以前、中野サンプラザで開催されたヘッドフォン祭りで試聴して以来、密かに注目していたイヤフォンです。
Acoustic Researchといえば、最近のオーディオファンには馴染みがないブランドらしい(某所のクチコミ掲示板で「得体の知れないブランド」などと書かれていて唖然としたことも)のですが、古くからオーディオに親しんでいる方にはAR-3などスピーカーの名機で記憶に残るブランドではないでしょうか。
近年はAndroid採用DAP(AR-M2、AR-M20)などもリリースしていたものの、それほど大きなシェアを握るには至らず、地味な存在であることは否めません。
そんな彼らがハイコストパフォーマンスDAP、AR-M200のリリースと共に新たに投入したのが、AR-E10、AR-E100というイヤフォン2機種です。AR-E10が上位モデルであり、AR-M200の端子に合わせて3.5mmステレオ(アンバランス)、4.4mm5極バランス(ペンタコン)、Bluetoothという3種類のケーブルを同梱した、BA+ダイナミックのハイブリッドドライバー採用モデル、そして下位のAR-E100が3.5mmステレオケーブルとBluetoothケーブルを同梱した、ダイナミックドライバー採用モデルとなります。
実は試聴した際に、個人的に好みの音質だったのは下位のAR-E100の方でした。実売価格を尋ねると税別19,800円とのことだったのですが、正直に言えば2万円クラスのダイナミックドライバー搭載モデルとしては、今まで聴いた製品の中でもかなり好印象という部類だったのです。純粋に2万円クラスとして十分にお買い得である上に、Bluetoothケーブルが同梱されるのであればお買い得だと思い、その場で「これは多分買う」と宣言してきました。そして、先日数量限定セールで大幅に安くなっていたものを見つけ、即購入したのです。
こちらが注目していたBluetoothケーブルです。実はCIEM 2Pin対応のBluetoothケーブルという、現状では珍しい存在であったことも、購入動機の一つとなっています。私が普段使っているイヤフォンは、MMCXよりもCIEM 2pin対応品の方が多いのですが、一般的に売られているBluetoothケーブルの殆どはMMCXですからね。
イヤーピースは一般的なシリコンチップと、ウレタンフォームの2種類が、各サイズ同梱されていました。個人的にはシリコンチップ派ですので、この後の試聴もシリコンチップを装着した上で行います。
標準添付ケーブルで損をしている
それでは、まずは標準添付のケーブルで試聴してみましょう。試聴に使ったのは、常用しているDAP、Astell&Kern AK100IIです。
まず、エネルギーバランスは低域寄りで、厚みのあるベースラインと、程々の楽器の質感が印象的です。「Shape Of My Heart / Sting」では、ヴォーカルもそこそこ聴かせますし、アコースティックギターもまずまず、ただ低域方向の締まりと解像感がちょっと弱いかという印象です。2万円クラスとしては十分ですが、常用しているJH AUDIO Michelle辺りとは明らかに差があるというところでしょうか。
続いてBluetoothケーブルに付け替えて試聴してみます。Bluetoothについては、DAPをSONY WALKMAN NW-A16に変更します。
すると、有線接続時とは打って変わって細身の音となります。このBluetoothケーブルはaptXをサポートしていて、それなりに情報量は保たれているのですが、やはりヴォーカルの声質が細くなり、ギターの胴鳴りもかなり減ってしまいます。以前買ったSENNHEISER IE80系用の格安Bluetoothケーブルよりは好印象ではありますが。
さて、ここまで試聴してケーブルを戻そうとしたときに、普段Noble Savantに繋いでいるBispa製のケーブル<咲>が目にとまりました。
折角なのでリケーブルを試してみようと思い、このケーブルに付け替えたのですが…。
はっきり言ってしまうと、標準ケーブルの印象とは激変します。標準ケーブルでも2万円クラスとしてはまずまずという印象ではありましたが、ケーブルを替えただけで3万円クラスの主要製品と比較しても全く見劣りのない音質へと変化します。
低域の厚みはそれほど変わらないのですが、解像度がぐっと上がり沈み込みの深さも大きく増します。そして中域の密度が別物のように濃くなり、豊かな低域に引けを取らなくなります。さらにややハイ落ちの筈の<咲>であるにも関わらず、高域方向の解像度や透明感も大幅に向上して、弱点らしい弱点のない音になったのです。
さすがにSavantなどと比べれば余裕や貫禄は出ませんが、少なくともダイナミックドライバー搭載機として私が最も気に入っていた、audio-technica ATH-CKR10の音質は超えてしまっています。David Garrettのヴァイオリンの音色も、この価格帯のダイナミックドライバーモデルとしては自然な部類といえるでしょう。
5千円クラスのケーブルで、ここまで印象が激変したイヤフォンもなかなか珍しいといえます。それだけ標準添付のケーブルの質が低いということなのでしょうけれど、もう少し良いケーブルを付けておけばもっと評価されたのではないかと残念に思う部分もあります。
ケーブルの質以外は文句ない
リケーブルによってクラスを大幅に超えた音になってくれるなど、ポテンシャルは極めて高い製品です。ケーブル代に数千円払っても3万円未満で収まりますし、このクラス随一のお買い得モデルといっても過言ではないでしょう。
現状では、このAR-E100にBispa<咲>を組み合わせ、Savantには新たに仕入れた別のケーブルを組み合わせています。さらにAR-E100添付のBluetoothケーブルを利用して、Savantをワイヤレス化して使うということもあります。
Savantでもやはり音が随分薄くなってしまうのは確かなのですが、元々がかなり濃厚なSavantであるだけに、薄くなっても総合的にみればさほど悪くはないという水準で落ち着くのです。
個人的にはこのクラスとして最高レベルの評価をしているほど満足度は高い製品なのですが、ある意味Acoustic Researchらしく、それほど大きな反響はないようです。メディアへの露出があまり多くないことが影響しているのかも知れませんが、この製品の出来の良さはもっと広く知られて欲しいと思います。有名ブランドの同価格帯の製品を使って、満足できなかったという人にこそ使って欲しい逸品です。
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購入金額
14,800円
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購入日
2018年02月07日
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購入場所
フジヤAVIC
タコシーさん
2018/02/28
結構名前は知られていましたね
あの名前は聞かなくなったなとは思っていましたがヘッドホンで来ましたか...
日本支社はあるんですね。
jive9821さん
2018/03/01
私は子供の頃にAR-3の復刻モデルが売られているのを見ていましたので、懐かしいブランド名だと思っていたのですが、確かに最近はあまり耳にするブランドではありませんでしたね。
最近はヘッドフォン・イヤフォンで新製品を投入してきているので、ちょっと注目しておこうと思います。