レビューメディア「ジグソー」

美しい旋律の粋なアレンジ

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。サウンドトラック(サントラ)。映画やドラマ、アニメなどで使われる主題歌や挿入歌、BGMを集めたもので、その作品のテイストを決めたりします。一般的にはBGMとして多数の楽曲を制作しなければならないサントラ制作者と、作品の「顔」となる主題歌(挿入歌)を創るアーティストは別のことが多いのですが、一部主題歌を制作したアーティストがサントラ全体を手がけることもあります。日本を代表するアーティストが手がけたTVドラマのサントラをご紹介します。

 

DREAMS COME TRUE(DCT)。1980年代末から現在でも活動を続ける老舗バンド。もともとヴォーカリストの吉田美和とベーシストの中村正人、キーボード・マニピュレーターの西川隆宏の3人構成だったが、現在は吉田と中村のふたりで活動している。

 

本作は、TBS系TVドラマ「愛していると言ってくれ」のオリジナル・サウンドトラック。...といっても多数の曲やSEまでが入ったいわゆる「サントラ」ではなく、主題歌&挿入歌であるDCTの18thアルバム“LOVE LOVE LOVE/嵐が来る”のバリエーション集という感じ。

 

ディスクとしてのアーティストクレジットとしては、美和の歌っているトラックや、西川がマニピュレートしているトラックもあるのだが、「DCT」ではなく「中村正人」となっていて、「LOVE LOVE LOVE」と「嵐が来る」の作編曲者である中村が、両曲を素材として(11曲目除く)様々なシチュエーションに合わせて器楽アレンジした、という感じの作品。

 

最初に元歌のインストヴァージョン、最後にヴォーカルヴァージョンが入っているのだが、この中では「嵐が来る~インストゥルメンタル・ヴァージョン」がステキ。もう一方のインストヴァージョン、「LOVE LOVE LOVE~インストゥルメンタル・ヴァージョン」は、単にソプラノサックスで元曲のメロディをなぞっただけの「カラオケ臭」がするが、「嵐が来る~インストゥルメンタル・ヴァージョン」は、もともとフュージョン楽曲だったかのように、イントロでもオブリを入れ、曲に入っても歌のメロディだけではないオカズがあったりして、独立の曲として十分成り立っている。哀愁あるアルトサックスの音色も泣かせる。やや直線的なソプラノサックスと抑揚がつけやすいアルトという違いもあるが、「嵐が来る~インストゥルメンタル・ヴァージョン」の方は、初っぱなから崩していて、カラオケ臭さがほとんどない。これはかなりかっこよい仕上がり。

 

その「嵐が来る」は歌入りのノーマルヴァージョンの他に、あと4種のインストアレンジが入っているが、その中で出色なのが、「エピソード#2~嵐が来る(インスト)」。イントロはむせび泣くペット~ベースがメロディラインをとるイントロ~曲に入るとペットがメロディラインに戻り、ゆったり目の4ビート+ランニングベースで小粋。ペットはメロディラインとは言うものの、ほぽ「ソロ」で、アウトスケール交え、吹きまくり。「エピソード」とつく曲は、その話数で劇中に使われた曲なのか、演奏分数も2分前後で、イントロがなくサビだけ、とか「曲」として評価するには少々物足りないものもあるが、この「エピソード#2~嵐が来る(インスト)」は、少々短めだが、3分あるのできちんと曲のていをなしている。

 

もう一曲の「LOVE LOVE LOVE」は、やはり歌入りの「LOVE LOVE LOVE(オリジナル・歌入り)」かな。この曲のややもすれば「単調」に感じるメロディは、「声」が、それも吉田美和の声が不可欠なのかも。どちらかと言うと「詞を聴く曲」でもあるし。歌詞の内容としては♪ねぇ/どうして♪「好きなこと伝えたいだけなのにうまく言えない」⇒「夢で会いたいと願うがいちども出てこない」⇒「愛してる人に愛してると言うだけで涙が出る」⇒「ふたり出会った日が思い出になっても愛してる」ということをたっぷりと時間をかけて歌っているだけなのだが、表現力豊かな美和の声で聴くと、世界が広がる。

 

この作品、結局元ネタ2つをイロイロ料理して、聴かせる...言ってしまえば同じテーマのアレンジ違いを、作曲者自らプロデュースして詰め込んだだけ、という事でもあるのだが、さすがDCTのブレーン、どの曲も旋律の持つ美しさをきちんと表している。特にジャジィな雰囲気がある曲が美しい。

 

ドラマの中でこれらの曲がどのように使われたのか、気になるサウンドトラック集です。

DCTの作品ではなく、中村正人の作品という位置づけ
DCTの作品ではなく、中村正人の作品という位置づけ

 

【収録曲】

1. LOVE LOVE LOVE~インストゥルメンタル・ヴァージョン
2. 嵐が来る~インストゥルメンタル・ヴァージョン
3. エピソード#1~LOVE LOVE LOVE(インスト)
4. エピソード#2~嵐が来る(インスト)
5. エピソード#5~LOVE LOVE LOVE(インスト)
6. エピソード#4~嵐が来る(インスト)
7. エピソード#3~LOVE LOVE LOVE(インスト)
8. エピソード#1~嵐が来る(インスト)
9. エピソード#4~LOVE LOVE LOVE(インスト)
10. エピソード#3~嵐が来る(インスト)
11. 悲しみのエピローグ(インスト)
12. エピソード#2~LOVE LOVE LOVE(インスト)
13. LOVE LOVE LOVE(オリジナル・歌入り)
14. 嵐が来る(オリジナル・歌入り)

 

「LOVE LOVE LOVE(オリジナル・歌入り)」

更新: 2020/10/02
必聴度

曲のアレンジはどれも良いが短い

トータルで38分ほどしかないので、少々不完全燃焼感が...

  • 購入金額

    2,200円

  • 購入日

    1995年頃

  • 購入場所

12人がこのレビューをCOOLしました!

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