に買えるCIEMとして、高い基礎性能を持っている機種だと感じます。

 

【cybercat所持CIEM比較】

例によってCIEM比較表(クリックで大きくなります)
例によってCIEM比較表(クリックで大きくなります)

 

【仕様】
型番:T2
商品名:2way/2driver Custom In-Ear Monitor
ドライバー: Low and Mid(BA) x 1, High(BA) x 1
インピーダンス:18Ω
再生周波数:20Hz~20,000Hz
感度:105dB/mW

【代金】総額15,097円(133$)
  ※50$引きクーポン適用

作成費用総額:21,147円

オプション:
・Faceplates(F40:Carbon Fiber + Punk/+20$)
インプレッション採取代金:4,650円

EMS(日本⇒中国/耳型送付):1,400円

【今回購入時のタイムチャート】

2021/4/25 耳型採取

2021/5/2 Messengerで問い合わせ開始

2021/5/7 メールでの商談に切り換え

2021/5/8 画像での耳型チェック終了

2021/5/12 耳型のEMS発送

2021/5/12 支払い(ドル建て、Paypal)⇒信販会社の決済日は5/21
2021/5/17 中国留置局に耳型到着

2021/5/28 製品完成連絡

2021/5/31 発送連絡
2021/6/6 製品受領            オーディオなんちゃってマニア道

 

Thanks to Gareth!

 

Hisenior Audio:Hisenior HP

Hisenior Audio Twitter:HiseniorAudio

Youtube:Hisenior Inearmonitors

 

2021年9月現在、T2は$40ディスカウントコード配布中。購入時固定ツイート参照のこと。

⇒2021/10/31にて終了との告知あり

 

2021年9月現在、1000円+返送料負担で、いくつかの機種をレンタル可(購入時割引あり)

更新: 2021/09/10
高音

変な着色・脚色はないが、超高域への伸び感もない

耳障りな金属音や擦過音の強調などはないが、やや薄めで「空間が開けた」感じは薄い

更新: 2021/09/07
中域

ヴォーカル&ソロ楽器フォーカス!

中域はいい!味はやや薄いが、人声やソロ楽器は、聴きとりやすくモニタリングしやすい。スネアやハイハットの小技も拾いやすく、ドラムスの細かい技のモニタリングも得意

更新: 2021/09/06
低音

低域はソコソコあるが、中低域がやや薄い

打ち込みや、ロック系の口径の大きなバスドラは聴きやすいが、ジャズのような小口径バスドラで、ヘッドの音が中心のようなものや、高めのベースラインは少々薄い

更新: 2022/06/27
音像

横の広がり(特に中域)は充分広いが...

上がさほどにないので縦方向は狭い

 

一方、中域は充実しているのに左右は広い

  • 購入金額

    15,097円

  • 購入日

    2021年05月21日

  • 購入場所

    Hisenior audio

18人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • ホーリーさん

    2022/01/11

    僕も
    ・耳の穴が細い
    ・カラ耳(耳の中がまったく湿っていない)
    なので普通のイヤホンが使用できず、骨伝導かヘッドホンを使用しています。
    特に耳の穴が細いのが原因でじっとしていてもイヤホンがポロッと落ちてしまいます。
    耳の穴が細いのは僕だけかと思っていました。
  • cybercatさん

    2022/01/11

    ホーリーさん、自分も最初は耳が小さいとは思っていませんでした。

    以前多かった「非」カナル式の、インイヤーイヤホン=耳の入り口に蓋をするように使う聴診器のような形のタイプでは、スポンジはMか下手をするとLを使っていたので、耳の穴が細いとは思っていなかったのですが、実は外耳部は普通以上の大きさも、耳道部分は極端に細いことがわかりました。

    これは、いろいろとCIEMを造るにあたって、耳の奥にシリコンが流れ込まないようにする栓が、一番小さなもの、下手をすると小さめのものをさらにカットして使う人もいるのを見て、「自分の耳の穴細いんですかね?」と聞くと、複数の耳型採取場所で、複数の技術者の方から「そうですね」と言われたので確実。

    鏡などでは、自分の耳の穴の大きさを、他人と比較することなどできませんからねー。

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