本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
1巻の表紙絵で興味をそそられ、
とてもアツい展開に惹かれて、その後2巻の帯コメントコンテストに応募
した小説「君死にたもう流星群」。
天才宇宙飛行士だった恋人(天野川星乃)を宇宙空間でのテロで喪った主人公(平野大地)が、彼女から時を超えて届けられたメッセージにより過去に跳び、星乃を救うべく活動する。タイムリープ後の世界では、彼女が宇宙に散った「時」にはまだ至ってはいないが、星乃を狙う暴漢から大地は身を挺してかばった。星乃を救おうとする活動のさなか、今まで「要領よく」生きてきた大地はそれよりも大切なことに気づいていく。
第1巻は単巻でも終わりうる造りになっていたが、その後続編がリリース。第2巻
で世界が広がり、あのテロとの関係性を匂わせる星乃を狙う存在が示唆される。そんななか大地は、「過去を知っている」からこそ、悪い結果を避けるために行動し、「一周目」とは徐々に分岐が生まれていく。よかれと思ってしたことが、友人たちの未来をも変えていく。より「幸せだった」未来の友人たちを識る大地は、懸命にそのルートに彼らを戻そうとするが...というタイムパラドックスをベースに、退学しようとする友人(山科涼介)に熱く語りかける大地が描かれた。
第1巻と第2巻は、「今を生きること」「夢を諦めないこと」といった熱いメッセージを感じる青春小説の側面が強かったが、続く第3巻では設定を活かしてSFカラーが強くなっている。
話は意外な人たちを軸に展開する。
大地が友人の涼介たちとカラオケで楽しんでいたとき、別の部屋で振り付けやMC込みでアイドルグループBOT48の曲を熱唱する、「ユニバース」ことクラス委員長宇野宙海(うのそらみ)を見かけた。いつもつるんでいる寡黙な少女、「ブラックホール」とあだ名される黒井冥子を唯一の観客に、自作の衣装を着て、カラオケルームでBOT48の星葛真夜の歌と踊りを完コビする宙海。普段はおカタい委員長で通っている彼女のアイドル衣装姿を見て衝撃を受けた大地たちは、その場では深く追求できず彼女たちと別れた。
そのあと大地は「一周目」を思い出していた。宙海は将来公務員試験に受かり、その後県庁勤務という堅実極まりない職に就く。アイドルはもちろん、芸能活動していたという話もなく、不思議に思う大地。
そんなとき大地は、宙海の従姉妹で、以前星乃の事件で世話になったジャーナリスト、宇野秋桜(うのしゅうおう)から頼まれる。「あの子の相談に乗ってやってほしい」「宙海ちゃんは<イイ子>過ぎるんだ」
訪れた宙海の部屋で、押し入れの奥に隠された彼女の宝物を見せられる大地。CDやアイドルグッズ、星葛真夜の直筆サイン入り写真集...そこには彼女の夢が、憧れが詰まっていた。「一周目」で難関大学に受かり、県庁勤務という安定した職に就いた彼女からは到底想像できなかった趣味。性格的にも、彼女はあがり症で本番に弱く、人前で歌うようなキャラクターではない。今の高校も高校受験の滑り止めとして受けた高校だったが、上位志望校の受験でことごとくアガって失敗したから通っているらしい。帰りがけには、厳しい教育と躾をおこなう母親に反抗できず、自分を殺して言うことを聞いてしまう彼女を見てしまう。
宙海の母親の、アイドル関係の活動を否定する強権的な物言いに反感を覚えながらも、大地は迷う。「一周目」の彼女には、アイドルや芸能活動をやる未来は全くなかった。それでも、あくまで本人の夢を追って、100%失敗するとわかっている未来に進めと、つまり安定した未来を捨てろとは助言しづらく、悩む大地。
そんなとき、また謎のベレー帽の少女が現れ、大地に告げる。
「安定した将来ってなにさ?」
「(人間はいつかは死ぬので)人間の死亡率は百パーセントなんだ」
「人生の橋は、対岸には何もないんだ」
「人生には、本質的な意味で『安定』など存在しない」
人生はいつか必ず中空で終わる橋を渡るようなもの...
数日後、秋桜から宙海の家出を知らされた大地。隠していたアイドルグッズを母親に見つかり、捨ててくると、それを持って出て行ったまま帰ってこないらしい。グッズを捨てられず、夜さまよっていた宙海を見つけた大地は、彼女を家に送り届け、出てきた母親に言う。
「グッズ、捨てないでください」
「受験は大事ですけど、この箱の中身も、娘さんにとっては大切な宝物なんです」
「ウチの教育方針に、勝手に口出ししないでほしいの。これはウチの問題なの」
「-違う」
「ウチの問題じゃない。これは、娘さんの問題なんです」
「娘さんの人生は、娘さんだけのものなんです」
「人は必ず死ぬ。そして、生きている間だって、死んじまうこともある。一番大切なものまで-『魂』まで売り渡しちまったら、もうそれは死んだも同然なんだ」
「あんたは今、娘さんを殺そうとしてるんだ」
このやりとりのあと、宙海は親と話し合い、一度だけならオーディションを受けていいということになったという。ただ大地が心配だったのが、そのオーディション-Cydol Project-は、星乃をつけ狙う六星衛一が役員を務めるサイバー・サテライト社の子会社が主催しているということだった。
◆◆◆◆◆◆
そのオーディションの主催者、サイバーTVの「認証会員」の登録の方法にきな臭いものを感じる大地。それは個人認証に網膜認識を用いていたこと。
「網膜アプリ」。六星が世間にばらまこうとしているアプリ。星乃のアパートでも認証システムに網膜パターンは使われている。そして星乃の遺したタイムマシン「スペースライター」の起動にも...
「網膜アプリ」を広めようとする六星の狙いがなんなのか考えながら星乃のアパートに寄った大地は、襲われ、背後から首筋に刃物を当てられる。そして鳴ったスマホの画面をつけるように言われて、インストールした覚えのないアプリがあるのに気づく-「網膜アプリ」。それを起動するよう強要する背後の不審者。自撮り機能を使って背後の不審者を確かめようとした大地は、そこに考えられない人物を見つけて動揺する。
惑井葉月。
星乃の両親と同僚だったJAXAの職員で、彼らの死後星乃を養子とした惑井真理亜の、実の娘。大地を、兄のようにも男性としても慕い、星乃が死んだことから立ち直れず、緩やかに腐っていった「一周目」の彼を献身的に支えつづけた娘。彼女から告げられた言葉は...
「惑井葉月がスペースライトしてきたんですよ。-未来の世界からね」
宙海の親を説得するときの大地の言葉、オーディションで固まってしまった宙海に声援を送るときの大地の行動などは相変わらず熱く、「青春小説」しているのだが、今回は大地が跳んだあとの「一周目」のその後が描かれたり、葉月のタイムリープが描かれたりして、SF要素が色濃くなっている。また、網膜アプリを巡る謎や、最後に転校生として現れたベレー帽の少女などから、星乃を狙う犯人捜しや狙われる理由探しなどミステリー要素も出てきて、エンターテインメント小説としても一層深くなった気がする。
これは4巻が待ち遠しい展開になってきたな....
読後には帯の言葉が刺さる。-バックは購入店特典の宇海ちゃんアイドル衣装ラフ-
初巻のタイムリープ設定が活きている
今までどちらかといえば、「舞台設定」だったタイムリープが、ここに来て活きてきて、SF色が強い話になって話に「前進力」が出た。
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購入金額
712円
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購入日
2019年02月26日
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購入場所
メロンブックス
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