かつてChicagoの看板ヴォーカリストとして活躍し、Chicago脱退の時期にソロアルバム「No Place Left To Fall」を発表していたBill Champlin。その後は旧知の仲間達との活動が続いていて、TOTOのJoseph Wiliamsらと共に発表した「CWF」などがありました。
ライブ活動もコンスタントに続いていて、元ChicagoのDanny Seraphineが率いるCTA(California Transit Authority)のヴォーカリストとしての来日もありました。
どちらかというと気の向くままに色々な場所で活動していたというイメージの彼が、新たにバンドを結成して発表したアルバムが、この「Bleeding Secrets」です。
元々彼には、自身の名を冠したバンドである「The Sons of Champlin」もあるのですが、それとは全く別のバンドとして、この「Wunder Ground」を結成しています。敢えて名義を「Bill Champlin and Wunder Ground」としたのは、自身の名を前面に出すことにより幅広いリスナー層の目に止まるよう配慮したためとみられています。
Bill Champlin and Wunder Groundのメンバーは3名。既に名前が出ているBill Champlinの他には、Billの妻であり、長年音楽活動も共にしている、Tamara Champlin。そして主にセッションミュージシャンとして幅広く活動しているGary Falconeとなります。
元々結成のきっかけとなったのは、Gary Falconeのソロ楽曲の制作にBill Champlin夫妻が協力していたことでした。曲が形になってくると、Garyがその場でギターを手に演奏を始めてしまい、それに触発されてBill Champlin夫妻もその演奏に加わり、即興のセッションが始まったのだそうです。そこで奏でられた音に確かな手応えを感じたBillが、この音をきちんと形にしようということでバンドの結成を提案したことで、このBill Champlin and Wunder Groundが生まれたとのことです。
音楽の流通にも通じているBill Champlinであるだけに、ボーナス・トラックを用意することで日本盤のリリースにこぎ着けることに成功しています。近年はベテランであっても、枚数が見込めない作品は日本盤でリリースされることが少なくなっているのですが、この辺りはさすがです。
売れ線を意識しない作り
Bill Champlinといえば、Earth, Wind & Fireの「After The Love Has Gone」をはじめ、「売れる」名曲を数多く生んでいるアーティストではありますが、彼本来のスタイルはR&B寄りであったり、サイケデリック・ロックであったり、ソウルテイストを見せたりと、極めて音楽的な幅の広さが感じられるものです。
今回の作品では、前述の「CWF」でBillの見せていた色彩を抽出して、そこにGary Falconeの持つカントリー風味や、Tamara Champlinのハードロック的なアプローチが加わっているというべきものです。少なくとも、Chicago時代に見せていた洗練されたAOR風味というものは殆ど感じられません。リハーサル・トラックですが本人がYouTubeに公開しているトラックがいくつか用意されていますので、掲載しておきます。
CWFでもある程度は一般受けを考慮して作られていた感があったのですが、Bill Champlin and Wunder Groundでは自分がやりたい音楽を好きなようにやっているという印象であり、所謂売れ線狙いの曲はありません。
個人的にはGary Falconeが主導して作られている楽曲の方が取っつきやすいかなという印象であり、ここで見られるBillはまさに玄人好みの職人肌という姿です。Bill個人のファンにはこれがたまらないということになるのかもしれませんが、彼個人に入れ込んでない人にはなかなか受け入れにくい部分があるかも知れません。
個人的には所謂「スルメ曲」(聴き込んでいく内にお気に入りになる)となりそうな曲はあるものの、初見でしっくりくる曲はないかなと感じました。勿論クオリティは高いのですが、今までよりはリスナーを選ぶ曲が多いという印象です。
日本盤で追加されたボーナス・トラックも、アルバム全体の流れにきちんと沿っていて、違和感はありません。その意味で、この作品を今から聴くのであれば、日本盤を選んで間違いないでしょう。
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購入金額
2,500円
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購入日
2018年10月16日
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購入場所
楽天ブックス
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