レビューメディア「ジグソー」

肩の力が抜けた快作

2016年に30年以上にわたって在籍したシカゴから脱退を表明した、ジェイソン・シェフの脱退後初となるソロアルバムです。

 

これまでのキャリアを振り返っても彼のソロ作品は、アルバムとしては1997年発売の「Chauncy」(邦題:ジェイソン・シェフ ファースト)があるのみで、実に22年ぶりの2作目となります。

 

 

 

 

 

前作は急逝した愛犬に捧げる作品として急遽制作されたものでしたが、それを感じさせない充実した楽曲がつまった名盤でした。

 

一方、本作は家庭の事情でシカゴを脱退した後、地味な活動を続けていた彼がマイペースで作り上げた作品となっています。ちなみにシカゴからの脱退理由について、現在公開中のシカゴのドキュメンタリー映画「Now More Than Ever」では、シカゴ側の説明として「ジェイソンは年単位での休みを必要としていた。さすがにそこまで待つわけにも、ということで残念ながら脱退という形になった」という旨が語られているそうで、シカゴの脱退劇としては珍しく人間関係等によるものではなかったようです。

 

ジェイソンは元々シカゴ在籍時からMyspace等の場で、ソロ作の制作過程などを紹介していて、シカゴの36作目であり、彼にとって最後の参加作品となった「Chicago XXXVI "Now"」のタイトル曲「Now」なども、ある程度まとまった形でソロ曲として公開されていたりもしました。

 

しかし、本作ではシカゴの楽曲のカバー5曲+新曲5曲という構成が取られていて、しかも彼自身の自作曲が含まれていないのです。勿論、シカゴ脱退後もMyspaceへの新曲の登録はされているのですが…。

 

「Here I Am」という本作のタイトルが示す通り、「俺はまだ引退していないぞ」という意思表示のために敢えて制作された作品なのかも知れないと感じさせられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャケットもレーベル面も、あまり凝ったものではないシンプルなデザインでまとめられています。

更新: 2019/11/17
総評

オケは低予算感があるが、楽曲もヴォーカルも充実

それでは、ここで収録曲を紹介しておきましょう。

 

 

01. Will You Still Love Me?
02. Here I Am
03. Look Away
04. Wonderful Day
05. If You Only Knew
06. Feelin' Stronger Everyday
07. What Kind Of Man Would I Be?
08. Never Even Had The Chance
09. Hard To Say I'm Sorry
10. Away

 

 

 

 

 

 

 

シカゴの楽曲が5曲含まれているというのは前述の通りですが、なかなか面白いのは彼自身がオリジナル曲でヴォーカルを担当しているのは、そのうち僅か2曲(「Will You Still Love Me?」「What Kind Of Man Would I Be?」)だという点です。

 

残る3曲の内、オリジナルシンガーがピーター・セテラである「Feelin' Stronger Everyday」「Hard To Say I'm Sorry」はライブでは頻繁に歌っていて、もはや彼自身の持ち歌といっても間違いではない曲なのですが、意外なのは「Look Away」です。

 

オリジナルは「シカゴ19」に収録され、リードヴォーカルはビル・チャンプリンが担当していました。この曲はシカゴにとって最大級の成功を収めたシングルであり、米ビルボード誌の年間シングルチャート1位(1989年)を記録したことで知られています。その割に日本での知名度はあまりない曲ですが…。

 

ビル・チャンプリンがシカゴを脱退した後は、後任として加入したルー・パーディーニがそのままヴォーカルを引き継いでいて、ジェイソンがこの曲を歌うことはありませんでした。

 

本作に収録されたバージョンには、ゲストヴォーカルとして、オリジナルシンガーのビル・チャンプリン(元々ジェイソンの師匠的な存在であり、シカゴ脱退の後も交流は続いています)も参加していますが、リード・ヴォーカルは二人で分け合う形となっていて、なかなか新鮮な印象を受けます。

 

 

新曲となる計5曲は、彼自身の作品ではありませんが、ジェイソンや、プロデューサーを務めたジェイ・ディマーカス(ラスカル・フラッツのベーシスト)が好みそうな、80'sの流れを汲むような充実した楽曲が揃っている印象です。ファーストアルバムに続き、楽曲のクオリティは粒ぞろいといって良いと思います。

 

 

強いていえば、いかにも低予算感があるオケの安っぽさが弱点となる部分はあります。前作と比べても打ち込みっぽい音が目立ってしまい、音の印象はやや不利といえます。

 

それでも、どうにも迷走感がある古巣シカゴとは対照的に、いかにも彼らしい作品という印象を受けました。シカゴにクリエイティビティーをもたらしていたジェイソンの穴の大きさを、両者を聴き比べることでよりはっきりと実感させられました。

  • 購入金額

    1,660円

  • 購入日

    2019年11月17日

  • 購入場所

    Amazon

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