レビューメディア「ジグソー」

Panasonic自慢のMLF振動板を採用した廉価モデル

先日Amazonを眺めていて、偶然異様に安いヘッドフォンが売られているのを見つけました。

 

Panasonicの主力密閉型ヘッドフォン、RP-HDシリーズの中間機種であるRP-HD7が以前の価格の1/3以下まで下がっていたのです。上位のRP-HD10、下位のRP-HD5はいずれもじっくりと聴いたことがあり、まずRP-HD5は全く好みに合わなかったので即購入候補から除外、RP-HD10はなかなかバランス的に整っていて面白いものの妙に二次元的な音で何かしっくりとこないという結果となっていました。

 

実は昨年末のポタフェスでRP-HD10については開発者の方と直接意見をやりとりしたのですが、この製品ではあくまでユニットの直接音を正確に耳に届けることに主眼を置いているということで、ハウジングの響きなどを活かすような音作りは意図的に排除しているらしいということがわかり、あの二次元的な音にも納得いったというところです。ありもしない音場や響きを創り出してはいけないという発想があるようですが…。

 

 

一方、今回取り上げるRP-HD7はこのシリーズで唯一じっくり聴いたことが無い製品でした。そもそもこの製品がターゲットとしているのは女性ユーザーであり、外装色も白とピンクのみを用意するという思い切った製品構成となっているのです。ハウジングの横軸方向の調整機構が無いことも、女性向けに手軽に使えるものという発想から、意図的に排除したとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見た目は曲線を活かして優しさを感じさせるデザインとなっています。ケーブルは着脱式で、本体側は3.5mmアンバランスステレオミニプラグです。

 

 

 

 

 

なかなか面白いのが、イヤーパッドは2種類添付されていて、装着感をこれで選択出来るようにしているという点でしょうか。なお、標準添付のケーブルはワンボタン型のリモコンが用意されていて、iOS、Androidデバイスの再生・停止が出来るようになっているらしい(未確認)です。

 

更新: 2017/02/20
音質

低域を欲張らなかったことは好印象

それでは早速試聴です。ノイズキャンセリング対応機でも無ければ外出時に持ち歩くことは無いでしょうから、今回は常用しているFOSTEX HP-A8でのみ試聴します。

 

 

 

 

 

試聴ソースは主にLPから起こした自作ハイレゾ音源(24bit/88.2KHz WAV)と、192Kbpsのmp3ファイルを使います。

 

 

まず、意外と好印象だったソースを挙げると、「Chicago 18 / Chicago」辺りが挙げられます。元々さほど高音質なアルバムではなく、どちらかというとナローレンジ感があるためか、RP-HD7の意外な優秀さであるヴォーカルや金管楽器の質感が活きてくるのです。同じシカゴのアルバムでも「Chicago 36 "Now"」のように録音の品質がそこそこ高いものとなってくると、ハイハットの金属感が出ないことや響きのなさが気になってくる部分があります。

 

 

 

 

 

 

「Viva la Vida / David Garrett」では、冒頭部分のヴァイオリンで一瞬「おっ」と思うような質の高さがあるのですが、2本目のヴァイオリンが重なったところで妙に安っぽい音になってしまう感じがします。とはいえ、1曲通して聴いてみれば価格の割には大健闘という水準でしょうか。

 

 

 

 

 

 

ヴォーカルとアコースティック系楽器でまとめられた

 

 

 

 

 

などは購入価格からすればかなり高水準で聴かせてくれます。

 

 

ただ、どのソースを聴いてもどうしても気になるのが、ハウジングの強度不足なのかさほど音量を上げなくても中域にプラスチック臭さを感じさせる籠りが発生することと、音量を上げるとその分全体的にヌケが悪くなるということでしょうか。この傾向は特にライブ音源で顕著で、ライブ盤は大体どれを聴いてもあまり楽しめません。

 

上位のRP-HD10と比べると低域の厚みは抑え気味で、それが結果的に肩の力が抜けたようなリラックスして聴ける音に繋がっているように思えます。RP-HD10の方が低域の厚みは明らかに上ですが、長時間聴いていて苦にならないのはむしろRP-HD7の音かも知れません。RP-HD7も決して低音が出ていないという訳では無く、ごく自然には出ていますので低音マニアの方で無ければそれほど不満は出ない程度ではないかと思いますので。また、RP-HD10と比べれば「異様に二次元的な音」ではなく程々に広がりが感じられるのは好印象です。

 

 

ただ、前述の籠りと大音量時の弱さから判断すると、以前取り上げたEbony 70がドライバーの質は決して高くない割に黒檀ハウジングの効果かそこそこの音を出していたのとは正反対で、かなり力の入ったドライバーが、ハウジングという足枷でその実力を発揮し切れていないという気がします。

 

 

 

更新: 2017/02/20
総評

5千円以下なら文句はつけられない

この製品は前述の通りケーブル着脱式であり、端子形状も汎用であるため他のケーブルを使うことも出来ます。

 

手持ちのケーブルを見回したところSONY MDR-1ADACのケーブルが同じ形状でしたので、とりあえずこれと差し替えてみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると低域方向の量感と力感が明らかに向上し、高域方向もいくらかクリアになります。ただ、総じて質は上がるのですが、より高域方向の質感があまり高くないということも判ってしまいます。全体的には向上しますのでケーブルを交換する意味は充分にありますが。

 

この製品のドライバーはPanasonicが自慢する多層構造の振動板(MLF振動板)を採用していて、これは上位のRP-HD10や、より上位のTechnics EAH-T700と共通しています。下位のRP-HD5ではこの振動板は採用していませんので、製品コンセプトとは裏腹に中身はむしろ充実した製品といえるでしょう。

 

RP-HD10と比べればあまりHi-Fi方向の追求をしていないのですが、結果的に出てくる音はRP-HD10よりもむしろしっくりくるというのは面白いところで、それだけにハウジングにもう少し力が入っていれば名作といえるものになっていたのではないかという惜しさを感じます。

  • 購入金額

    4,027円

  • 購入日

    2017年02月18日

  • 購入場所

    Amazon

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