かつて低価格ながら優れた製品を多く生み出したものの、倒産により消滅してしまった、今は亡きラステーム システムズのUSB接続対応DACです。2012年の製品で、当時は10万円弱という価格設定で発売されたのですが、割合短期間で本機の廉価版といえるUDAC32Rに置き換わってしまったという、微妙に影の薄い製品でもありました。
先日某中古通販で売られているのを見つけ、搭載部品のクオリティーと価格を考えたら、販売価格があまりに安いのではないかと考えて購入してみました。もっとも、メーカーが完全に消滅してしまっていて、サポートが全くないことを考えればこの程度になってしまうのでしょうが…。
以前から使っているLINDEMANN USB-DAC 24/192Xもそうなのですが、この類の製品は筐体がコンパクトにまとめられているのが有り難いです。
電源投入時のディスプレイ表示です。型番とファームウェアバージョンが表示されます。
こちらは通常動作時です。この表示エリアに任意の画像を表示させるというよくわからない機能も用意されていて、画像転送用のアプリケーションと通信ドライバーも用意されていたりします。
付属品です。さすがにサポートサイトも消滅している製品ですので、これらが無ければ購入は躊躇していたでしょう。
押し出しの良い音質に魅力
LINDEMANN USB-DAC 24/192Xがヘッドフォン出力を持たない製品だったので、今回はヘッドフォン出力がしっかりしていそうということでこの製品を購入してみました。
前述した本機の廉価版となるUDAC32Rとの最大の違いが、実はヘッドフォン出力の仕様でした。本機ではヘッドフォン出力のOPAMPにTI製のTPA6120を搭載しているのですが、次世代のUDAC32R以降ではこれがTPA6130Aに変更されていて、ここが明らかなグレードダウンになっていたのです。使いたいヘッドフォンがSENNHEISER HD650やfostex T50RP mk3nですから、この違いは結構響くだろうと考えました。
ちなみにUDAC32の主なスペックは
・USBコントローラー:XMOS製
・D/Aコンバーター:Burr-Brown PCM1795
・ヘッドフォン出力OPAMP:Burr-Brown TPA6120
・電子ボリュームコントローラー:Burr-Brown PGA2320
・水晶発振器:TCXO (±1.0ppm)
・希望小売価格:99,750円
となっていて、評価の安定しているTI(Burr-Brown)製のチップで固められているという感じですね。ちなみにUSB-DAC 24/192XもUSBコントローラーはXMOS製です。
さて、出来れば先程から名前の挙がっているUSB-DAC 24/192Xと音質比較したいところなのですが、USB-DAC 24/192Xをヘッドフォンで聴くためには別途ヘッドフォンアンプが必要となりますので、同じような聴き方が出来る機材ということで、LUXMAN DA-100と比較することにします。ヘッドフォンはHD650を使います。
UDAC32を聴いてすぐに判るのは低域方向の密度の濃さです。厚みは結構あるものの力感も充分にあるため、決して鈍いという印象は受けません。反面高域方向に少し窮屈さを感じる部分はありますが。解像度も悪くはありませんし、かなり細かい音まできちんと出ているのですが、少し詰まったような印象を受ける部分はあります。
DACのPCM1795といえばLUXMANの製品で広く採用されているチップ(今回の比較対象であるDA-100はPCM5102)なのですが、LUXMANの音とはまるで違った傾向であるのが面白いところです。
「CHICAGO XXXVI "NOW" / CHICAGO」などは低域の迫力感に優れるUDAC32の魅力が発揮されますが、「THE SEVENTH ONE / TOTO」は高域方向が自然に伸びていくDA-100の方が好印象です。
「Rock Symphonies / David Garrett」のヴァイオリンはどちらもそれぞれ良さはありますが、UDAC32の方がより情熱的な演奏という印象を受けます。全体として整っていると感じるのはDA-100の方ですが。
はっきり言ってしまえば、どちらが良いという問題ではなく、根本的に音の出方がまるで違うのがこの両機種であるということになります。例えるなら同じ醤油味のラーメンでも、濃厚な豚骨醤油(UDAC32)と端麗な鶏ガラ醤油(DA-100)という違いなのです。
これが新品で売られていた時期に、そこそこの値段で買っていたとすればどう感じたかは判りませんが、今回の価格でこの水準であればただ素晴らしいとしかいえません。
サポートが一切期待出来ないというリスクがあるため手放しでお薦めは出来ません(そのため星1つマイナス)が、この価格でこの音質であれば文句なしと思います。
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購入金額
11,102円
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購入日
2016年07月07日
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購入場所
ソフマップ
harmankardonさん
2016/07/09
jive9821さん
2016/07/09
有難うございます。この中身の製品は、普通のメーカーであればここまで安く出てくることはないでしょうから、消滅ブランドの悲しさと言うべきでしょうか。
ラステームの三上氏は現在Amulechで再びオーディオ機器を作られていますが、会社としてのラステームが廃業してしまったため、過去の製品の市場価値が大きく下がってしまっているのが勿体ないと感じます。せめて修理サービスとソフトウェアダウンロードが提供されていればと思うのですが…。