米国のオーディオメーカー、ADCが恐らく最後に発売したと思われるカートリッジです。1987年頃の発売とされています。
発電方式はIM(Induced Magnet)型で、MM型の一種となります。ADC製のカートリッジといえば、私が愛用するADC MC1.5を先に紹介していますが、このMC1.5以外は全てMMまたはIMカートリッジとなります。
このQLM35は、確か私が中学生の頃に新品で購入したものだったと記憶しています。ヘッドシェル取り付け済みで5,000円を割り込む手頃さで、中学生の僅かな小遣いでも何とか買える程度のグレードでした。もっとも、当時は近い価格で購入していて、針先がラインコンタクト形状で長寿命だった、GLANZ G-40EXを優先して使っていたため、QLM35はさほど使われないままでした。そのため、今でも新品当時とほぼ変わらない針先の状態を保っています。
ヘッドシェル取り付け済みであることを考慮すれば、SHUREの定番モデルであったM44シリーズと同じグレード感の製品であったと考えて良いでしょう。もっとも、QLM35はこの価格でありながら0.3 × 0.7 milの楕円針を採用していて、丸針のM44シリーズよりは少し凝った内容でした。
如何にもアメリカ製というパワー型サウンド
それでは、約30年ぶりに音を出してみましょう。いつも通り、Technics SL-1200G+Phasemation EA-200の組み合わせで聴きます。
まともに動くのかという動作確認を兼ねていますので、あまり貴重なレコードは使わず、「Chicago 17 / Chicago」のUS盤を聴いてみます。また、ヘッドシェルやシェルリード線は、純正のものをそのまま使います。リード線はさすがに劣化しているとは思いますが…。
針圧は2.0~2.5g指定ですので、2.2gにセットして再生してみます。
取り敢えずトレースは安定していますし、ダンピングもきちんと利いていますので、ダンパーの劣化も気になるほどではなさそうです。
A面2曲目「We Can Stop The Hurtin'」はこの時期にしては珍しくホーン部隊もバリバリ活躍するロック系楽曲ですが、ベースがグイグイ主張して押出しと勢いの良さが目立つ表現です。高域方向はややハイ落ちで繊細さもあまりありませんが、ロバート・ラムの声の質は意外と良好で、これだけ聴いていれば結構納得できてしまう音です。ただ、ホーン部隊の音色に金属感はあまり感じられません。
もっとも、直後にAT-OC9/IIIに差し替えると、さすがに音場の構築も解像度や緻密さも段違いで、やはり廉価グレードのMM系の音であることを実感させられてしまいます。70~80年代辺りの洋楽ロックを元気良く鳴らすというというのが基本的な使い方となるでしょう。
出てくる音も使い勝手も、前述のSHURE M44シリーズのライバルとして手頃な水準といえるでしょうか。先日試聴したSHURE M44-7と持ち味は似ています。もっとも、M44-7の方がもう少し音場の明瞭度は高かったと思いますが。
今では廉価版カートリッジの交換針すら買えるかどうか怪しい価格で、カートリッジの違いを楽しめた時代の製品です。当時いろいろ買っておいて良かったと改めて思わされます。
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購入金額
4,980円
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購入日
1990年頃
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購入場所
第一家電 DAC千葉
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