所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。テクニカル系のアーティスト/グループの音楽を聴くときに、ひとは無意識に「難しさ」を期待してしまいます。それは自分には行きつけない領域を、応援するアスリートが極めた際の爽快感と似たところがあるかも知れません。そんな「わかりやすい難しさ」を期待して聴いて、当時は若干物足りなく感じたものの、齢を経て聴き直してみると滲み出る良さがわかるようになってきた盤がありますので、ご紹介します。
Larry Carlton、ギタリスト。今は昔の「フュージョンブーム」の時代にLee Ritenourと並んで日本での人気を二分していたギタリスト。Leeが時代の先端の音造りやギターシンセなどの新しいモノをドンドン取り入れて自分のモノにしていったのとは対照的に、Larryはあまり奇をてらわずフレーズそのもので語る感じのアーティスト。しかしテクニックは存分にあり、それをギターを歌わせることに使っていくようなタイプ。
日本ではメジャーデビューアルバムの“Larry Carlton(夜の彷徨)”に含まれる「Room 335」の人気が非常に高く、その名前の由来となったセミアコースティックギターGibson ES-335とともに当時の弾きまくりのプレイスタイルのイメージが強いが、実はLarryはプロデュース的センスが高く、テクニック見せ見せの曲はさほどに多くない。
そんな彼は一時期アコースティックに傾倒してエレキを置くが、その前の最後の作品が本作“Friends”。弾きまくり...という程目を三角にして弾いているのではないが、流れるようなフレージングと緩急・強弱の表情の付け方が素晴らしく、実に「味」がある。
「South Town」。無機質なハンドクラップに乗せて、Joe Sampleのローズと絡みながらさほどに歪んでいない音でつぶやくようにLarryがギターを奏でる。Abraham Laboriel (Sr.)と故Jeff Porcaroの盤石リズム隊が入ってくると美しく歪んだ音でLarryのギターが歌う歌う。途中のJoeのソロも素敵。
ちょっとTHE SQUAREっぽい(順番から言えばTHE SQUAREの方が「似て」いるのだが)スキャット&サックスフィーチャリングの曲が「Tequila」。表情豊かな神業的なスキャットを聴かせるのは今年惜しくも鬼籍に入ったAl Jarreau。Larryのギターに寄り添うテナーサックスは在りし日のMichael Brecker。いわゆる「リード的立ち位置」の声/楽器が3つもあるのに喧嘩せず調和しているのが素晴らしい。
Larryが先生ともいうべき人の前で魅せたのが「Blues For T.J.」。この曲はブルースの神様= B.B.Kingとの共演。曲としては実にオーソドックスな「ブルース」で、展開そのものはいつものようにテンション高めの音を割り振るのでなく王道だけれど、B.B.の引きとタメ、Larryの情熱の対比が面白い。そういえばこの曲のタイトルの「T.J.」とはLarryの息子で今は立派なベーシストに成長したTravis J. Carltonのことだと聞いたことがある。...ということは「息子へのブルース」ということなのかな。いつも以上に丁寧なLarryのプレイが光る。
どの曲もアツいハートは感じるものの、激したプレイはなく、「Room 335」のようにキレっキレのプレイを期待した自分にとっては当時はやや物足りなかったように記憶する。
ただ時を経て聴き直すと、コレいいねぇ~。(シンセも入っているが)ローズを中心とした優しいキーボードと、AbeとJeffの揺るぎなく、でも遊び心もあるリズムの上で、軽やかに歌い、駆けるLarryのギター。弾ける精いっぱいまでは弾いていない、その余裕は心の余裕、という感じのCOOLさが今なら感じられる。
そんな齢になってきたのかな...とw
【収録曲】
1. Breaking Ground
2. South Town
3. Tequila
4. Blues For T.J.
5. Song In The 5th Grade
6. Crusin'
7. L.A., N.Y.
8. Friends
「Tequila」
見た目?の派手さはないが、かみしめるといい曲ばかり
わかりやすいテクニックの魅せ場より、歌うギターフレーズの聴かせどころを大切にするLarryらしい。
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購入金額
2,500円
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購入日
1991年頃
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購入場所
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