レビューメディア「ジグソー」

この価格帯では抜きん出た実力

以前から私はHiBy製のDAP、R6 ProALを「10万円以下クラスで最高のDAP」と高く評価してきました。

 

確かに20万円以上のクラスであれば、オーディオ機器として優れたDAPはいくつもあります。しかし10万円以下クラスのDAPでアナログレコードから取り込んだ音源の良さをきちんと出せる製品にはそう滅多にはお目にかかれません。私がR6 ProALを高く評価している理由は、約6万円という価格ながらそれがきちんと実現できていたということによるものです。

 

率直に言って、J-POPやアニソンを中心に聴くだけであれば、他にも良いプレイヤーは沢山あります。演奏内容の是非は別にして、あまりにも音圧を叩き込みすぎていて空気感や細かいニュアンスが消し飛んでいるものが殆どですから、味付け次第でむしろ元より聞きやすく音を作ることすら出来ますので。

 

しかし、ジャンルを問わず、質の良い音源をきちんと質の良いまま表現できるDAPは意外なほど少ないのです。少なくとも、この分野のメジャーブランドの製品では、超高級製品を除きこの課題をクリアできているものにはお目にかかれていません。

 

 

本来であれば、そこまで高く評価しているR6 ProALを素直に買うのがベストなのは間違いありません。しかし、R6 ProALは既に生産を完了していて、僅かに値下げが入った時点で殆ど市場から消えてしまいました。生憎予算がなく、値下げが入っていない販売店で買うのも厳しいのです。

 

そこである意味妥協ではあるのですが、R6 Proの先代に当たるR6であれば国内代理店の飯田ピアノでアウトレット品を処分していることが判りましたので、これを抑えておくことにしました。R6はHiBy製DAPとしては珍しく2.5mm4極バランス端子を備えた製品であることも、購入に踏み切った理由の一つではありますが。

 

元々R6 Pro(R6 ProALのステンレスボディ仕様で、こちらが先に発売されていました)が発売された頃にR6も試聴したことはあったのですが、その時点で同価格帯の中では明らかに頭一つ以上抜けた実力の持ち主と評価していましたから、少なくとも買ってがっかりするものではないという確信もありましたので…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パッケージはお世辞にも高級感があるわけではなく、この辺りはいかにも中国の新興ブランドらしいなと感じます。まあ、高級感を演出しなければいけないほど高価な品でもありませんので、妥当なところではあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箱の中にはいきなり本体が収められていて、本体をどけると添付品一式が現れるようになっています。添付品は

 

 

・取扱説明書

・QC合格証

・シリコンジャケット

・保護フィルム

・メモリーカードトレイ イジェクトピン

・USBケーブル

・専用デジタルケーブル

 

 

となります。

 

ただ、シリコンジャケットを装着すると妙に野暮ったく見えるという弱点がありますので、可能であれば別途レザーケース等を用意した方が良いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別に高級感があるわけではありませんが、元々が5万円台クラスの製品であったことを考えれば質感は十分に良い方でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

本体正面向かって左側にボタン式のボリュームがあります。

 

特に押しにくいなどということはないのですが、少々段階が粗く音量が急激に変わる印象があるのは弱点でしょう。割合能率が高いイヤフォンでは結構気になります。ゲインコントロールは一応用意されているのですが、変化量がさほど大きくないので、これを切り替えてもあまり改善されません。

 

 

 

 

 

 

 

 

出力端子は左から

 

 

・ラインアウト/デジタルアウト兼用(3.5mm4極)

・ヘッドフォン出力(3.5mmシングルエンド)

・ヘッドフォン出力(2.5mm4極バランス)

 

 

となっています。3.5mm4極のデジタル出力はFiiOなどでも採用されていますが、それとはピンアサインが違うらしいです。出力のアナログ・デジタルは本体側のメニューで切り替えます。

 

 

 

 

 

 

 

USBはType C形状です。USB接続は充電やデータ転送だけではなく、USB DAC機能にも対応しています。

更新: 2020/12/24
音質

改めて聴いてもやはり優秀

それでは音質について触れていきましょう。

 

本機はDACとしてESS ES9028Q2Mを2基搭載していて、このクラスとしてはなかなか豪華な仕様です。アナログアンプ部もBurr-Brown(TI)製OPA1612×2+TPA6120A×2と、十分に高水準な組み合わせが使われていて、実装部品を見てもコストパフォーマンスの良さが窺えます。

 

ちなみにR6 ProALではDACの構成は同等であるものの、アナログアンプがJRC MUSES8920×4という構成になっているほか、コンデンサーのグレード等も上がっているそうで、この辺りで音質の差が生じているようです。

 

 

ここからは試聴に移ります。組み合わせたイヤフォンは64AUDIO U4(ケーブルはBriseAudio STR7-std)と、Unique Melody MAVERICK(ケーブルはLuminox Audio 85-Filter)です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず気付かされるのは、思った以上に駆動力があるということです。実はここに書いた以外にも後日紹介する予定のイヤフォンとも組み合わせているのですが、このイヤフォンはAstell&Kern KANNでは中域~高域が全く鳴ってくれなかったのですが、HiBy R6では見違えるように音場が広がり高域方向の緻密さも出てきたのです。KANNが意外と鳴らせない(平面磁界型ヘッドフォンなど)ヘッドフォン・イヤフォンが多いのは事実ですが…。

 

 

まず以前から聴き慣れている64AUDIO U4では、最低域の重量感などは物足りなさが残るものの、広い音場が構築されつつも間接音までもきちんと描写するという、アンプの実力の高さが存分に発揮されます。R6 ProALと比べると力感や解像度で及ばない感はあるのですが、他社製の5~6万円クラスでこれだけ質の高い中域はまず出てこないだろうと思える水準に達しています。

 

「Englishman In New York / Sting」ではAcoustic Research AR-M2にも迫るのではないかというほどに見事な音場表現を見せますし、「Dangerous / David Garrett」も思った以上にヴァイオリンの響きが良く出ます。さすがに弦の質感には限界を感じますが…。

 

Unique Melody MAVERICKでも本質的には同様の印象ですが、MAVERICKから意外と解像度の高い音が出てくることに驚きます。MAVERICKは駆動力が無くてもそれなりに「聴かせる」イヤフォンではあるのですが、駆動力のある環境では解像度などオーディオ的要素も高次元に整うのです。

 

「Great Expectations / TOTO」では序盤のギターの音色にやや重たさがあるのですが、David Paich→Joseph Williamsという流れのヴォーカルはなかなか見事です。ヴァイオリンやギターの音色でやや抜けの悪さを感じるのは単純にエージング不足の可能性もありますので、もう少し使い込んでから最終的な結論を出したいと思いますが、現時点でも価格からは想像が付かないレベルの音は出ていると思います。

 

更新: 2020/12/24
総評

詰めの甘さは残るが、安価に音質優先なら最右翼候補

本来ならば手放しで賞賛しても良いと思うだけの実力の持ち主ではあるのですが、どうしても触れておかなければいけない弱点があります。それは、大容量のSanDisk製microSDXCカードが事実上使えないという点です。

 

 

 

 

 

 

 

 

SanDisk製のmicroSDXCメモリーカードでは、一定以上の容量の製品でこのように端子側に厚みが増した部分が存在しています。

 

R6のメモリーカードトレイ形状の問題なのですが、この厚みのある部分がトレイの枠に当たってしまい、メモリーカードがきちんと装着されないのです。

 

今回、当初はSanDisk製のUltra 400GBを使うつもりで用意していたのですが、この問題がありメモリーカードが突然見えなくなったり、読み出しが極端に不安定という問題が頻発したのです。実はサポートに連絡して一度本体を交換していただいたのですが、多少発生頻度に差はあるものの本質は変わらずということで、このカードトレイが原因と結論づけるしかなくなってしまいました。

 

Ultra 400GB自体は一般的なDAPでは問題なく使えていますので、R6のカードトレイとの組み合わせで物理的に接触不良が発生しやすいということでしょう。現在は暫定的にTranscend製microSDXC 256GBを組み合わせて使っていますが、256GBでは少々心許ないので、後日SanDisk以外の大容量品を何か用意したいと思います。

 

 

折角よくできたDAPであるだけに、このトレイ形状による弱点だけは残念としか言い様がありません。SanDisk製メモリーカードさえ使わなければ、実売価格を加味すれば最強のコストパフォーマンスを持つDAPと評して良いかと思います。

更新: 2021/01/04

SanDisk以外なら大丈夫そう

手持ちに400GB以上のmicroSDXCメモリーカードが無かったため、暫定的にTranscend製256GBで運用していましたが、本日新たに購入したPATRIOT MEMORY製の512GBが届きましたので、これと入れ替えました。容量による不具合の可能性も若干ながら否定できませんでしたので。

 

 

 

 

 

 

 

左が今回導入したPATRIOT MEMORY製の512GB、右側が不具合を起こしたSanDisk Ultra 400GBです。一見して明らかな通り、PATRIOT MEMORY製の512GBは端子側の面が平坦で、SanDisk Ultraは一部分(おそらくNAND Flashの形状)盛り上がっています。SanDiskではUltra以外でもこのような構造の製品が多く見られます。

 

で、結論から言いますと、PATRIOT MEMORY製の512GBで不安定要素は特に見られません。不具合はやはりSanDiskの形状によるものという可能性がより高くなりました。

 

並行輸入品では安価に入手可能なSanDisk製品に対応できないというのは痛手ですが、そう頻繁にメモリーカードを入れ替える機会も無いであろうということで、PATRIOT MEMORYの方を使うことで問題なく運用可能であれば、とりあえずはOKでしょう。ただ、汎用性のためにはHiBy、SanDiskの両者になんとかしてほしいところではあります。

  • 購入金額

    26,400円

  • 購入日

    2020年12月15日

  • 購入場所

    飯田ピアノ オンラインストア

21人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • Takahiroさん

    2020/12/24

    (役に立ちませんが)iBasso DX160 ver2020ならサンディスクExtreme 512GBはなんの問題もなく使えます。もしかしたらスマホのようにトレイに置いて挿入するタイプよりそのままズボッと入れるDAPのが良いのかも。
  • jive9821さん

    2020/12/24

    > Takahiro さん

    当然ながらスロットインタイプのスロットであれば問題は起きませんね。
    トレイタイプでも他社のものは干渉しませんので、これはHiByの設計の問題だと思います。

    eイヤホン辺りに試聴機があるDAPは殆ど触ったことはありますが、この価格帯でわざわざ
    カードをトレイに装着する製品は他にまず無いんですよね。試聴の時に面倒なので、普通に
    スロットインタイプにして欲しかったところです。

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