レビューメディア「ジグソー」

ボーナストラックに大きな意味が

本作の米国盤については、発売直後に購入してレビューも掲載しています。

 

 

 

 

 

 

このときには本作に関連するエピソード等を殆ど知らないまま文章を書いたのですが、その後明らかになったエピソードなども多くありますので、ボーナストラック2曲が追加された日本盤も改めて購入して掲載することにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

米国盤はごく普通のケース入りでしたが、日本盤はレコードジャケットを模した紙ジャケットで、しかもダブルジャケット化されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

CDの盤面は同一デザインでした。日本盤には情報量があるブックレットも添付されています。音楽評論家の金澤寿和氏による解説文が掲載されているのですが、こちらにかなり豊富に情報が掲載されていました。こちらに次いでは後ほど改めて触れます。

 

一応収録曲について確認しておきましょう。

 

 

01. Will You Still Love Me?
02. Here I Am
03. Look Away
04. Wonderful Day
05. If You Only Knew
06. Feelin' Stronger Everyday
07. What Kind Of Man Would I Be?
08. Never Even Had The Chance
09. Hard To Say I'm Sorry
10. Away

11.That's When I'll Come In

12.The Memory Survives

 

(11,12は日本盤ボーナストラック)

 

 

 

 

「That's When I'll Come In」はとあるプロジェクトの流用と説明されているだけですが、「The Memory Survives」の方は、アルバム本編には存在しなかったジェイソン自身の書き下ろし曲(ランディ・グッドラムとの共作)となっています。

 

更新: 2021/06/04
総評

実は「Chicago XXXの続編」とのこと

まず、日本盤のリリースに当たって公開された公式映像を紹介しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

シカゴ時代の盟友にして師匠的存在であるビル・チャンプリンが、この「Will You Still Love Me?」を始め多くの曲に関わっています。

 

 

さて、本作の解説文や金澤氏のブログで掲載された文章から明らかになった話をまとめておきましょう。

 

まず、以前は「ジェイソンが年単位の休みを必要としていたため」と紹介されていたシカゴからの脱退理由については、長男が余命宣告を受け、結局30歳の若さで亡くなってしまったことで、最後まで寄り添うために時間を必要としていたということだそうです。人間関係のこじれや音楽面での方向性の違いといった理由は全く無かったとのことでした。シカゴを離脱する直前までシカゴの中心人物ロバート・ラムとの共同作業も多かったことから、ネガティヴな理由による脱退では無いことは想像できていましたが、改めて裏付けが取れた格好です。

 

そして、当初シカゴ脱退後から製作が開始されたと思われた本作ですが、実は2006年に発表されたシカゴのアルバム「シカゴ XXX」の製作を通じて仲が深まった、ジェイソンとプロデューサーのジェイ・ディマーカス(ラスカル・フラッツ)が、アルバム完成後も共同作業を続けていて、本作の収録曲の一部はその頃に既に出来ていたというのです。

 

ジェイソンがシカゴ、ジェイがラスカル・フラッツの活動に時間を取られ、作業は少しずつしか進んでいなかったそうですが、先述の長男の余命宣告により完全に中断し、長男を見送った後再開された結果このタイミングとなったとのことです。

 

 

また、前作では全曲書き下ろししたジェイソンが、本作ではシカゴ時代のカバーを除き自作曲無しでアルバムを制作した理由については、ジェイ・ディマーカスの提案で「広く良い曲を集めよう」という方針となったためだそうです。「当時自分が書きためていた曲よりも、ジェイが集めてきた曲の方がずっと良かった」というジェイソンのコメントもあります。

 

 

本作でカバーしているシカゴの大ヒット曲「Hard To Say I'm Sorry」(素直になれなくて)は、ジェイソンがシカゴに関わるより前の1982年の楽曲でしたが、実は何故かジェイソンはこの曲のレコーディングに立ち会っていたというエピソードも明かされました。レコーディング作業中のデイヴィッド・フォスターをスタジオに訪ねたときに、丁度ダニエル・セラフィンがドラムの収録を行っていたのがこの曲だったというのです。これは偶然だったようですが…。

 

 

一部楽曲では自身でベースを演奏せず、著名ベーシストのピノ・パラディノに演奏を任せているのですが、これについてもエピソードが紹介されています。元々本作の収録曲「Away」で、ピノ・パラディノのようなベースをイメージしていたそうですが、たまたまナッシュビルで滞在していたホテルにピノ・パラディノも宿泊しているという話を聞き、すぐに連絡を取って面会したそうです。その時には「あなた自身も素晴らしいベーシストなのに何故自分が必要なのか?」と問われたそうですが、「あなたのプレイが必要な曲がある。自分が無理にアピールする必要も無い」と答えて参加をOKしてもらったそうです。元々ジェイソンはシカゴの「シカゴ XXXVI ~NOW」でも、自身のベースよりもヴァーダイン・ホワイト(アース、ウインド&ファイア)の方が曲に合うとして助力を仰ぐなど、他人の長所を柔軟に認める性格ではありますが。

 

 

そして日本盤ボーナストラックの「The Memory Survives」は、一応ジェイソンの名義でリリースされていますが、実際には

 

 

Deen Castronovo (Drums , Vocals) ex-Journey
Jason Scheff (Bass, Vocals)
Jay DeMarcus (Keyboards, Vocals) Rascal Flatts
Tom Yankton (Guitar, Vocals)
Chris Rodriguez (Guitar, Vocals)

 

 

というメンバーで構成されるバンド、Generation Radio(The Rise Aboveから名称変更)による演奏とのことです。DVによる逮捕でジャーニーを解雇されて以来、消息を聞かなかったドラマー、ディーン・カストロノヴォが参加しているのも注目ポイントです。このバンドはオリジナル曲だけでは無く、メンバーそれぞれが所属していた/いるバンドの楽曲も演奏、しかも全員がリード・ヴォーカルも担当するということで、ライブが楽しみなところです。

 

 

アルバムとしては、元の10曲が素晴らしい出来であることはわかっていましたし、ボーナストラックの質も高いということで、文句なしの出来です。現状では古巣シカゴよりも充実しているのではないかと思うほどです。

  • 購入金額

    2,476円

  • 購入日

    2020年11月21日

  • 購入場所

    Amazon

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