レビューメディア「ジグソー」

ついに登場した1回路品

新日本無線から鳴り物入りで発売された、ハイエンドオーディオ用オペアンプ「MUSESシリーズ」の新製品です。今回ようやく入手できました。

 

MUSES03は同シリーズで初の1回路品です。1回路品しかない品種ではOPA627やAD797、THS4631、LT1115、廃品種ですがLME49990といった有名どころがありますが、ついにMUSESシリーズにも1回路品が登場とあって2016年10月にアナウンス(販売開始前のサンプル配布のプレスリリース)された時から期待していました。データシートではプリアンプやI/V変換、ヘッドホンアンプに推奨されています。

更新: 2017/07/29
音質

バランスの取れた高音質

24V(±12V)駆動のcMoy回路でテストしましたが、

 

OPA627よりもさらに分離が良いように思えます。スペクトラム的に見ても、OPA627だと低域が強調されるのに対し、MUSES03はそうではありません。フラットな印象です。以前ユニバーサル基板で自作したLH0032等価回路やTHS4631(いずれもZobelフィルタ経由)と比べても、低域が控えめに聞こえます。また、MUSES01にあった甘めの色付け(共感覚的な表現ですみません……)は鳴りを潜めているようです。

音域的な特徴が似ているLME49720と聴き比べてみると、スペクトラム的には似ているようですが、見通しが大きく異なります。

ここまで透明感があると、もはや音源側でごまかしが効かなくなるレベルです。

 

ただ、Zobelフィルタを経由するとかなり低域寄りになり、音量も足りなくなります。

 

過渡応答(A=1 Vin=200mVp-p f=100kHz Rfb=0 位相補償なし Rl=15Ω ガラエポユニバーサル基板)
過渡応答(A=1 Vin=200mVp-p f=100kHz Rfb=0 位相補償なし Rl=15Ω ガラエポユニバーサル基板)

 

MUSESシリーズのフラグシップモデル(2桁番)は、コスト度外視で音質を追求した石です。

音質に関わる点でユニークな部分が幾つかアナウンスされています。ICと呼ばれるものは普通、1種類のシリコンダイをパッケージに封入したものです。しかしMUSES03は入力段と出力段で別々のダイが使われています。段間の寄生回路を排除することで信号の干渉を低減したもののようです。

リードフレームには、MUSES01や02と同様無酸素銅が使用されています。

更新: 2017/07/29
使い勝手

とにかく高級オーディオ向けの仕様

パッケージは使いやすく、ソケット実装も可能なDIPです。但し、この石は1回路用です。ステレオで使うには同じものが2つ必要です。

  • 一般的な2回路品(NJM4580、NE5532、OPA2134など)が差さっていたソケットには、そのままでは使えません。変換基板が必要です(私の環境でも変換基板を使っています)。
  • 一部のハイエンドオーディオ機器では、クロストーク(漏話。ここでは左右の信号が混ざる現象を指す)を極力少なくする目的で左右のチャンネル用の回路を別々に実装していることがあります。この場合はソケットに1回路品が実装されているはずなのでそのまま挿し替えて使うことができます。

 

電源は±3.5~±18Vで動作します(絶対最大定格は±19Vです)。電圧的にポータブルオーディオには向かないといえますが、そもそもこれは1回路品ですし、音質を追求するなら電源ボックスから自作して据え置きのアンプとして設計するでしょうから電圧要件は大丈夫なように作ると思います。

 

出力電流は「絶対最大定格で」250mAとなっています。一般的なオペアンプのデータシートには、出力電流の絶対最大定格は書かれていません(書くなら許容損失です)。負荷16Ωで4V出ますが、これで絶対最大定格の250mAとなります。この時プラス側は5V出るようなグラフが書かれていますが絶対最大定格を超えていますのでやめましょう。ただ、ヘッドホンアンプに使う分にはそれよりずっと少ない電流で済むはずです。

 

なお、スピーカーを鳴らす場合は別途バッファICを使うか、ディスクリートのパワートランジスタでダイアモンドバッファを組むことになりますが(相応の電源も必要です)、この場合音質が変わってきます。

更新: 2017/07/30
コストパフォーマンス

値段に見合った性能

定価では1個4500円で、価格相応といったところです。私の場合は秋月電子の通販で買ったので2個で5800円(消費税・送料・代引き手数料込み)でしたが、価格が高くなってでも音質を追求するハイエンドオーディオに特化した石ですので多少高くなる分は理解できます。同じ価格帯のOPA627(この価格帯の1回路品だと他はOPA637くらいしか思いつきませんが)と比べても、半導体技術の進歩もあるのでしょう、音質が良くなっています。

更新: 2017/07/28
発熱

発熱は普通

24V駆動のcMoy回路では、室温29.1℃に対してパッケージ表面は36.9℃程度まで上昇するようです。

  • 購入金額

    2,500円

  • 購入日

    2017年07月21日

  • 購入場所

    秋月電子通商(通信販売・埼玉県)

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