所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。歌というものには、インスト曲を除けば歌詞があります。アーティストにとっては曲も歌詞も自己表現ですが、その世界が広くないアーティストも少なくありません。そんな中、曲調的にも歌詞の世界観的にも多くの引き出しを持つアーティストもいます。そんな多彩な世界を1枚で表現した作品をご紹介します。
スガシカオ。曲調は、ファンクをベースにしながらも、ダンス/エレクトロ系だけではなく、アコギを使ったフォークファンクなども手がけ、その多彩な守備範囲に耳を奪われるが、実は詞の世界が深い。
その詞の世界がある映画の内容と絡み合い、深みを増している。
「真夏の夜のユメ」は、主演藤原竜也と松山ケンイチによる映画「デスノート(前編)」の挿入歌。この映画のテーマソングは、レッチリの「Dani California」だったが、詞の内容、世界観から「真夏の夜のユメ」の方がむしろテーマソングっぽいと評する人もいる。それに名前が記された人物を死に至らせる死神のノート「デスノート」を手に入れ、悪人を私的に成敗し始める藤原竜也演じる夜神月(やがみらいと)と、あくまで法に則り警察に協力する探偵L(松山ケンイチ)の死闘を描いた作品だが、月(らいと)の身上が歌詞によく表れている。♪真夜中/ぼくは夢をみて/ひどくうなされて目をさました/真夏の夜の暗い夢/窓の外に果てしないヤミ/鏡の中にうつった/憎しみと嫉妬/愛と欲望と/ぬくもりと♪最後のワンフレーズ、バックがオフってつぶやくようなアカペラになるのにグッと来る。♪ぼくは孤独でウソつき/いつもユメばかり見てる♪
一転「秘密結社〜annex〜 feat. AMAZONS」は、スガお得意のフォークファンクなのだが、名前の通り、初期の久保田利伸もサポートしていたベテラン女性コーラスグループAMAZONSが加わっていて、ファンキィでソウルフルなコーラスで盛り上げる。ラストが彼女たちのコーラスのリフレインにスガのフェイクが被さりながらフェードアウト、というのが、またクロい。沼澤尚のリズムが気持ちいいなぁ...♪“うす汚れたこの世界を救うため/ぼくと秘密結社をつくらないか?”/地元の友人で/風俗で儲けた奴がいて/金のあてはきっと/それでどうにでもなると思う♪と歌う内容も、ブラック。
「真夜中の貨物列車」は、アコースティックギター+エレピ+打ち込みリズムのゆったりした曲で、詞を聴かせる曲。わりに昏めで、人の心の闇やどうしようもない欲望を描く事が多いスガだが、「Progress」のような光を目指す曲も書く。「列車の気持ち」を歌った歌詞なので、それよりも直接的ではないが、希望を持ちつつ味わいたい歌。貨物列車が夜を走りながら想う♪ねぇ/空に悲しみのない街がいいな/ただひとつも/想像して今日も走るよ/星に憎しみのない街がいいな/どこからか
やさしい歌が流れてほしい♪
DVDは表題曲のMV。オーガスタの公式リリース(↓添付)とはヴァージョンが違う映像で、映画「デスノート」のシーンがはさみ込まれている。ただ色調的に「合わせて」あって、全く違和感がない。詞とのシンクロ度も高く、映画への興味が高まる良いMVだった。
一人のアーティストの様々な側面を曲調の点からも、歌詞の世界の点からも楽しめる作品。「シングル」として1つにまとめられた曲達にしては、かなりバラエティに富んでいるが、全て「スガカラー」なのがさすがの力量。
一粒で三度オイシイ?作品です。
【収録曲】
<CD>
1. 真夏の夜のユメ
2. 秘密結社〜annex〜 feat. AMAZONS
3. 真夜中の貨物列車
<DVD>
1. 「真夏の夜のユメ」ビデオクリップ
「真夏の夜のユメ」
三曲三様?の歌詞の世界が楽しめる
昏いスガ、ブラックなスガ、勇気を与えるスガ。
どれも彼。
全て彼。
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購入金額
1,575円
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購入日
2010年頃
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購入場所
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