先日、私にとってのリファレンス的存在となるイヤフォンとして、JH Audio Michelleを購入したことはレビューにて記載しています。
実はこのMichelleを購入する少し前に、未開封品ながら現品処分となっていたEtymotic Reaserch ER-4PTを購入していました。ただ、ちょうどONKYO GRANBEAT DP-CMX1のレビュー執筆中であり、試聴しようと思っていた組み合わせがあまりにも多く残っていたため、とりあえずER-4PTは開封しないで置いておき、Michelleを先に試聴用として使うことにしたのです。
よってDP-CMX1のレビューが完成した後でとりあえず開封して使い始め、数日間鳴らしこみを行ってからER-4PTのレビューに取りかかったというわけです。
現品処分とはいえ、単にラスト1個の在庫を処分していたものですので、ごく普通の新品です。買って帰ってきて初めて生産完了品になっていたということを知りました…。
Etymotic Researchの定番品といえるのは、厳密にはこの製品のシリーズモデルとなるER-4Sです。ER-4Sは2005年頃には発売されていて、先日生産完了となるまで10年以上にわたってシングルBA搭載カナル型イヤフォンの定番モデルとして支持を集め続けてきました。
一方でこのER-4PTはER-4Sをベースに低インピーダンス化を図り、アンプへの要求が厳しかったER-4Sとは異なりDAPなどでも鳴らしやすいものとして設計されました。搭載されるBAユニットは、どちらもフルレンジのKnowles製ED29689を1基だけというものだそうです。
私の手持ちではELECOM EHP-BA100がやはりKnowles製のフルレンジBAユニットを搭載しています。別シリーズのユニットのようですが…。
EHP-BA100は真鍮製ハウジングですが、ER-4PTは樹脂製で一見するとそれほど高価な造りには見えません。それでも10年以上にわたって高く評価され続けるだけの音質ということなのでしょう。
フルレンジBAの良さを上手く引き出した
それでは、早速試聴してみましょう。今回はDAPでの使用を前提に設計されているER-4PTということで、DAPでの試聴としてみました。
まず第一印象としては、いかにもBAらしい広い音場と、ヴォーカル帯域がやや持ち上がった聴き取りやすいバランスという辺りでしょうか。
標準装着のトリプルフランジイヤーピースで使っていますが、最初は随分低音が薄いことが気になっていました。しかし、これは充分に耳の奥まで装着出来ていないことが原因であり、トリプルフランジの密着度を活かしてきちんと押し込むと低域の厚みや密度感が一気に出てくるようになります。この状態ではやや中高域辺りにピークがあるものの、他は概ねフラットというバランスに感じられるようになり、前述の「ヴォーカル帯域が少し持ち上がった」という印象に繋がることになります。
同じシングルBAのEHP-BA100と比べるとソースを選ばない万能ぶりが印象的です。EHP-BA100はDavid Garrettのヴァイオリンは購入価格からは想像出来ないほど見事な音色で鳴ってくれるのですが、ハイスピードなロック系楽曲はまるで駄目と、個性の強さが目立ちます。しかしER-4PTは逆に突出して得意なジャンルが無い代わりに、大体の楽曲を緻密な音で聴かせてくれるという印象なのです。
今ちょうど「Dangerous / David Garrett」を聴いていますが、この曲は率直に言ってEHP-BA100ほどの良さは感じられません。しかし、「I Can't Stop Thinking About You / Sting」などはEHP-BA100よりはロックらしさが出ています。
さすがに3ウェイBAのJH Audio Michelleと比べると低域の力感や高域方向の伸びは間違いなく劣っています。しかしフルレンジならではの音色の繋がりの良さと、BAらしく緻密な音は間違いなくER-4PTの長所でしょう。もっとも、どちらかというとモニター的な傾向のある製品であり、音楽に没入させるというよりは、良くも悪くも音楽の情報を余さず拾い上げるという音作りです。
強いていえば、前述のStingなどでは、もう少しドラム系の音色にキレがあればよりロック感が出るのですが、少しソフトタッチに感じる部分があり、この辺りはいかにも典型的なBAの音です。細かい音が出ている割にスピード感が感じられないのは、この辺りのキレの甘さが原因でしょう。勿論、EHP-BA100よりはそれでもずっと良いのですが…。
この製品の良さはヴォーカルや弦楽器など、楽曲の中心となる音色に不自然さが無いことでしょう。何曲か聴いていて、他の多くの製品では特定の楽曲でヴォーカルが妙に鼻声だったりハスキーだったりという部分が出るのですが、ER-4PTではそれが無く、どの曲のヴォーカルもまさにその人の声できこえるのです。これは簡単そうで非常に難しいことであり、ここに定番モデルとしての実力の高さが出ているのでしょう。
正直言って、Michelleを先に聴いていなければ、この製品に対する満足度は更に高かったかも知れません。今聴いていても「良いんだけど、Michelleはもっとここが良かったな」と感じている部分が少なからずありますので。購入価格が1/3以下であることを考えれば、見事としか言い様がないのですが…。
ちなみにXDP-100RとAK100IIで使った限りでは、強調感がはっきりとあるXDP-100Rの方が聴いていて楽しいという印象です。AK100IIとの組み合わせでは、音のキレのなさが目立ち、楽曲によってはつまらなさを感じることがありました。
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購入金額
14,255円
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購入日
2017年03月20日
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購入場所
ヨドバシカメラ
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