レビューメディア「ジグソー」

必要な機能を一通り網羅した上に、侮れない音質面での実力

 

 

 

自宅のTVをPanasonic TH-43FX500に替えて以来、音楽番組などでTVの音質の薄っぺらさが気になるようになりました。それまではSHARP LC-37GX50(LC-37GX5の特定販路モデル)というTVを使っていて、色々と弱点はあったもののスピーカー周りは充実していて単体でも特に大きな不満無く使えていたのです。

 

一応ここ最近はTV脇にKENWOOD RD-VH7PCというミニコンポを置いていたのですが、この製品には光デジタル入力が用意されておらず、ましてやHDMIなど全く考えられなかった時代の製品であるため、TVの音声を入力するとしてもヘッドフォン端子から変換ケーブルでアナログライン入力に繋ぐ程度しか方法がありませんでした。現実的には使い勝手に難があるのでこの手段は却下です。

 

 

 

 

 

 

そこで、TV音声の強化と、リビングに置けるオーディオ環境の強化のために、オールインワン型のシステムコンポを導入することを検討していました。

 

当初はスピーカーまでも内蔵していて、光入力やネットワーク機能も備えているという、Technics OTTAVA f SC-C70なども検討はしていました。しかし、設置できるスペースは小さな棚の上程度しか無く、意外と大きいSC-C70を置く余地はありません。ついでにいえば予算もなかなか乏しいものがあります。

 

実はRD-VH7PCに接続しているスピーカーは、かなり昔に使っていたSHARP製ミニコンポのセット品で、お世辞にも良いものではありませんので、本当はスピーカーも同時に入れ替えることを想定していました。しかし、予算の問題もあるため、スピーカーはまた後日ということにして、差し当たってRD-VH7PCの入れ替えを優先することにしました。

 

そうなると、候補はいくつかあったのですが、以前から販売店の店頭などで使って意外と気に入っていた、marantz M-CR612を選択しました。DALI OBERON1辺りと組み合わせて聴いてみると、きちんと音楽を楽しめるだけの音を出しているという印象がありましたので。

 

販売店の1万円引きクーポン券が使える間にということで、5月下旬に発注して、6月10日に到着しました。納期に1ヶ月以上要する場合もあると聞いていましたので、予想よりは早かったという印象です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マランツのWebでは単に「システムコンポ」と紹介されていますが、箱を見ると「Network CD Receiver」と書かれていますね。確かにそう呼ぶ方がしっくりとくる内容ではあります。

 

 

 

 

 

 

 

かなり多機能な製品ですが、フロントパネルはすっきりとまとまっています。先代のM-CR611ではフロントパネルにもUSB A端子があったのですが、M-CR612ではフロントパネルの端子は削除されて背面のみとなりました。使い勝手という意味ではフロントにあった方が良いのですが、デザインはフロントに無い方がすっきりとしますね。

 

 

 

 

 

 

 

背面の端子類です。スピーカー2系統、デジタル入力(光×2)、アナログライン入力(RCA×1)、USB A×1、ネットワーク(100BASE-TX)×1、アナログライン出力×1、スーパーウーハー出力(RCA)×1、アンテナ入力(FM/AM各1)となります。

 
 
 
 

 
 

 

添付品です。リモコンが見切れてしまっていますが、電源ケーブル、AMアンテナ、リモコン、取扱説明書、クイック設定ガイドが入っています。

 

 

 

 

 

 

 

導入時に用意したものです。イーサネットケーブル(ネットワーク入力用)、USB延長ケーブル(背面のUSB A端子を使いやすくするため)、iPad mini 2(HEOSコントロール用)となります。

 

 

初回起動時には「かんたん設定」が起動します。本体のディスプレイに項目が表示されますので、クイック設定ガイドと表示を見ながら操作を進めれば、必要な設定が行われるようになっています。

 

クイック設定ではネットワーク関連の設定も行いますので、本体を立ち上げる前にネットワークケーブルの接続(有線LANの場合)や無線LAN環境の準備(無線LANの場合)は予め行っておいた方が良いでしょう。

 

 

 

 

 

 

これ以降は、導入設定がすべて済んだ状態で話を進めます。

更新: 2020/06/21
機能

HEOSにより、十分に多機能

今まで使っていたKENWOOD RD-VH7PCであれば、再生できるソースは以下のようなものでした。

 

・CD

・ラジオ(FM/AM)

・アナログライン入力

・PC接続(USB B端子による)

 

 

一方、M-CR612では以下のようなソースが利用できます。

 

・CD

・ラジオ(ワイドFM対応 FM/AM)

・アナログライン入力

・デジタル入力(計2系統)

・USBストレージ

・ネットワーク(DLNA、各種ストリーミングサービスやインターネットラジオ等対応)

・Bluetooth

 

 

同じような小型コンポでも、時代と共にソースの多様化が大きく進んでいることが判ります。

 

私自身が普段使うのであればネットワーク再生は重宝するのですが、親が使う限りではCDとラジオ、デジタル入力によるTV音声程度でしょう。ただ、折角余ったiPadもありますので、一応ネットワーク環境も利用できるようにはしています。

 

マランツやデノンのオーディオ機器では、ネットワーク環境を活用するために「HEOS」というプラットフォームを利用します。まずはiOSまたはAndroidのデバイスにHEOSアプリを導入します。導入手順は各ストアで探してきて入れるだけなので、ここでは省略します。今回は写真にあった通り、iPad mini 2に導入しました。

 

 

 

 

 

HEOSアプリは、本来DENON製ワイヤレススピーカーのために用意されたプラットフォームであり、初期状態ではスマートスピーカー用のセットアップツールなどが表示されるのですが、立ち上げた時点でメニュー内「マイデバイス」に「Marantz M-CR612」という項目が存在していますので、そこをタップすることで、M-CR612の各種操作が可能となります。

 

 

 

 

 

 

 

実は結構色々と設定可能項目があるということが、HEOS上で見て初めて判りました。

 

HEOS上から、M-CR612で扱えるソースは一通り扱うことが出来ます。スクリーンショット1枚では収まりきらなかったので、2枚掲載します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネットワーク経由のソースだけでは無く、M-CR612本体のCDプレイヤーやチューナー部も扱うことが出来ます。使いこなせる人であれば、このアプリだけでほとんど用事が済んでしまうといえます。もっとも、導入から既に10日以上経過していて、私以外に誰もiPadを立ち上げた様子はありませんが。

 

「ミュージックサーバー」という項目は、実際にはDLNA準拠のメディアサーバーを表示する機能と考えて良いでしょう。我が家の場合はこのように表示されます。

 

 

 

 

 

 

 

実際に音楽ファイルを保管しているサーバー上で動いている「Universal Media Server」を選択すると、ごく普通に再生されます。自作の24bit/88.2kHz WAVのハイレゾファイルでも問題なく再生されました。

 

一方、音楽配信サービスについては、契約済みのものはAmazon Prime Musicだけですので、こちらを試してみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

取り敢えず「David Garrett」の曲を探してみたところ、カタカナ登録「デイヴィッド・ギャレット」の作品もきちんと見つかりました。

 

 

 

 

 

 

 

BUFFALO WSR-2533DHP2台を使って(現在は子機側をWSR-2533DHP2に変更)中継している無線LANから変換した有線LANということで、構内速度は7~800Mbps程度当たり前に出ていますので、動作はとても軽快です。動作の引っかかりも無く、再生時のタイムラグも気になるほどではありません。

 

 

 

 

 

更新: 2020/06/21
音質

質の悪いスピーカーでも良さが感じられる

本来はスピーカーも入れ替えるつもりだったのですが、予算の問題もありRD-VH7PCからM-CR612に入れ替えるだけに終わってしまい、スピーカーは随分昔に買ったSHARP製ミニコンポ添付の、おもちゃ程度のものですので、じっくりと音質評価を出来る環境ではありません。それを踏まえた上でお読みいただければと思います。

 

 

まずは単にRD-VH7PCをM-CR612に入れ替えただけの状態で聴いてみます。

 

 

 

 

 

 

 

この時点で、RD-VH7PCと比べて明らかに音質の向上が実感できます。ヴァイオリンの音色がきちんとヴァイオリンらしいものに感じられますし、響きの成分もしっかりと再生されるようになりました。普段ソースの質を気にしない親が聴いても「何かヴァイオリンが綺麗になった」というほど、明確に違っています。

 

Amazon Prime MusicとCDとで同じ曲を聴いても、CDと比べるとAmazon Prime Musicは情報量が落ちたことが実感できます。スピーカーのクオリティを考えれば、ここまで表現できることは予想していませんでした。

 

しかも、M-CR612には、バイワイヤリング非対応スピーカー利用時に、2つのアンプで同じスピーカーを再生する「パラレルBTLドライブ」機能が用意されていて、駆動力をさらに向上させることが出来ます。出荷時には無効化されていますので、有効に切り替えて再度同じ曲を聴いてみます。

 

すると、今度が低域方向の締まりが出てくると同時に、一つ一つの音の輪郭が明瞭になる印象を受けます。ここまで来ると「こんなスピーカーからよくこの音が出てくるな」と感心するレベルです。最終的にはスピーカーを入れ替えるべきなのは間違いありませんが、この状態でもそこそこ音楽を楽しめるだけの音は出ていますので、気に入ったものが出てくれば交換するというスタンスで、スピーカーは探したいと思います。

更新: 2020/06/21
総評

約5万円で立派に音楽を楽しめる完成度

M-CR612は、メーカー希望小売価格77,000円で、実売価格は税別5万円前後という製品です。はっきり言ってしまえば、ピュアオーディオの世界では、入門用のアンプ1台を買ったらそれで終わりという程度の価格です。

 

しかし、実際に出てくる音は価格や内容から想像できる音を遙かに超えていますし、かなり濃いめのオーディオ趣味の人で無ければ、この音にケチを付ける人はまずいないのでは無いかと感じるだけの水準に達しています。

 

Bluetoothやインターネットの音楽配信などで手軽に音楽を聴くことも出来れば、ネットワークやUSBストレージ経由でハイレゾファイルをじっくり楽しむことも出来ますし、高音質のファイルをきちんと高音質に聴かせるだけの実力はきちんと備えていることは間違いありません。

 

 

多機能であるが故に、フルに使いこなすためにはHEOSアプリが必要となり、またそのHEOSの操作性がもう一歩という辺りは弱点ですが、使えないというほど酷いものでもありませんので、本機の魅力を損なうほどの欠点では無いでしょう。

 

 

先日、量販店の店頭に並んだ近いサイズのミニコンポに、普段持ち歩いている試聴用USBメモリを挿して軽く聴いてみたのですが、M-CR612+DALI SPEKTOR2の環境のバランスの良さ・質の高さは抜きん出ていました。そのクラスのスピーカーとの組み合わせで10万円に満たない程度の金額ですが、特にニアフィールドでの再生を前提にすれば、ほとんどの場合これで十分なのでは無いかという水準の音が出ていました。

 

もっとも、より高価な単品オーディオ機器と比べれば、いろいろな部分で勝てない部分はどうしても出てきます。しかし、それも気にするのはいわゆるオーディオマニア層(自分含む)程度でしょう。単に「音楽を楽しみたい。でもそこまで金はかけたくない」という人であれば、M-CR612に手頃なスピーカーを組み合わせた環境があれば、おそらく不満は出てこないはずです。もしそれで不満を感じることがあれば…、

 

 

…そこには果てしない、底なし沼が待ち構えています。

  • 購入金額

    54,780円

  • 購入日

    2020年06月10日

  • 購入場所

    ノジマ オーディオスクエア

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