小難しいタイトルの本なのですが。
当然、私の目的は上記リンクのようなゲームや小説などを楽しむ為の下準備としての知識獲得ですw
上記リンク先の書籍と同様の理由ですね。
まあ、ゲームを抜きにしても、歴史ものの小説や英雄譚、興亡史などを読むのは好きなので、こういうタイプの本でもワクワクします。
これは、多分、病気ですw
それ以外にも、創作神話体系のリアリティの素としての資料と考えるのも好きなんです。
偉大なるトールキンの作った世界も、また、本物の歴史が積み重ねた足跡が影響を与えている訳ですので。
さて、この書籍は、横浜市の市民講座として行われた同名の講座を纏めたものになるそうです。
中々面白そうな講座でうらやま。
というのは、置いておいて。
小規模な講座ながらも、興味深い都市の選択となってます。
取り上げられている順番に
・ケルン(ドイツ)
・パリ(フランス)
・サンチャゴ・デ・コンポステーラ(スペイン)
・フィレンツェ(イタリア)
・チューリヒ(スイス)
・フランクフルト・アム・マイン(ドイツ)
・ウィーン(オーストリア)
・ヨーク(イギリス)
・杭州(中国)
・江戸(日本)
となっています。
中世の都市形成を語るという事で、今日の大都市とは少し違うものが取り上げられていますね。
杭州、江戸を除く、ヨーロッパの都市は、ローマ時代の都市の影響を色濃く受けているものが多いようですね。
パリやヨークなどは、カエサル遠征のがリア戦記に名前が載る程の古さで、しかも、パリは街区の中心(セーヌ川の中州が古都ルテチア)は動いていないとの事。
実際に、以下の地図をみてもそうですし、現在のパリも、シテ島に裁判所などがあって、行政の中心でもありますね。
とはいえ、古代から続いている訳でもない、というのが民族が流入し、文化の破壊、創造、混血の進んだヨーロッパらしい所でしょうか。
サンチャゴは、日本人には馴染みのない都市かもしれません。
というか、同じ名前を持つチリの都市の方が浮かぶかも。
しかし、キリストの12使徒の一人、聖ヤコブの遺骸が見つかったという空前の聖地とされており、ヨーロッパ中の巡礼者を集めた都市。
その後のイスラム侵入を押し返した国土回復運動(レコンキスタ)の精神的な支えにもなったという有名な場所のようです。
本書の一番目に解説されているケルンも、また、宗教的な意義をもって生まれた都市を祖にもっています。
しかしながら、ゲルマン人、ノルマン人の侵寇によって、破壊され滅亡の危機に瀕した後に、新たに建設された都市の一部となって発展していきます。
最後まで抵抗、或いは、破壊しがたい力を持っていた宗教者の権威が、「商人という財力を持つものの権威や自衛の力を持たない者たち」の庇護に用いられ、その過程で、徴税などにより、更に大きな力を手に入れていったというのが、ケルンの発展過程でもあるようです。
他にも、地方領主であったり、力をもった商人自身だったりもするようですけれども。
その為、庇護者である領主一人に対して、一つの都市が成立し、それ以外の権力との境界が都市の辺縁であるという見方になるようです。
そこには、「市街」は「市民(貴族ではない存在)」による自治ないしは、それに準ずる法が施行されており、その適用範囲の明示としての市壁が建設されたという説があります。
その成り立ちから、防衛上の機能を有しているものの、必ずしも、それに特化していない壁などをもつ都市がある事の説明にもなっていますね。
徴税に関する権利の変遷や、それを扱う特権階級が市民から発生して法を作っているというのもローマ的な政治の末裔なのかもしれません。
ヨーロッパ的な中世都市では、貴族邸宅と王の居城の同居、そして、市民の住む街区、の組み合わさったものの方が珍しいかもしれません。
日本人がファンタジーの中で想像する都市のそれは、近世辺りの姿でしょうか。
目から鱗な感じです。
うん、興味深いですねぇ。
また、江戸という都市が建設されたのは、戦国時代末期、つまり、近世に入る頃です。
故にヨーロッパの都市と異なり、配下の貴族階級も都市内に邸宅を構える形が作られているのですね。
江戸の章では、特に町の発展などを解説する為に、幕府の行政管轄、特に町奉行以下の行政への取り組みが載っています。
そこで区分された管轄の中で、時代劇などで良く出てくる役職などは、
・寺社奉行は将軍直轄(旗本以上が就く)なので、老中、若年寄などと列を同じくする(職位などはその限りではないですが)
・町奉行と勘定奉行は老中配下の同僚なので、将軍への御目見えなどは出来ない。その為、三奉行の中で寺社奉行の格が上とされる。
・火付盗賊改は、老中と同列での将軍直轄食である若年寄の配下なので、老中配下の奉行とは少し距離がある
という感じ。
旗本と御家人は若年寄及び目付の管轄、大名家は老中と大目付の管轄という事で、分割されているのも興味深いかな。
もう少し興味深いのは、町人出身の官僚とも言える「町年寄」(三家の世襲職だったようです)や、その下の「名主」の職責、職務範囲の記載でしょうか。
戸籍の把握、民事訴訟事、住民の素行に関する監督などの最終的な処理は、基本的に名主或いは、その上の町年寄が行い、手に余るものが奉行所に持ち込まれているようです。
つまるところ、時代劇のようにちょっとした揉め事で、簡単にはお白州の裁きは行われない模様。
まあ、数十万人にも上る江戸の町民の揉め事を奉行所で全部裁いていたら、キリがないですからねぇ。
名主の下に、長屋などを管理する家主が居て、家主は現代の大家とは違って、住まわせている店子たちの監督責任も負っていたという事ですので、寮の寮監とも言えるような不思議な関係なのですよね。
職制などについての記述は、まあ、ウィキペディアなどでも調べられるのですが、町としての江戸の発展や区割りの変遷に絡められて語られるのは、また、別の趣があって面白いです。
それぞれの都市について、特段に深くまでの言及がある訳では無いのですが、要点を押さえ、街区が形作られた理由などが解説されていて、街並みの意味などを知る事が出来る面白さがあります。
都市の置かれた時勢が、中世なのか、近世なのか、はたまた、古代なのか、そういう事を考えながら妄想都市を作る参考書になったりするのが、良いですね!w
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購入金額
0円
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購入日
2017年07月11日
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購入場所
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