高級価格帯にはAstell&Kernブランドを展開する、iriverから発売されているイヤフォンですが、設計はfinal audio designが担当しているというコラボ商品です。
基本的には一部販路向けの専用モデルらしいのですが、先日NTT-Xストアでたたき売りとなっていましたので買ってみました。
価格帯や構造からすると、finalブランドの製品でいえばAdagioシリーズの最下位相当というところでしょうか。ただ、外観などは全く異なっていてfinalを思わせるような要素は特にありません。
イヤーピースで元は取れるが…
個人的にはfinalというと、かつて購入したものの全く使い物にならず、投げ出してしまったAdagio IIIがまず思い浮かんでしまいます。
Adagio IIIは一言で言ってしまえば「低音の量が出ていることが何よりも大事」という音作りであり、バランスなどまるで無視というものでした。長時間聴いていると気持ち悪く感じてくるほどです。この製品でも同じような音になってしまうのかという恐怖感もあったのですが…。
結論から言ってしまうと、この製品もやはり圧倒的に低域過多です。ただ、Adagio IIIと比べればまだ低音以外の音も出ています。中域~高域の質感はどちらもよくありませんし、ハイエンド方向は頭打ち感は強くあるのですが、いずれの要素でもICP-AT1000の方がマシという水準でとどまっています。
念のためにと思い、いくつか手持ちのイヤーピースを付けてみたところ、ブランド不明のSSサイズのいかにも安物というものを付けたときに初めてローブースト感が解消され、むしろ低域が不足気味というバランスになります。お約束のSpinFitでもそこそこローブーストだったので、少し意外な結果でした。
次点はIE80もどきのイヤーピース(通常形状の最小サイズ、おそらく本物のIE80と同じ)で、これだとちょっと低音が多めかなという水準でまとまり、中高域とのバランスも良くなります。とはいえ、この状態でも特筆するような音質では無く、あくまでクラス相応という程度にまとまるだけです。
ただ、標準添付のイヤーピースとIE80もどき用とでここまで低音の量が変わるということには、素直に驚かされました。final製のイヤーピースに驚かされたということですが。
そこで高域過多で低域が不足気味というイヤフォンに組み合わせたら面白いのではないかと思いつき、久々にこのモデルを引っ張り出してきました。
以前Complyと組み合わせるとバランスが良いと書いたモデルですが、Complyを使うと本来の持ち味である高域方向の歯切れの良さが消されてしまう部分もあります。そこでこれにICP-AT1000のイヤーピースを組み合わせてみました。
すると、何とこれが素晴らしい相性となるのです。IX3000を常用しても良いと感じるほどにバランスが良くなりますし、高域方向のやや鋭さすら感じる切れの良さはほぼそのまま残ります。そして低域~中低域部分の量が大幅に増え、アタックがほんの少し抑えめになるので音楽のバランスがむしろ整うのです。この状態であれば純正イヤーピース装着時のPhilips Fidelio S2よりも個人的な好みに合っています。
というわけで、ICP-AT1000自体ははっきり言って評価に値するものではないのですが、添付品のイヤーピース代だけで元が取れた気になれますので、イヤーピースを買ったと思えば十分納得できるものでした。
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購入金額
980円
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購入日
2016年05月26日
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購入場所
NTT-Xストア
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