藤田恵美の「camomile」シリーズといえば、特に「camomile Best Audio」以来、高音質な女性ヴォーカル作品として、オーディオ愛好家に知られた作品群です。
ただ、私の場合高音質ソースは大体レコード盤で買うのに対して、このシリーズはハイレゾダウンロードまたはCDで提供されていたため、なかなか入手する機会が無かったわけです。
「camomile Best Audio」や「camomile Best Audio II」では、マスタリング過程で私も愛用するオーディオインターフェース、MOTU 1296(SONYの金井氏による音質チューニング版)を使っているということからも、そのうち聴いてみたいとは思っていたのですが…。
もっとも、本作「camomile colors」では、ハイレゾ版として24bit/192kHzが用意されていることから、MOTU 1296は使われていない(1296は24bit/96kHzが上限)ことは明らかです。さすがに結構な型落ちになってしまいましたので、機材の入れ替えがあったのでしょう。
それはさておき、先日オーディオ店にてSOULNOTE製超弩級SACDプレイヤー、S-3を試聴させていただいたのですが、さすがに注目度が高い機材であり、聴かせていただくまでに結構な待ち時間がありました。
そこで、その販売店で売られているCDやレコードを見ている内に見つけたのが、本作「camomile colors」のアナログ盤でした。実はこの作品がアナログ盤で出ているということは全く知りませんでした。ただ、元々聴いてみたいと思っていたシリーズであり、選曲もなかなか面白そうでしたので、S-3の試聴終了後に購入させていただくことにしたわけです。
後で調べると、アナログ盤は昨年5月に発売されていた限定品で、通販等では既に入手不能な状況でしたので、買えたことが幸運だったようです。
本作はUHQ-CDでアナログ盤よりも1年以上前に発売されていたのですが、そちらとは収録曲と曲順が結構異なっています。アナログ盤は以下の通りの内容となります。
Side A
01. Close to You
02. Shape of My Heart
03. Just When I Needed You Most
04. You Raise Me Up
05. The Water Is Wide
Side B
06. Wishes
07. Colors of The Wind
08. Someday
09. Vincent
10. Let It Be
一方、UHQ-CDは以下の通りです。
01. Close to You
02. Colors of The Wind
03. Let It Be
04. Shape of My Heart
05. Vincent
06. Someday
07. Just When I Needed You Most
08. You Raise Me Up
09. The Water Is Wide
10. Ae Fond Kiss
11. Wishes
曲順はほとんど別物で、曲数は「Ae Fond Kiss」の有無による差となっています。
おそらくレコード盤ではA/B面という概念があるため、それに合わせて流れを再検討した結果として、曲順の大幅な入れ替えがあったということでしょう。レコードで聴いている限り、流れはこの順番でしっくりときますので。
質は高いが、楽曲も音質もさりげなさを感じる
それでは、音質も含めた内容に触れていきましょう。
おそらく収録曲が1曲削られたのは、高音質盤として溝の幅を確保すると収録時間が少し足りなくなってしまったということではないかと思います。それだけに、日本盤としてはかなり質の高い音になっていると感じられます。
レコードそのものも180gの重量盤がきちんと採用されていますし、敢えて音圧を上げずにナチュラル感を重視した音作りであることには好感が持てます。
国産の高音質レコードというと、最近話題となったダイレクトカッティング盤がありますが、あちらは良くも悪くも「高音質」という部分を前面に押し出しているような音作りでした。
一方、こちらの「camomile colors」は元々の音楽的なコンセプトに沿っているのだと思いますが、個々の音があまり主張せず、力感をあまり感じさせないヴォーカルの音を中心に据えているため、「さりげなく音が良い」という印象を受けます。
「Shape of My Heart」はオリジナルがスティングの名曲であり、私自身よくオリジナルの方は聴いているのですが、こんな解釈があるのかとというちょっとした驚きがあるアレンジや歌い方でした。オリジナルを超えるとまでは思いませんが、このように楽に聴けるような音作りもなかなか良いとは思います。
また、Le Couple時代のヒット曲「ひだまりの詩」を英語でセルフカバーした「Wishes」もなかなか新鮮です。オリジナルの方が一般受けはしそうですが、個人的にはこちらのアレンジの方が好みでした。
全編を通しての印象としては、やはり「さりげなさ」という一言に集約されるのでは無いでしょうか。肩肘を張らずのんびりと聴ける作品でありながら、聴き込めば聴かせどころが十分にある高音質盤なのです。
ハイレゾ盤の方は聴いていないので何ともいえませんが、このアナログ盤に関しては価格分の価値が十分に感じられるものでした。
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購入金額
4,584円
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購入日
2020年03月08日
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購入場所
ノジマ オーディオスクエア
harmankardonさん
2020/03/13
アナログ→アナログでしょうか.それとも,アナログ→デジタル→アナログなんでしょうかね.
jive9821さん
2020/03/13
camomileシリーズは、基本的には76のテープでレコーディングしたものを、DAWでミックスしているという手法だったと思います。
そして、レコードをプレスする際には高音質ソースはハイレゾファイルで納品することが増えているそうですから、デジタルマスターから起こしたアナログ盤である可能性は高いでしょうね。