3月1日に、限定300個という形で発売された、オルトフォン製MCカートリッジ+ヘッドシェルのセット品です。
カートリッジはオルトフォンのMCカートリッジとしてはエントリーモデルとなるMC Q5、ヘッドシェルにはSH-4の専用塗装版を用意して、組み付け済みで出荷されているというものです。
単体のMC Q5が通常3万円前後、SH-4が3千円弱ですが、この2つのセット品となるMCQ5/SH4Rは税別2万5千円で発売されることから、合計価格どころかMC Q5単品よりも格安というわけです。
私は先代のMC StarシリーズのエントリーモデルだったMC-10Wは所有していますが、MC Qシリーズは持っておらず、それなりに興味はあったので買ってみることにしました。
同じ赤塗装のSH-4がセットされているMMカートリッジ、2M RED W/Hは以前購入しましたが、箱はそれよりも間に合わせ感が強いものです。
販売てこ入れのため、オルトフォンジャパンで急遽企画したのではないかという気がします。実はMCQ5/SH4Rは2016年にも限定販売されたことがあるのです…。
先代のMC Starシリーズは価格に割に高級感のある外装でしたが、MC Qシリーズは率直に言って安っぽいんですよね。また、SH-4もヘッドシェル本体はともかくとして、リード線が頼りなさそうな細さです。音質的に底上げが必要と感じたら、またKS-Remasta製のリード線を何か用意するかもしれません。
「オルトフォンのMC」というブランドが欲しければ
それでは、早速音質を確認してみましょう。当然Technics SL-1200G+Phasemation EA-200の組み合わせで試用します。
外観のイメージは全くの別物でしたが、基本的な音質傾向はMC-10Wに割合近いものでした。ただ、無垢楕円針のMC-10Wに対してMC Q5は接合楕円針であることが影響しているのか、一つ一つの音色の質はMC-10Wに全く及びません。
低域がゆったりと豊かに出てくる点は両者とも同じなのですが、レンジはMC Q5の方が明らかに狭く、高域方向の明瞭度もあまり出ません。誤解を恐れずにいえば、MC-10Wの音を2ランク以上劣化させればこんな感じかな、という印象でした。確かにMC-10Wの直接的な後継モデルはMC Q10ですから、グレード差が出るのは仕方ない部分はあると思いますが、予想以上に差が大きいという印象です。
さらにMC Q5でいただけない点は、ピーク時の音の歪みが大きいということで、物理的な設計もMC Starシリーズの方が良かったのではないかという気がしてしまいます。
ヘッドシェルやリード線を交換することで改善するのであればやってみる気になるのですが、正直言ってそこまでの可能性は見いだせません。
以前某オーディオ専門店の製品レビューで取り上げられた時には「音の輪郭がはっきりして明瞭度が高いが、演奏の熱気が伝わらない」という評価を受けていた製品ですが、私が所有するMCカートリッジの中ではこの製品はダントツで明瞭度は低いと思います。使うトーンアームの性質だけでそこまで極端に評価が変わるのかと疑問に感じますが…。
もっとも、演奏の熱気が伝わらないという点については完全に同意です。音楽性は言うに及ばず、音質もお世辞にも良いものでは無いというのが私の感想です。
とはいえ、現時点で3万円以内で買えるMCカートリッジなど、audio-technica AT-OC9XEBとOrtofon MC Q5程度でしょう。直接比較したわけではありませんが、それぞれの音を聴いた限りにおいては、この両者を比較すればAT-OC9XEBが音質でやや優位に立つ程度の良い勝負をしそうな気がします。
一昔前のしっかりとした製品には到底及びませんが、3万円以内で「OrtofonのMC」が買えるという点では魅力はあるというべきでしょう。ただ、この価格帯で今カートリッジを買うのであれば、MMカートリッジを選んだ方が良い製品はあると思います。
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購入金額
27,500円
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購入日
2020年03月07日
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購入場所
ノジマ オーディオスクエア
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