所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。若い頃は自分のテクニックを表に出してアピールをしていたアーティストも、歳を経ると、そのテクニックを表現を支えるモノとして使うようになります。そんな「抑えた」でもツボを押さえたプレイで懐かしのフィリー・サウンドを演奏した作品をご紹介します。
Larry Carlton。1970年代から活躍するギター界のレジェンド。
若かりし頃は名曲「ROOM 335」で一世を風靡し、Lee Ritenourと並んでフュージョンギター界の双璧とされる。その後、アコースティック系に傾倒し、数枚アコギ(エレアコ)をフィーチャリングした作品をリリース。
しばらくして暴漢に襲われ、銃で撃たれて左手に麻痺が残ったときには再起が危ぶまれたが、“On Solid Ground”
で見事にカムバック、以降はアコギにこだわることなく、エレキギターも積極的に使って活動を続けている。
それらのソロ活動と並行して、以前からスタジオワークも精力的に行い、Steely Danの名盤“Aja”や、Joni Mitchellの“Hejira”でのプレイでは音楽史にその名を残している。
そんな彼だが、近年はディスクとして残すのは他者とのコラボ盤がほとんどになっている。そのため、収められている作品はオリジナルではないが、2019年現在ソロアルバムとしては一番新しい作品?が2010年発売の本作“Plays The Sound Of Philadelphia”。
サブタイトルに“A Tribute To Kenny Gamble & Leon Huff”とあるように、1970年代のヒットメイカー、作曲チームGamble and Huffの作品をカバーしたアルバム。Gamble and Huffは、フィラデルフィア(フィリー)・ソウルと呼ばれる音楽を多く制作、The O'JaysやBilly Paulに曲を提供し、大ヒットを飛ばした。そんな彼らの作品をLarryがブルージィかつリリカルにプレイしている。基本元曲はヴォーカル曲なので、Larryはメロディラインをなぞる形になるが、おとなしくなぞっているのは1stコーラスのみで、2ndコーラス以降はややぶっ飛んだラインも楽しめる。
「Backstabbers」は、邦題「裏切り者のテーマ」といい、「Love Train」と並ぶThe O'Jaysの代表的なヒット作。全体のアレンジとしては原曲に忠実というか、あまり代わり映えしないというか..だが、1stコーラスはかなり忠実にメロディラインをなぞっていたLarryも、2ndコーラスからはMark Douthitのサックスと絡みつつ、弾きまくりモードへ移行。Steve Guttman率いる生ブラス隊をバックに歌う歌う。あとセンス良いのはアウトロのTony DeSareのピアノの崩し方!イイトコロでフェードアウトしてしまうが、もう少し聴きたかったな。
Andrea Valentiniのハイハットオープンクローズのキレが若干鈍いのがオールディーズな雰囲気の「Bad Luck」は、Kenny GambleとLeon Huffの主催したフィラデルフィア・インターナショナル・レーベルの最重要グループの1つ、Harold Melvin and The Blue Notesの作品。これはファンキィなディスコチューンだったが、メロウなインストナンバーに。もともとオリジナルもフュージョン風味はあった曲なので、違和感なく、Larryも軽やかに弾きまくっている。
Elton Johnの「Mama Can't Buy You Love」は原曲忠実。イントロのブラスのラインもそのまま。ちょっと切ない感じの歌詞なのだけれど、Eltonのあまり暗さを感じさせない歌い方を継いで?Larryのプレイもあまり暗さがない。コード弾きを中心としていてリッチなプレイ。
DVDは20分の前半は今回の制作チーム(ミュージシャンではない)のインタビュー。Kenny GambleとLeon Huffも本人が登場する。字幕や対訳はないので、自分のリスニング力だと半分もワカランのがあれだが。DVDの後半はLarryの曲解説。スタジオで、録音済みのバックトラックをプレイバックし、ポロポロと335をつま弾き、語る。ちなみにこのDVDは本国盤には付属しておらず、日本では「スペシャル・エディション」という位置づけで、輸入盤に外付けする形で不織布に入ったDVDが添付された。これは当初CDのみで発売されたが、東日本大震災直後に来日したLarryが、売り上げを復興支援に寄付するためにスペシャル・エディションとしてDVD付ヴァージョンを追加でリリースしたため。
Kenneth GambleとLeon Huffその人に対するインタビューもある
スタジオで録音済みトラックをバックに弾き、語るLarryの姿も
自分としては、取り上げられている曲はリアルタイム世代ではなく、後に遡る形で遭遇した世代なので、直接の懐かしさというよりは、 その時代の薫りを感じるだけだが、その頃の音楽シーンが垣間見えるような、シブいプレイが堪能できる作品です。
2010年末リリースの盤に、東日本大震災後DVDを国内添付する形で追加リリース
【収録曲】--内邦題、()内オリジナルアーティスト
<CD>
1. Could It Be I'm Falling In Love-フィラデルフィアより愛をこめて- (The Spinners)
2. Backstabbers-裏切り者のテーマ- (The O'Jays)
3. If You Don't Know Me By Now-二人の絆-
(Harold Melvin and The Blue Notes featuring Teddy Pendergrass)
4. Drownin' In The Sea Of Love (Joe Simon)
5. I'll Be Around (The Spinners)
6. You Make Me Feel Brand New-誓い- (The Stylistics)
7. Bad Luck (Harold Melvin and The Blue Notes featuring Teddy Pendergrass)
8. Never GIve You Up (Jerry Butler)
9. Mama Can't Buy You Love (Elton John)
10. Only The Strong Survive (Jerry Butler)
11. Mighty Love (The Spinners)
<DVD>
THE MAKING OF “Plays the Sound of Philadelphia”
「Bad Luck」
凄腕フュージョンギタリストの作品...と捉えると肩透かし。もっと肩の力を抜いて聴きたい
テクニックを前面に出さず、表現を支えるバックボーンとして使うのが、「わかっている」
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購入金額
2,800円
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購入日
2011年頃
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購入場所
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