山下達郎。音の「職人」を自認するシンガーソングライター。芸術家と呼ばれるより職人と呼ばれたいという職人気質の人だが、それだけに売れるまでには時間がかかったし、それまでに自分のやりたいことを軸に置きながら見せる面をイロイロと変えて、世に受け入れられるか否かを探った。
通にはこれ以前も注目され始めていた彼だが、一般的な知名度はカセットテープのCF曲となった「RIDE ON TIME」。これは5作目の同名アルバム“RIDE ON TIME”
に収められたが、その前年にそれまでの経験値を紡いだ作品があった。それが4thオリジナルアルバムである本作“MOONGLOW”。
「夜の翼 (NIGHTWING)」。これを最初の曲、というのがヤマタツ。ドゥーワップ系の一人多重録音のコーラス。アルバムの幕開けを飾る1分少々の小曲なのだが、フィンガースナップ以外は完全に山下の声だけで♪夜を沈め/心浮かべる/そんな想い/君にはあるかい?♪と問いかけられる。
「FUNKY FLUSHIN’」は凝り性の山下としては録音状態が気に入らず後に再録されるが、このオリジナルのスラップ...というより「チョッパーベース」の日本の始祖、田中章弘のプレイも捨てがたい。構成的には椎名和夫のギターソロの後一度テーマに戻って..という所までは普通なのだが、そのあと斉藤ノブのパーカッションソロを挟んでラストは吉田美奈子のコーラス+リズム隊に山下のフェイクが被さったのがか~な~り長く繰り返してそのままフェードアウト...とテーマに戻らず終わるというのが面白い。
イントロの♪Aoooooooo~♪という叫びやヴォイスでのハイハットオープン風効果音?というラテンな感じから一転、曲に入ると部分的にハネる8ビートがかなりポップでキャッチ―、メロディメーカー山下達郎の面目躍如という感じの「SUNSHINE -愛の金色-」。ベンドを活かすシンセソロの音色が秀逸!ラストコーラス前の♪やさしく♪を3回繰り返すところだけがちょっと時代を感じるアレンジかな。
全体通して聴くと、山下の凝り性の部分とキャッチーでポップな部分が、混じり合いはせずに混沌と同居している感じ。前作“GO AHEAD!”
で評価は受けたものの、まだクロウト筋の評価がメインで「一般的に広く」というワケではなかったのだが、この作品でレコ大のベスト・アルバム賞を受け、一般的にも浸透していく。このあと山下はナイアガラ・レーベル系の活動と自身の大ヒットアルバム“RIDE ON TIME”で完全ブレイクするがその前夜。“RIDE ON TIME”の楽曲ほどにはこなれていない、でも聴き流せない曲ばかりが詰まった、時に乗る直前の作品です。
【収録曲】
1. 夜の翼 (NIGHTWING)
2. 永遠のFULL MOON
3. RAINY WALK
4. STORM
5. FUNKY FLUSHIN’
6. HOT SHOT
7. TOUCH ME LIGHTLY
8. SUNSHINE -愛の金色-
9. YELLOW CAB
10. 愛を描いて -Let’s Kiss The Sun-
「SUNSHINE -愛の金色-」
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購入金額
2,500円
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購入日
1990年頃
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購入場所
北のラブリエさん
2016/08/29
けっこうリファレンスにも使っています。
cybercatさん
2016/08/29
あぁ、そうですね。
ヤマタツに限らず、アナログ時代のアーティストはA面B面の曲の色合いの調整や曲順の妙に気を使っていて、切り売りダウンロード販売が多くなった現在とは少し違いますよね。
フェレンギさん
2016/08/29
今も手元に残っております。
もう37年も前のこと。
今も変わらぬファルセット・ヴォイスを維持されているのは、天性と節制の賜物なんでしょうか。
cybercatさん
2016/08/29
自分はヤマタツはミーハーに「RIDE ON TIME」からですので(←今でもドーナツ盤持っていると思う)、このあたりの作品は遡り系です。
ちばとどさん
2016/08/29
当時は斬新で刺激的に聴こえていたはずなんだけど。
cybercatさん
2016/08/29