所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。セルフカバー。一般的には過去の自分の作品を歌い直した(演奏し直した)ことを言います。歳を経て新たな解釈で歌ったり、作品完成時には実現できてなかった手法、存在しなかった機器などを用いて再現したりするものです。そんな中、ボーカロイドというテクノロジーを使って発表した曲を、自分の肉声を使って再現したアーティストがいます。そんなボカロPの初めての肉声アルバムをご紹介します。
イナメトオル。別名40mP。別名の方が有名と思われる彼は、ボカロ曲の超絶有名なP。もともとは初音ミクとGUMIを多用するボカロPだったが、顔出しで本人歌唱のシンガーソングライターとしてデビューを果たす。元々の40mPというP名も、「Melody in the sky」という初期の曲のために描かれた初音ミクのイラストの遠近感がアレで、「40メートル級だ」と言われた事によるが、今回のイナメトオルも自身の身長=1.7m⇒1(イ).7(ナ)m(メートル)⇒イナメェトル⇒イナメトオルという事らしい。
このアルバム、“1.7m”は彼のソロファーストアルバム。描き下ろしのオリジナル曲と、かつて彼がリリースしたボカロ曲が彼によって歌い直され、収められている。
「シリョクケンサ」は、元曲はニコニコ動画で200万再生を達成している彼の代表曲の一つだが、本作のアレンジでは意外なことに、キーボードのシーケンスフレーズがエレキギターのクリアーなトーンで再現されている。でもこれを聴くと、元曲もフレーズとしてはギターで考えられていたのかも、と思えてくる。もともと女声(ボーカロイドのGUMI)で歌われていたが、男性の詞でもあり、イナメトオルが歌っても違和感がない。ギターの[TEST]のオブリと事務員Gのピアノソロがジャジィな雰囲気も付け加えており、バンドサウンドの良い曲になっている。
「はじめての涙」は、バックはピアノだけで、♪あの日、君がはじめて流した涙。/その声は僕には届かないけれど。/君が今、笑顔で生きているだけで、/それだけでなんだか幸せなんです。♪と歌う、とても優しい曲。フォーク調の衒いのない歌で、メロディメーカーである彼の魅力が良く出ている。元曲は、彼の奥さんで、歌い手でもあるシャノさんが歌った曲(曲はもちろん40mP)。ただこちらは第二子が生まれたときに、二人でデュエットした弟くんVer.に近い。これは末永く歌い継がれて欲しい名曲。
初回限定盤の特典CDは「LIVE TOUR イナメがトオル。」からのテイク。本作のレコーディングメンバー、ギター:[TEST]、ベース:mao、ピアノ:事務員G、ドラムス:ショボンにもう一人ギタリストして、三代(ギター魂)を加えたバンドで、バンド感が強い。
特に4曲目の「からくりピエロ」はメンバー紹介を兼ねたソロ回しや、会場とアカペラで歌う場面があったりして楽しめる。みんなのソロ、俺が俺がで結構アツイ。バンドサウンドが強く、アウトロのTESTのソロはハードなアーミングとライトハンドを駆使したえげつないもので、かなりハードなからくりピエロ。これは映像見てみたいなぁ...
ボカロ曲の中にはボーカロイドが歌うから成り立っている曲もあるけれど、彼の曲は本当に曲自体が良い。人間の声になっても、充分楽しめるな。
【収録曲】
<CD>
1. 始発電車
2. 神様のおくりもの
3. 恋愛マニュアル
4. シリョクケンサ
5. 夢の中の恋人
6. ジェンガ
7. はじめての涙
8. エイリアンガールフレンド
9. エム
10. 恋愛裁判
11. からくりピエロ
12. ブラウンシュガー
13. 少年と魔法のロボット
<特典CD:LIVE TOUR イナメがトオル。>
1. 夢地図
2. 恋愛マニュアル
3. 春に一番近い街
4. からくりピエロ
5. 少年と魔法のロボット
「シリョクケンサ」
「あの頃」のニコ動系ボカロ曲が好きなら必聴で
一時期ボカロ系楽曲は、人間では難しい速さや高さを競ったが、「残る」曲は「王道曲」。そういう意味では、彼は「センター」にいる。
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購入金額
3,240円
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購入日
2017年06月17日
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購入場所
TOWER RECORDS
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