レビューメディア「ジグソー」

盛り上がりはすごい、選曲的にはベスト、メンバー的には当時可能な限りの...?

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストが売れ続ける、というのは難しいものです。そのアーティストの才能の他にも、時代の求める音楽かどうかや制作側の手法などの問題もあります。そしてそのアーティストがグループだった場合、メンバーの問題も...あるジャンルのブームが去った後、そのフィールドでのスーパースターが集ったグループの熱狂のライヴを収めた作品をご紹介します。

ASIA。「スーパープログレバンド」とも言われるプログレッシヴロックのスーパースターが集ったグループ。YESのGeoffrey DownesとSteve Howe、King CrimsonやU.Kを渡り歩いたJohn Wetton、EL&PのCarl Palmerというプログレヒーロー4人で結成されたバンドで、わかりやすいプログレというコンセプトで創られた俗称?「3分プログレ」を収めたデビュー作“ASIA(邦題:詠時感〜時へのロマン)”

で華々しくデビューする。

その後全米No.1ヒット「Don't Cry」を含む2nd“ALPHA”、

キッャチーな「Go」で幕を開ける“ASTRA”

と続くがここで彼等は一旦活動を停止する。...と言うのも華々しくデビューしてその後人気が下降した寄せ集めバンドでは良くあることでお家騒動が....まず、2ndが1stよりかなり売り上げが落ち込んだことで、Johnがアル中になりバンドを解雇された。King Crimsonに在籍したGreg Lakeを迎えてツアーはしのぐが、あくまでピンチヒッター。その後Johnが復帰するものの、今度は2nd以降自分の曲が採用されなくなったSteveが離脱。手を付けていた3rdはSteveの後釜にMandy Meyerを入れて何とか創り上げるが、その売り上げも思わしくなく、ここでバンドは空中分解。

その後制作側の主導で再結成があり、Steve以外のオリジナルメンバーが集結、新曲には曲ごとに違うゲストギタリストを加えた形で、既出の曲との折衷アルバム=半ベスト半オリジナルの“Then & Now”

をリリース。そのアルバムツアーではギターにPat Thrallを迎えて全世界を回った。このツアーは当時の「音楽後進国」、日本やソ連(今のロシア)では熱狂を持って迎えられたが、肝心のアメリカではツアーさえ組めず、初期ASIAはここに完全に終焉を迎える。

本作はソ連のモスクワでのコンサートの模様を収めたライヴアルバム。数々のASIAの名曲に、一部メンバーの出身母体となったバンドの曲も含めた作品で、ライヴならではの熱さと荒さ(時に粗さ)が感じられる作品。

熱狂する会場の歓声をバックに1stのドラマチックチューン「Time Again」でライヴは幕を開ける。このヘヴィシャッフルの曲は、Bメロのコーラスのつけ形とサビの長調か短調かワカラン不思議なメロ以外はプログレ色が薄いのだが、特にPatのギンギンにロックな熱いギターソロがプログレ色を弱めている。いやそれはそれで新鮮で楽しいんだけれどw

5分を超えるなが~~~いGeoffreyのキーボードソロでは、途中に自身の参加していたThe Bugglesの名曲、「Video Killed The Radio Star(ラジオ・スターの悲劇)」の一節がはさまれるサービス。これは後半にKing Crimsonの「Starless」と「Book of Saturday」が演奏されるのと同じ。

ASIAはプログレバンドらしくアルバムでは多重録音の構築された音という印象。このテのバンドはライヴ盤でも再現度・完成度を上げるために録音を加工することが多いのだけれど、このライヴは珍しくほとんどアフタープロダクション(追加録音)を感じない。そのため一部の曲ではチョット寂しいな、と感じてしまうが、「The Smile Has Left Your Eyes (Parts I & II)」はもともとがロッカバラードでシンプルな構成なので違和感がなく、会場の盛り上がりが良いスパイスになっている。ライヴなので若干テンポ速すぎの感じがするがドラマチック。

最後に「One more?」と聴衆に問いかけて始まる1stの名曲「Heat Of The Moment」と2ndからのシングル曲「Open Your Eyes」でライヴは幕を閉じる(ラストの「Kari-Anne」はライヴのオーディエンスノイズやMCをかぶせるように入れて、ライヴの続きのような演出にしてあるがスタジオ録音の新録曲)。

当時音楽ムーブメントの外縁部だった国で行われたこのライヴは、売れた(売れている、とは言わない)バンドがやっと自分たちの元に来てくれた、という熱い声援が支配していて、ある程度「溜まった」代表曲ばかりを演るので曲もいい。オリジナルメンバーではないけれど、クラシカルなSteveの曲がほぼない状況なら許容範囲(「Time Again」のみがSteveも含めた4人の共作)。
なんかみんなかなり寒そう...w
なんかみんなかなり寒そう...w
制作上の都合、もしくは方向性かは判らないけれど、オリジナルアルバムでは壁のように構築された音が特徴的な彼等にしては「生」に近い演奏が聴ける作品。その「人間っぽさ」はASIA第1期の終章としては意外に悪くないと思わせる作品です。

【収録曲】(オリジナル収録/*:1st、**:2nd、***:3rd)<>内邦題
1. Time Again *
2. Sole Survivor <孤独のサヴァイヴァー> *
3. Don't Cry **
4. Keyboard Solo (Inc Video Killed The Radio Star <ラジオ・スターの悲劇>)
5. Only Time Will Tell <時へのロマン> *
6. Rock And Roll Dream ***
7. Starless
8. Book Of Saturday
9. The Smile Has Left Your Eyes <嘘りの微笑み> (Parts I & II) **
10. The Heat Goes On **
11. Go ***
12. Heat Of The Moment *
13. Open Your Eyes <悲しみの瞳> **
14. Kari-Anne(新録)

「The Smile Has Left Your Eyes (Parts I & II)」

  • 購入金額

    2,447円

  • 購入日

    1992年頃

  • 購入場所

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