所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽やアーティストとの出会いはどんなところに潜んでいるかわからない。最近はYouTubeの連続再生で見知らぬアーティストの曲が流れてハッとしたこともあります。でも以前は多くはラジオやTV。特にBGMとしてかかった曲はその題名やアーティストを調べるのに苦労したものでした。MVをバックに天気予報を流す深夜の番組で耳にして、その印象的な声と旋律が強く心に刻まれた楽曲をご紹介します。
森広隆。シンガーソングライター。もうすぐ芸歴20年を迎えるベテランだが、派手な表舞台ではなく、地道な活動をしている。2001年~2004年はメジャーレーベルで活動したが、その後インディーズに居を移し、でも着実に作品をリリースし続けている。好きなアーティストとして、JamiroquaiやStevie Wonder、日本人のアーティストとしてはCharなどを挙げており、さらにスガシカオと親交がありオープニングアクトを務めたことがある...などと言うから「どこに投げてもストライクゾーン」というズボスボのcybercatの音楽的嗜好からしても、超ド真ん中。
そんな彼の2ndメジャーシングル、“ゼロ地点”。
以前インディーズから出したミニアルバム“ゼロ地点”
と同名だが、中身は別。唯一共通する曲である表題曲は、より猥雑なエネルギーを持って迫ってくる新録音。
その「ゼロ地点」。実はcybercatと彼の出逢いの曲。深夜の天気予報番組のバックで流れたこの曲の歌詞を殴り書きし、調べて調べて探し当てた音源。インディーズ盤の関口源八のエネルギッシュな音も良いが、レギュラーグリップがジャズっぽい、波多江健のハイハットの「閉め方」が絶妙なドラミングがスピード感抜群!河内肇のオルガン音色のキーボードが、さらにそれを加速する。ギターは、右chのカッティングは森自身だが、左chのソロは大里和生。速弾きではなく、音色とフレーズで「聴かせる」ソロがインパクトが強い。そしてシャウトする森も媚びていない。♪安心/客観/協調/形状/捨て去った先のゼロ地点♪
「Trash」。スロー目の曲ながらリズムコンシャスな曲。Aメロはバック(ドラムス、ベース、キーボード、ギター)フルユニゾンのようなパターンの上で、森がファンキィに歌う。シンクロリズムの切れ目で各楽器がフィルイン(おかず)を入れるのだが、ここで魅せるのがベースの紺野光広。安易に?スラップに行くのではなく、ライン取りや複数弦弾きの妙で聴かせる。波多江のスネアロールを中心とする「静かな」フィルインもかっこいいな。
ラストの「密室」は、他のアルバムなどには収録されていないこのシングル独自の曲。曲調的には「シングルA面」にはならない感じの、静かめで強烈なアピール度はない曲だが、実に粋。実に実に粋。イメージとしてはJamiroquaiの一部の曲を思い起こさせる、つぶやくような歌唱が、ジャジィでCOOLなバッキングにのる曲。森自身が弾くギターが、時に彼の歌の合間に入り、時にユニゾンっぽく寄り添い、時に粘りとキレが両立したカッティングでグルーヴを創る。彼のセンスとギターの上手さが堪能できる。この1曲を聴くためだけに盤を購入しても損はしない。
インディーズでのデビュー作タイトル曲であり、それまでのライヴ活動でも高い評価を得ていた楽曲である「ゼロ地点」。森にとっては「満を持して」という感じでのリリースだったと思うが、クロウト筋には注目されたが、一般的には「売れた」というほどの爆発はなかった。
ただ、この曲の他のレビューに「深夜の天気予報で流れた」と複数の人が記していることからも、出会った人には衝撃的な作品だったのだと思う。たとえそれが、深夜の人間の感覚・感性が高まるという「丑三つ時」に流れたからであったとしても...
自分にとっては、深夜に頭を殴られたような、そんなインパクトのある作品との出会いでした。
表面には曲名を書いていない装丁。殴り書きの製品番号に味がある。
【収録曲】
1. ゼロ地点(New Recorded)
2. Trash
3. 密室
「ゼロ地点(New Recorded)」
森クンのハイトーンヴォイスとギターの上手さが堪能できる
疾走感ある表題曲、間の妙が感じられる2曲目、ジャジイでブルージィな歌とプレイが粋な3曲目、どれもとても印象的。
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購入金額
1,260円
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購入日
2002年頃
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購入場所
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