みんなひっかかっているけれど、これはストゥットガルトの飲み屋仲間のアーティストたちが始めた、十年がかりの大がかりな現代アートプロジェクト。「モンキービジネス」の名のとおり、すべてウソと冗談。英国空軍の中佐のモンゴメリー・コリンズなんて、もともと存在しないし、黒森で彼がやっていたという「野生サルに」というロカール(飲屋兼宿屋)も、去年の年末、ストゥットガルトの駅前、潰れた飲み屋の跡地にほんとうに捏ち上げられたばかり。もっともらしいホームページやFacebookなどがいろいろリンクしてあるが、きちんと読めば、ぜんぶ「シュメー(南部ドイツで言う独特のユーモア)」であることがわかる。モンキーサーカス(猿回し)イベント開催、などと書いてあるが、じつは、そのサルは、従業員と顧客のこと。
最近、ヨーロッパは若者の失業率が高いこともあって、飲み屋で話が盛り上がって、ほんとうに始めてしまう、こういう酒がらみの起業がおおはやり。それも、コンセプトやデザインを練りに練って、あたかも歴史と伝統があるかのように装い、市場を支配している古い酒造メーカー(貴族や富豪が多い)をちゃかす。
しかし、本気の冗談なので、酒は破格の高品質で、かなりの高級志向。47種類も素材を使っている、というのは冗談だが、47度はほんとうで、薬草もとても質のよいものを使っていることがわかる。ただし、味は、徹底的な近代的機械醸造で、都会的に洗練されてすぎており、そのあたりが馬脚。(イエーガーマイスターのような古いメーカーだと、もっと泥臭い。)
ほかの町でも失業のせいで若手がバーを手がけることが多く、モンキーのトータルイメージで、エプロンや壁紙、ボトルのディスプレイ台まで作って、この一年で世界進出。自分の舌で味わえば、すべてが冗談であることがわかるし、飲みながら、みんなでその冗談を楽しむ、酔った勢いで、もっと膨らまして、コリンズ中佐のインドでの冒険活躍譚とか、ホラの「伝説」を知ったかぶりして、みんなに語る、とかがこのジンの飲み方。
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購入金額
6,804円
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購入日
2018年12月01日
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購入場所
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