所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。フュージョンバンド。いわゆるジャズテイストを持つロック~ポップス系楽曲を演奏する高技巧インストバンドをこう呼びますが、このジャンルにとって「リズム」は大変重要です。歌がないぶん、魅せ場も多く、ベーシスト・ドラマーの技量がそのグループの人気を決定づけたりもします。そんなリズムが大切な音楽ジャンルにおいて、リズム隊をメンバーに持たず活動するグループがいます。そんなグループが自己を確立した作品をご紹介します。
DIMENSION。1992年のデビューから、現在までほぼコンスタントに毎年1枚以上のアルバムをリリースしてきた彼ら。昨年(2018年)は新作リリースがなく、ソロ活動を活性化させた彼らだが、今まででも2002年や2006年のように新規音源のリリースがなかった年もあり、また現在もライヴは行われているので「活動中止」というわけでは全くない。
それどころか、1992年のデビュー以来一度もメンバー変更を行わず、四半期以上継続して活動しているバンドでもある。
DIMENSIONのメンバーは、ギター増崎孝司、サックス勝田一樹、キーボード小野塚晃の3人。そう、ドラムスとベースがいない、「リズム隊レス」な構成。フュージョンバンドと言えば、T-SQUAREの則竹裕之や坂東慧といった技巧派ドラマーや、須藤満、田中豊雪といったスラップ巧者、CASIOPEAの世界的ドラマー神保彰に、スラップベースを「チョッパーベース」と言っていた頃から活躍する大御所鳴瀬喜博、NANIWA EXPRESSの怪物ドラマー東原力哉といった感じに、リズム隊にもキャラクターがたったプレイヤーが多い、音楽性がリズム隊にも大きく支配されるジャンルで、一般的にテクニシャンが配されているのが常。しかしDIMENSIONは、ギターとサックスとキーボードという「上物(うわもの)」だけの3ピース構成。これによって、一般的なフュージョンバンドにはあまり見られない打ち込みリズムの曲や、リズムレスの曲などに禁忌がない稀なるインストバンドとなっている。
本作“Second Dimension”は、その特徴を彼らが自覚し、幅広い曲調の曲をちりばめた彼らの2ndフルアルバム。
「Are You Gonna Win?」は、シンベとドラムループを使ったある意味DIMENSIONらしい曲。...でもドラムはフィルインだけに“手数王” 菅沼孝三を使い、ベースは名手故青木智仁が随所で加わるという豪華な体制。かっちりとした機械ノリに、菅沼と青木のセンスの良い装飾が入り曲を進ませる。勝田の速いパッセージで導入され、力強く吹きあげるテーマと、ダブリングとワウ(+ギターシンセ?)でダーティに造った音色に増崎のギターが奏でる合いの手、それを支える小野塚のオルガン音色メインのクラシカルな音が渾然一体となって曲を進ませる。若さあふれるプレイが熱い!
青木の縦乗りのスラップが堪能できるのは、続く「Early Morning」。もともと、角松敏生のインストアルバムでその才能を開花させた青木、こういう縦乗りのスリリングな曲は大得意。青木のプレイをガッチリと締めて支えるドラマーはテクニシャン石川雅春。このかっちりとしたリズム隊の上で、DIMENSIONの3人が遊びまくる。サックスが奏でる明快なテーマと、ギターがつなぐ変拍子的譜割りのブリッジの対比が印象的。
勝田のソプラノサックスに増崎の生ギター、小野塚のピアノという最小単位で演奏される「煌星(Kiraboshi)」はリリカルかつロマンチックな曲。テンポも寄せては返す波のように揺れ動く。T-SQUAREなどのように、メンバー中にリズム楽器担当がいると、なかなか演りづらいこういったフリーリズムの曲も出来るところがDIMENSIONの自由度。
3作目(“Second Dimension”というと2作目のようだが、フルアルバム2作目で、前作“FIRST DIMENSION”のさらに前に、“Le Mans”というミニアルバムがある)として、他のフュージョンバンドと明らかに異なる特徴である「リズム隊レス」を前面に押し出して、彼らの「良さ」を活かした、幅広い曲調がぎゅっと詰め込まれている。
新世代インスト曲好きも、肉体派フュージョンバンド好きもどちらも楽しめる仕上がり。また若い彼らのアイデアとテクニックの「尖り方」が気持ち良い作品です。
【収録曲】
1. Are You Gonna Win?
2. Early Morning
3. It's Up To You
4. Sea In The Moon
5. Beat #5
6. F-Blues
7. 2nd Street
8. Running from Zero
9. 煌星(Kiraboshi)
10. This Time
「Are You Gonna Win?」
初期DIMENSIONらしさにあふれている
このあと、ややヒーリング系やクラブ系に偏ったこともあったが、リズム担当を曲調によって、機械・人・レスと自由に使い分けるDIMENSIONの「リズムに縛られない」良さが出ている。
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購入金額
3,000円
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購入日
2000年頃
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購入場所
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