レビューメディア「ジグソー」

表題曲は一番売れた曲の一つだけれど、むしろカップリング曲の方が聴き所?

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。今ほどダウンロード販売の比率が上がってきても、CDクオリティの音源の購入は圧倒的に物理CDとしての購入が多いcybercat。それはアルバムでは曲の並びにまで気を配ったアーティストの制作時の想いを掴みたかったり、歌詞カードやジャケットの写真やイラストなどに興味があると言うこともありますが、一番大きな理由は「曲との出逢い」です。アルバムやシングルを購入するとき、それらに含まれている曲すべてを聴いて⇒気に入って⇒購入に至ることは稀です。数曲、あるいは表題曲だけが気に入り、購入する事がほとんどであり、その他の曲とは購入後に出逢うことになります。でも時にはそんな曲の中に、もともとのお目当ての曲よりも気に入る曲が含まれているような「出逢い」があることがあります。そんな「出逢い」があった作品をご紹介します。

 

スガシカオ。何度かご紹介しているシンガーソングライター。その誰にも似ていない詞の世界には結構熱烈なファンは多く、各地で精力的に行われているライヴはいつも満杯なのだが、世間一般的にはSMAPの「夜空ノムコウ」の作詞や嵐の「アオゾラペダル」の作詞作曲、NHKの“プロフェッショナル 仕事の流儀”の主題歌「Progress」あたりが知名度が高く、彼の音楽性の変遷まで識っているという人は少ないかも知れない。

 

スガは、デビュー当初はかなりフォーキィな歌も多く、フォークファンクと言う感じの曲が多かった。歌詞の内容も内向的で、人の心の闇をえぐるようなものが過半。その後ビートの効いたエレクトロの方に行き、歌詞も明るめの応援ソングが多くなる。最近は一周廻って還ったような感じで、アコースティックな部分が増えてきているし、狂気を孕んだような詞も再び出てきているが、この作品は時系列的には一番ポップだった時期の「直前」に位置する。

 

表題曲はそれを反映してか、あまりドロくさくなく、洗練されている。しかし、CDを通しで聴いて見ると...

 

まずは表題曲の「フォノスコープ」。乾いたリズムのファンク風味のポップス。Aメロのファンキィなタッチとサビのメロディアスなポップス系の造りが中期のスガらしい。プログラミングをスガの初期を支えたバンマス=森俊之が手がけているが、PVで演奏(当て振り)しているのは、後々まで行動を共にするバックバンド=FUNK FIRE系のメンツ、ということで、このシングルリリース年(2007年)がスガにとって転換点であった事がわかる(この年に、それまでの森を中心とするバックバンドから、坂本竜太-新バンドFUNK FIREのベーシスト-を中心とするバンドに替わる)。

 

購入して気に入ったのが、習作といった感じの「SPEED <Demo Track>」。いわゆるデモの造りで、ドンカマ(リズムマシン)に合わせてスガが一人で全楽器を多重録音している。最近は打ち込みでもかなり細かい制御が出来て表情を付けられるが、あえて?単調なリズムとややオーバーレベル気味の録音がガレージ感/アングラ感を出している。ディスコ調のちょっと懐かしいイメージもある、ダンサブルなナンバー。

 

「Hop Step Dive」は、名手亀田誠治の雄弁で伸びやかなベースが、グングンと曲を前に進ませて気持ちよい。小倉博和のスライドを多用したファンキィなソロもイイナ。スガがある友人に向けて書いたという詞も元気がもらえる。♪明日/ぼくは歌うよ/ギターの弦がちぎれるまで/カーテンしめて/じっと待ってても/やり過ごせやしない/昔よりはちょっと/マシな歌うたえるかな・・・/なにも決まっていない明日へ/右からHop Step Dive♪

 

初回限定付属のDVDは2曲のPVが収められる。1曲は表題曲で、パツキンのネーチャンがスコープを覗くと、メンバーの構成や配置がリズミカルに切り替わりながら、バンドで演奏しているカットが挟まれる構成。一方日テレ系報道番組(NEWS ZERO)のテーマソング「春夏秋冬」のPVは一転して、(墨絵+切り絵+クレイアニメ)÷3+手書き効果アニメと言う独特なイメージの作品。熱くならず、淡々と♪ねぇ 聞いていい? ぼくは今 うまくやれてますか?♪と心情を語った曲に寄り添う。

クレイ風の幻想的なアニメに、スガの影や手書きの効果が加えられる
クレイ風の幻想的なアニメに、スガの影や手書きの効果が加えられる

 

表題曲がつまらないわけでは全然ないけれど、カップリングの荒々しい曲が凄く気に入ったパターン。この曲、アルバムにも収められていないので、このシングル限定。さらに言えば、「春夏秋冬」もベストアルバム以外には収録されていないレア曲。

紫基調の装丁がちょっと内向的な曲の雰囲気とシンクロしている。
紫基調の装丁がちょっと内向的な曲の雰囲気とシンクロしている。

 

「モノ買い」で出逢えたお気に入りです。

 

1. フォノスコープ
2. 坂の途中 <'07 Spring Version>
3. SPEED <Demo Track>
4. Hop Step Dive

1. フォノスコープ-Video Clip-
2. 春夏秋冬-Video Clip-

 

「フォノスコープ」

更新: 2018/04/19
必聴度

カップリング曲が良いと言うようなことがあるから、ダウンロードよりブツ買い

購入前はヒット曲である表題曲目当てだったけれど、購入後は明らかに表題曲<<カップリング曲の比率で聴いている。これこそディスク購入の醍醐味。

  • 購入金額

    1,360円

  • 購入日

    2012年11月11日

  • 購入場所

    Amazon

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