所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。プロデュース主導作品。世の作品には、アーティストの表現を受け手側に届けるために制作側が楽曲やアレンジャー、プレイヤーを用意して、作品を創り上げるのを助けるような場合と、そのアーティストを「素材」として、新たな魅力を制作側が引き出すような場合とがあります。後者の方が製作側のウエイトが大きいワケですが、さらに一歩進めて製作チームが創った作品をよりよくするために最適なアーティストに作品の表現を託すこともあります。そんな形を取った作品集をご紹介します。

Fairlife。シンガーソングライターのハマショーこと浜田省吾と、そのアレンジャーとして永い付き合いである水谷公生、水谷のパートナーであり作家である春嵐とで構成される製作チーム。2018年現在までに3枚の作品をリリースしているが、基本、春嵐の詩に浜田が曲をつけ、水谷がアレンジして、それを水谷のスタジオで、ゲストヴォーカリストやプレイヤーを呼んで完成させるという手法を採っている。

その中でもこれは2枚目で、1作目より多くのヴォーカリストが呼ばれており、浜田が歌う曲が減ったというのがポイント（表現者⇒制作者への立場のシフト）。

浜田が本人では歌わないような曲も多く、また、各ヴォーカリストも自身の作品とは少し毛色が違う曲を表現しており、楽しい。

「鳥のように消えた日」は奥田民生とのコラボ。浜田のバックコーラスが付くと結構「ハマショー」カラーが強くなるなぁ、と感じた曲。浜田の曲に、浜田と長年組んでいるアレンジャーの水谷、それに浜田の声が載れば当然か、とも言えるが、それでもハマショー自身の曲よりもストリングスの使い方が厚く、自身では歌わない系統の曲かな。

プレイに浜田が一切関わっていない、ゴスペラーズの「うつぼかずら」などは、かなり浜田の曲としては異色のオリエンタル風？紺野光広のベースと知念輝行のギターを打ち込みのパーカッションが彩る異国情緒あふれる曲で、これはハマショーは歌わないな。

系統として重なるところがある森広隆

をフィーチャーした「rock'n'roll farmer」は森クンの良さも良く出ている。曲としてはいわゆるロックンロールの定番進行だけれど、乾いた音の中村優規のドラムスと、河口修二のカントリーなブルースハープが曲に表情を付けていて、森クンのギターとヴォーカルを良く支えてる。チョイ歪んだ音のブルースハープソロがゴキゲン！

元々は森クンが歌った曲がある、ということで興味があって手に入れたンだけれど、バラエティに富んでいながら、曲そのものを創った人たちが共通と言うことで、共通するニオイもあって「寄せ集め感」はなく、面白い作品。

いままで「制作主導」というと、アイドルのように自己表現＜素材としての燦めきという感じの作品が多いように思っていたけれど、表現者であるフィーチャリングヴォーカリストも歌の力量以上に、自身も「創作者」であるシンガーソングライターという人も多く、与えられた曲を自分の色も出しつつ上手く表現しようとしていてとても楽しめた。

コイヌマユキのイラストも良い味出している

これは結構アタリだったかな？

【収録曲】

1. 風のスカート feat. 曽我部恵一
2. 鳥のように消えた日 feat. 奥田民生
3. 淋時雨 feat. 岡野昭仁 from ポルノグラフィティ
4. I love you... feat. chie
5. 二番目に好きな人 feat. 我那覇美奈
6. うつぼかずら feat. ゴスペラーズ
7. woman feat. 古内東子
8. rock'n'roll farmer feat. 森広隆
9. 七面鳥のうた♪ feat. NUU
10. モンスター feat. 岡野昭仁 from ポルノグラフィティ
11. 詩人 feat. 我那覇美奈
12. ソウルメイト feat. 浜田省吾

「鳥のように消えた日」feat. 奥田民生