スガシカオ。この独特の世界観を持つアーティストは、自分のアーティストとしての「刈取り時期」にメジャーの契約を切り、音楽事務所もやめて一度等身大の自分に戻って自分の音楽のルーツを見つめ直す選択をする。
自分でライヴハウスの予約をして、手弁当で全国を回り、ネット(HPやメルマガ)を使って販促してと相当な苦労をしたようだが(ストレスで突発性難聴を患って一時右耳がほとんど聞こえなくなったというほど)、いろいろなものを掴んで再びメジャーに戻る決意をする。
そんな彼が残したインディーズ時代最後の作品(いわゆるデビュー前のインディーズ時代にも作品を残しているので↓、厳密には「第二」インディーズ時代か)。
その「最後の作品」は“ACOUSTIC SOUL”と名付けられたあまり加飾されていない作品。ただ「ACOUSTIC」と言っても完全アンプラグドなワケではなく、1曲目と3曲目はバンド仕立てで、エレキギターもキーボードも入ってる。でもそれが前に出たりする事はなくて、音造りも昔ながらのオーバードライヴ中心のギターと「シンセサイザー系音色」ではなくてエレピやオルガンといった「古典的」音色。4、5曲目はトラックメイクもスガ一人でやっていて、デモテープかバックなしのお一人様ライヴ「Hitori Sugar」のようなシンプルな造り。
そんな「飾らない音」はスガの近くに行ける感じの作品となっている。
ブラスも入った「情熱と人生の間」はドラムスの音が実に生っぽい。FUYUにしてはチューニング低めで粗い感じのスネアの音が気持ちよい。ブラスのラインはキーボードによるものではなく生ブラス隊。これにベース坂本竜太、ギター田中義人というライヴでもおなじみの気心知れたメンツでプレイされるこの曲は実に楽しそう。歌詞自体は♪情熱と人と生の間で/情熱と人と生からまって/揺れ動いています/あの時/もし血迷って/今を選ばなかったら/別の未来で今/ぼくは何思うんだろ?♪とちょっと昏いンだけれど。
「きみが好きです」は打ち込みのリズムマシンに合わせてスチールギター風の音でバックがとられる弾き語り風ブルース。スガはちょっといがらっぽいような声で訥々と歌うのがイイカンジだ。♪おさえきれずにぼくは/好きだと言ってしまった/君が好きです/君が好きです/君が好きでした/知らなきゃよかった/君の気持ち/知らなきゃよかった/本当の気持ち/土曜日なんか/死ね/土曜のメールが/ぼくと君の最後の会話♪この「君が好きです」と言う時の声と「死ね」という言葉を絞り出すときの声の差がイイナ。これはメジャーでは出来ないかも知れない。
「ハダカハダカ」はスガのお得意の一人ブルースファンク。エレギとアコギとリズムマシン中心でシンプルな造り(後にベースなども加わる)。エレギの音の暴れ方がデモテープっぽい。終わりがまだ展開部という感じのところでフェードアウトしていくのが面白いな。
スガはこの作品のリリース時にはメジャーへの復帰が決まっていて(復帰シングルリリース済み)、それでいてその後さらにインディーズでシングル出したりと、ちょうど「狭間」にいたため垣根を越えた活動が出来た時期。それまで「インディーズなくては出来ないことをやろう」と構えていた感じがあったのが、いい具合に抜けている。このインディーズ最後の作品は、「メジャーへ完全復帰したらやりづらそうなこと」をとりあえずやっとこか、というような風情の力の抜け具合がイイカンジ。限定盤故既に廃盤だけれど(iTunes配信はアリ)、一聴の価値ありの、インディーズとメジャーの狭間で生まれた面白い作品です。
【収録曲】
1. 情熱と人生の間
2. 航空灯
3. 見る前に跳べ.com
4. きみが好きです
5. ハダカハダカ
iTunes“ACOUSTIC SOUL - EP”該当ページ
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購入金額
3,980円
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購入日
2017年04月05日
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購入場所
ヤフオク!
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