日本国内に拠点を置くハイエンドオーディオケーブルメーカーのBrise Audio。その製品群の中でも近年存在感を増しているのが、イヤフォン・ヘッドフォン用のリケーブルです。
さすがに元々高額なオーディオケーブルを手掛けるメーカーであるだけに、イヤフォンケーブルであってもflex001SEという製品を除きローエンドモデルで3万円クラスですので、なかなかこれまで縁がありませんでした。割合似た立ち位置のメーカーであるWAGNUS.が2万円以下の製品を割合多く手掛けているだけに、私にとってはBrise Audioは手が届かないブランドという印象だったのです。
ところが10連休の初日から2日間、東京・中野で開催されていた春のヘッドホン祭り2019で「試聴するだけならタダだ」という程度の感覚でBrise Audioのブースに立ち寄ってみると、今までのイベント等で試聴用に使われた、STD001、UPG001、STR7-Stdという(比較的)廉価な製品群については、現品限り1万円均一で販売すると表示されているのです。
一応処分品であるため保証は付かないものの、該当する製品はその場でじっくりと試聴した上で購入可能とのことで、2.5mm4極 CIEM 2PinのSTR7、4.4mm5極 CIEM 2PinのSTR7を選んで試聴した上で、2.5mm4極の方を購入してきました。
STR7-Stdは、これまでBrise Audio製リケーブルの弱点となっていた、硬すぎるケーブルによる取り回しの悪さを改善したという特徴があり、このSTR7-Stdを実際に使ってみても他社のケーブルよりはまだ硬めではあるものの、取り回しが悪いというほどのものではなくなっています。普段持ち歩く際にも、他社のケーブルと同じようにイヤフォンケースに丸めて入れておいて問題ない程度に収まっていますので、充分実用的なところまで改善されたといえるでしょう。
STR7シリーズの製品は、ケーブル部がSpiral77と呼ばれる独自の立体構造を採用していて、従来の製品群と比較すると柔らかくなっている一方で、これまでとはまた違った音質上の特徴を持つ製品に仕上がっているとのことです。実際に試聴してみて印象が良かったからこそ買ったわけですが、改めて音質について次から検証してみたいと思います。
色づけが少なく高解像度。音場も充分に広い
今回は私がメイン級として愛用する2本の64AUDIO製イヤフォンで試聴してみましょう。BAドライバーを片側4基搭載するU4と、BAドライバーを片側3基搭載するU3です。また、DAPとしてはAstell&Kern KANNとAcoustic Research AR-M200を組み合わせます。
まずはU3の方を組み合わせてみます。KANNでアルバム「The Nightfly / Donald Fagen」を聴いてみると、空間に濁りがなく澄んだ音というのが第一印象です。ハイハットの質は質感・透明度共に素晴らしいものがありますし、ドラムやギターのカッティングのキレ等も文句ありません。ただ、「Ruby Baby」の時に少し気になったのが、中域の密度がやや薄く感じられることと、全体的にかなりドライな印象を受けるということでした。
そこでDAPを4.4mm5極変換アダプターを介してAR-M200に替えてみると、前述の印象が一気に強く出てきます。非常に正確な音ではあるのですが、聴いていてちょっと味気ないなと感じられてしまうのです。U3にはどちらかというと中域の密度が濃いケーブルが合いますので、相性という意味でもう一つなのかも知れません。
ここでDAPはAR-M200のままにして、イヤフォンをU4の方に替えてみます。すると元々低域過多なU4との組み合わせではSTR7-Stdの中高域寄りのバランスが見事にマッチするのです。U3で見せた透明度や解像度の高さというオーディオ的な素性の良さがU4ではそのまま長所として表れますし、付帯音が少なく明瞭な音であるためU4のローブースト感がかなり緩和されます。
U4と今まで組み合わせていたのはAZLA Silver Galaxy Mix+でしたが、これと比べても相性という意味では良好といえるでしょう。Silver Galaxy Mix+は密度の濃い音で楽器の質感がよく出るケーブルではあるのですが、STR7-Stdと比べると付帯音がやや多く、それが低域の妙な厚ぼったい印象に繋がっていた部分がありました。
どちらも新品で3万円クラスのケーブルではありますが、聴かせ方が上手く自分のキャラクターを明確に持っているSilver Galaxy Mix+に対して、オーディオ的に高い水準で余計な色づけをしないで与えられた音をそのまま届けるSTR7-Stdという違いがあります。どちらが良いというのは好みの問題でしかないのですが、U4との組み合わせに関しては文句なしにSTR7-Stdの方が好印象でした。
結果として、今後U3には今までU4で使っていたSilver Galaxy Mix+ 2.5mm4極バランスを、U4にSTR7-Stdを、それぞれ組み合わせるという形が定まりました。今までどうしてもU4については相性がバッチリといえる組み合わせは見つけられていなかったのですが、STR7-Stdでようやく見つかったという印象です。
リケーブルはあくまで組み合わせの結果として音が決まりますので、どんなケーブルであっても全てのイヤフォンに完璧な相性ということはありません。結局自分の機材で直接試すことが必要なのは疑う余地がありません。ただ、STR7-Stdのようにオーディオ的な素性が良い製品であれば、割合幅広い組み合わせにマッチする可能性は高いのではないかと思います。
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購入金額
10,000円
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購入日
2019年04月27日
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購入場所
春のヘッドホン祭り2019 Brise Audioブース
harmankardonさん
2019/05/06
1万円で購入できるのはお得です.
cybercatさん
2019/05/06
結構会場限定品の残りとかが安くfujiyaあたりに流れています。
jive9821さん
2019/05/06
確かに製品の平均的な質が高く、日本メーカーらしくオーディオ的な破綻がないという印象がありますね。1万で買えるのなら充分に満足出来ます。3万くらいになってしまうと、良いと分かっていてもなかなか買えませんが…。
jive9821さん
2019/05/06
確かに、通販でもUPG001のシングルエンド版が安売りで出ていたみたいです。さすがに9,800円ではもう売り切れていますが…。