所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。弓が踊る、弦が歌う。そんな表現力豊かで弾き手の感情を伝える楽器ヴァイオリンの「わかりやすく、親しみやすい」伝道師の作品をご紹介します。
中西俊博、ヴァイオリニスト。クラシックフィールドで弾くこともあるが、真骨頂はポップス~ジャズエリア。特にポップス系の曲での明るく楽しいプレイは、クレジットを見なくても彼だとわかるほど。
そんな彼の6枚目のアルバムが“Walkin in Paris”。前作“In The Pocket”
のときからそれ以前と所属レコード会社を変えたが(SONY⇒FOR LIFE)、ポップス系以外ほぼ扱っていないFOR LIFEの社風が影響したのか、彼の作品の中でも最もポップス度が高い作品となっている。そのため、どの曲も親しみやすく、覚えやすい。
「At The Corner」。同じ曲がラストにも「at the corner」として収められるが、そちらのヴァイオリン+ピアノ+ギターという小構成に比べて、こちらは中西に加えて桑野聖のヴァイオリンがもう一本加わり、リズム隊(ドラムス+ベース)も入って軽やかでゴージャス(関係ないが、CD紹介などで、英字を全て大文字にしているようなサイトがあるが、大文字小文字の選択には制作者の想いがこもっているし、今回みたいに区別がつかなくなることがあるのでやめて欲しい)。ゆっくりとなる中間部で2つのヴァイオリンが絡み合い、溶け合い、音を紡ぐのが本当に美しい。その一方、ヴァイオリンソロはコミカルな音を使って聴く側を楽しませる。
「Walkin' Tour」は活躍フィールドの広い中西ならではの曲。ニューエイジ風ポップスのこの曲では、基本の8ビートのリズム(シンセベースとドラムス)は打ち込み(パーカッションは浜口茂外也が叩く)。これに総勢20人以上のゴージャスな生ストリングス隊と、土方隆行のクリーンなエレキギターのカッティングが盛り上げる中、かわいらしいシンセ音で山川恵津子のメロディが乗る。中西はいわゆるサビのところまで出てこない抑えたプレイ。ただ一度登場すると抑揚のあるプレイで場を制圧するのだが..特にいわゆる「間奏」部分のソロはどうやって出しているのか、という音満載で魅せる。
メロディが美しい「魔法使いの夢」は、菅野よう子のピアノだけの伴奏で、中西の歌心溢れるプレイが堪能できる。完全に「合わせ」で弾いている感じで、時に粘り、時に軽やかに緩急自在。菅野のプレイも素晴らしく、ヴァイオリンを盛り上げつつ、上手く装飾を入れてくる。中間部の中西と菅野の技巧が発揮されたトリッキーな譜割りの部分も、寄り添い方が粋。
ジャケットに収められた「魔法使いの夢」の楽譜。こっ細かい!(^^ゞ
この後の作品はややポップ度合いを緩め、ジャズだったりクラシックだったりの比重が高まるが、この作品で確立した「明るい」ヴァイオリンの方向性は生涯変わらず。
生楽器系インストものをあまり聞かないひとでも、スッと入っていける清涼剤のような作品です。
【収録曲】
1. At The Corner
2. Le Promenade
3. Walkin' Tour
4. ノスタルジア
5. プルミエール
6. On The Shore
7. Fun、Fun、Fun
8. In The Park
9. 魔法使いの夢
10. Mon Chien -我が友よ-
11. at the corner
「At The Corner(Live)」-帽子をかぶっている方が中西俊博-
ポップなヴァイオリン
彼の創る旋律、奏でる音はとても親しみやすい。確かなテクニックを持ちながら、それをゴリゴリにこれ見よがしに押すのではなく、「引いて」使うところが粋。
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購入金額
3,000円
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購入日
1991年頃
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購入場所
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