レビューメディア「ジグソー」

我が道を征く

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。好きな事でメシを喰う。言うは易しで実際にはナカナカできる事ではありません。特にエンターテイメント系の職種で、完全に自分の好きなことだけをして食べていけるアーティストは多くないと聞きます。そんな中、メジャーとの決別をして自分の道を追うアーティストもいます。そんな漢の作品をご紹介します。

森広隆。フィールドとしては「ファンキィなJ-POP」なのだが、久保田利伸等のソウル系のテイストやアフリカ系/中南米系のフィーリングはあまり感じられず、一番近い感じがするのがJamiroquai=Acid系という日本においてはあまり似た人がいない方向性を持つアーティスト(彼自身もジャミロを好きなアーティストにあげている)。

そんな彼の4枚目のフルアルバム(メジャーデビュー前にTOWER RECORDS系のインディーズレーベルから出たミニアルバム除く)。この4枚のアルバムの全てが出版元や流通経路が異なるというのが、順風満帆な音楽活動環境でないのをうかがわせるが、いずれの盤もその時の彼の全てが詰め込まれていて、音楽についての妥協がないのが潔く、清々しい。

1st⇒2ndの硬派なイメージを覆すように、3rdアルバム

では彼の中にあるPOPな部分にフォーカスを当て、ジャケットもロン毛の彼が愛猫と戯れるホノボノタッチのモノだったが、本作はまた彼のコアの部分=ソリッドなファンクに戻ってきた感じだ。それでいてPOPなテイストというのは各曲にきちんと取り込まれている。

「ネオフィリア」。彼の選ぶリズムセクションは本当にいい。前作の村石雅行に勝るとも劣らないノリをイントロの2拍のフィルインと続く粗めの音のリズムキープだけでもガンガン出すドラマー佐野康夫、スラップを交えたプレイの音の「トメ」で語るベーシスト種子田健。彼らが作る荒く(粗く、ではない)緻密なグルーヴに、オルガンやクラビ、シンセもモノシンセ時代のような奇をてらわない音で彩る安部潤のキーボード、ワウを効かせた森自身のギターが絡み、それにファンキィな森のヴォーカルが乗る。どちらかと言えばインディーズに居を移した最初のアルバム、2nd“planetblue”

を思わせるようなガツンとした音造りの曲。歌詞も壮大なのか卑近なのか分からないナンセンスがいいな。♪さまようネオフィリア/銀河に釣り糸を垂れて/未だ見ぬ大モノ/夢みて生きるのさ/衣・食・住・キュンキユン♪

「2D Star」は森のファンキィなギターのカッティングと特徴的な種子田のベースラインが印象的な曲(余談だけど、ギターのカッティングが上手いギタリストって、ホントに「上手い」と思う⇒ここ一発のソロより曲全体にかかるワケなので)。本作に参加しているもう一人のキーボーディスト、河内肇のエレピのコードが気持ちよい。間奏は種子田のベースソロ!なんだけど、あえてスラップじゃなくラインで語るのがさすがのセンス。

河内のエレピと森のカッティングが気持ちよいフュージョンテイストのある曲「Avalanche」。ソリッドな佐野のドラムと、粘りを感じる種子田の対比もよいスピード感のある曲で、一見(一聴?)サワヤカなんだけれど、歌詞は結構重い。♪人を殺す為に作られた翼/ふいに/その流線型にみとれてた/闇と光を併せ持つ宿命/僕らの答えは/血にまみれ/見えない♪そのメッセージがズキュンと喰い込んでくるところは彼の新境地?

1st⇒2ndがやや路線を絞りつつ深化、3rdで新たな面を魅せつつ4thでそれを統合して原点に回帰という意味ではまさにTOTOと同じアルバム構成。そしてやっぱりこの作品は作品全体としてみると今の森の全てが出せてるかな。
インディーズ盤ながら、タカハシアキラ撮影、Shun Sudoデザインのポスターが付く
インディーズ盤ながら、タカハシアキラ撮影、Shun Sudoデザインのポスターが付く
彼はワンマン、もしくはパーカッションと二人の身軽でカジュアルなライヴも多いけれど、このアルバムの曲は(2曲ある打ち込みの曲以外は)バンドのプレイヤーのプレイに触発されてヴォーカルも力を増し、さらに曲がよくなっている事が感じられる作品。これはバンド形態で生で聴いてみたい!そんなことを感じた作品でした。

【収録曲】
1. ネオフィリア
2. 2D Star
3. メガロポリタンズ ファンク
4. Waterdrops
5. 憂鬱
6. Invisible Chain
7. Rabbit Hole
8. Avalanche
9. 早すぎるクリスマスソング
10. ユートピア

このアルバム、全く試聴ファイルがないので、掟破りの紹介をw
本作に参加しているドラマー佐野康夫が使うCANOPUSドラムの「刃 Birch Snare Drum (JSB-1455)」のプロモ映像が森広隆の本作のライヴ映像を使っている。もちろんドラムプレイ(ドラムサウンド)中心のPVなので森のヴォーカルはかなりオフってはいるし、曲もドラムが映える間奏中心で細切れなのだが雰囲気は分かるかなーって(しっかし佐野の左手のハイハットプレイが素晴らしいな↓)。

■演奏されている曲
 0:20~ 憂鬱
 0:50~ 2D Star
 1:19~ ネオフィリア
 2:34~ 2D Star

2016/02/10新着「A Day in Dystopia」全曲クロスフェード

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    2015年12月06日

  • 購入場所

    山野楽器

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