先日ご紹介したハイレゾ対応DAP、Cayin N5。
5万円クラスのDAPとしては稀有な「DSDネイティヴ対応」と「バランス出力可能」の二つを兼ね備え、十分音質もよいハイコストパフォーマンスなDAPだったが、いくつかイマイチポイントもあった。そのうちメニュー構成や日本語のこなれ方、プレイリスト機能などは、その後のファームウェアのヴァージョンが上がるにつれて対応が進んでいるようなので、ガタイの大きさやタッチパネル非対応といった「わかってて買った」部分以外では最終的には発熱問題ぐらいしかウイークポイントが残らなそうな優等生DAP......本体側には。
問題はケース。付属のシリコンケースはあまりに....アカン。純正だけあってホイール部分がピタピタにフィッティングよく開口しているところと、本体底部のUSBポートを覆うカバーが露出するよう底に穴が開いているので、充電のときにケースを外す必要がないという2点のみは評価できるが、まるで電化製品の底ゴムのような高級感のない色合い、ディスプレイ開口部のたるみ、サイドボタンの中央ボタンが探りづらくなること、そして摩擦の大きいシリコン製でポケットなどに落とし込むときに引っかかって不便...と本体保護を考えなければ使う気になれないもの。ただあまりメジャーなDAPではないので他社からバンバン社外品ケースが出るとは思えないし、中国のサイトでいくつか社外品ケースが上がっているものの、それらは50USDほどするので、為替や手数料を考えれば7~8千円にはなりそうでモノを見て買えない状態ではちょっと...という感じで手を出しづらかった。...つかそのテの中国産ケースでなにより問題だったのはすべて「左開き手帳型」であったこと。
この左開きという構造、手帳型のスマホケースのほとんどが採用するタイプで、右利きの人の方が人口が多いことを考えると至極当然の選択のように思えるのだが、今回に関しては実は違う....そのケースはこのCayin N5を使ったことがないヤツが設計したに違いない。
...というのも
・Cayin N5はタッチパネルでは「ない」ので、本体を利き腕の反対側(通常左手)で保持して利き手(右手)で画面を触ることは「ない」⇒触るならばケースの「蓋」部分が左側に逃げないと当たって邪魔だがそうでは「ない」
・逆に左手で持って使えばフロントの3つのボタンにホイールとホイール中央ボタン、サイドの3つのボタンすべて届く
・右手で持って片手操作する場合上部の電源ボタンが押しづらく、さらにホイールを回すのは右端は回しづらいので中央部で回すことになるが、そうなると右回しは上向き回しになるので画面のスクロールの向きが逆になる⇒要するに片手操作では左手で使う方が便利なように設計されたDAPである
・Cayin N5にはサイドボタンがあるがこれは左側面に集中している⇒左開きのケースでは完全に開けきらないと触れない位置になってしまうが、画面消灯時=ポケットやカバンに入れている状況ではこのサイドボタンで音量調整や曲選択をするためホントは露出させたい
ということでこのDAPの場合、手帳型ケースを設計するならば「右開き」が正解。そうなると既製品では皆無だった。
そこでオーダーケースを調べたのだが....
これがなかなか....
条件としてはCayin N5というマイナーなDAPに合うケースをオーダーで作ってくれることと、適正な価格という2点だけで調査をしたのだが、まず世にいうスマホなどの「オーダーケース」のほとんどが手帳型で、それは実は「iPhoneなど市販のハーフケース(皿型、いわゆるカバーケース)をブックカバー形状の革の外装に貼り付けただけのもの」ということがわかる。すなわちケースと本体の接合には結局その機種専用のハードケースを必要とするわけで、そんなもんがあるなら最初っからそっち使うよ..ということで「手帳型オリジナルケース制作」の請負を謳う実に9割のショップがここで脱落。
そうなるとスマホケースだけではなく、鞄や革小物まで製作するガチの工房系の店に絞られたのでそこを当たっていったが、「DAPに合うオリジナルケース」を作ってくれそうなところは少なかった。問い合わせを入れた店舗もいくつかあるのだが、対応不可と断られたり数万円という見積だったり、納期が3ヵ月というところもあり、今すぐ使いたくて、でも本体がせっかくDAPとしては安くて5万なのにケースに数万出すのもなー..というニーズに合致したところはほとんどなかった。
そんななか柔軟に対応してくれたのが、ここ、Leather Barista。ここもご多分に漏れずHPに作例が上がっている「スマホケース」は、例の「ハーフカバーケースをブックカバー状の革外装に貼り付けた構造」のものがほとんどであったが、一部「袋型」もあったり、ギターのストラップやベルトといったオーダー色が強いものや携帯灰皿やダーツケースなど他の店舗ではあまり手掛けないようなチャレンジングな製品も多く、それでいてどれもさほどに高額でもなかったので、相談してみることにした。サイドのボタンを露出させながら本体の保護をしたい、というのが最大のポイントだったので、手帳型が理想だが最悪袋状の構造でガワを硬めに作ってもらって、サイドだけボタンが露出するよう深く切欠きを入れてもらってもよいのかな...なんて考えて。
とりあえずHPの問い合わせコーナーから問い合わせると、検討していただけるとのこと。そこで「こんなんできますか?」という感じで厚紙で作ったモックアップ(というほどのものではないw ↓晒してみようww)
をメールに添付すると、固定法をバンドだけでなくバンド+粘着ジェルシート併用にしたらどうかと逆提案された。さらに芯材を入れて強度を増すことや、粘着ジェルシートも当初提案のものより薄いものを再提案いただいたりして、詳細が詰められ、かなり具体化したのでオーダーすることにした。
HPに記載されている商品で「この商品のこの部分の色の革」とか「この商品のステッチ色」などと指定して最終提案を受けたのが次の仕様。
・固定は粘着ジェルシートと上下の袋状の革の細工のダブル固定(中央は状況次第で追加)
・外装は革の張り合わせで中に芯材入り
・表側はオイルレザー(牛革)、内側は豚のヌメ革
・色は表側が光沢有のブラック、内側とステッチがオレンジ
・お店のロゴマークを内側に入れる
・本体より若干大きめに作ることでサイドのボタンを引っ込ませ、誤動作を防止
今回はポケットや留め具をつけなかったので9000円(税込・送料別)という最終見積。約5万の本体につけるには1万以内に収まる、というのも重要で、今回これに決定。
モノがあまり出回っていないものゆえボタンの関係などがわかりづらいだろうとN5を送って現物合わせしてもらうことに。でもこれによりホントにピタピタのものが仕上がってきた。
ちなみに今回のオーダーのタイムコースは以下の通り
2015/10/15:HPから問い合わせ
2015/10/16:先方から検討可の返事
2015/10/17:完成イメージをメール送付
2015/10/19:固定法の提案
2015/10/20:提案を受けたジェルシートの厚さの懸念を伝える
2015/10/21:別シート再提案と具体的な造形の提案(↓)
2015/10/22:発注
2015/10/23:代金振り込み
2015/10/25:DAP(N5)発送
2015/11/05:完成品発送(とN5返送)連絡
2015/11/08:着荷
完全フルオーダーで類似作例がない状況、さらに当方の仕事の都合でDAPの発送や商品の受け取りにロスがあったにもかかわらず最初の問い合わせから1ヵ月足らずで完成品受領という激速っぷり。
出来上がったのがこちら!
外側はかなり硬めの黒光りする革で、“あの”「栃木レザー」のオイルレザー。使うにつれて傷とともに鈍くひかりを増しそうないい塩梅の風合い。
そして内側は、豚革ならではの柔らかい感じの手触りで艶やかではあるがどぎつくはないオレンジに染められた革に店のロゴマークが捺される。
ステッチは太めのオレンジで結構いいアクセント。ちょっとうねってる感じが手作り感。
機能的には、「マチ」があって誤動作しないが、サイドのボタンは純正ケースと違って露出しているので、押し間違いがない構造。そして下部のポートは(もともとついているプラカバーを取ってしまったので)USB端子にはダイレクトにアクセスでき、microSDスロットは隠され、ケースを外さなければアクセスできない=落下・紛失の危険性がないというつくり。そして固定用のジェルシート。
現物合わせしていただいただけあって、前面の物理ボタンの一番下は本体保持の袋状の構造と干渉するのでわずかにザクってあったり、上面の電源ボタンはほぼピタピタのサイズで穴があけられているので、爪で押すような形になって誤動作が少ないなど、さすがの精度。
そして強度的にはかなりしっかりしていて一度テーブルから落としたことがあるけれど、本体無傷の機能性。
これは良かった。
ま、難点をあげるなら
・芯材を入れてもらったがなかなかクセがつかず、いつもキモチ開き気味になる(ホックなどをつけていれば問題なかったかな)
・内側になるオレンジの豚革が閉じた時に「余る」が、きちんとした「折り目」でなく「しわ」となっている
・トップに空けてもらったイヤホンなどの端子の穴が端子に比べてわずかしか大きくなく、一部のヘッドホンの3.5mm⇒6.3mm変換可能プラグなどは干渉する
というあたり。
しかし、最後のを除けば実使用には問題なく、いつも気軽に持ち歩いて使えるようになったのはマル。
つい先日(2015年12月)、Cayinからも純正レザーケース(Cayin Protection Case For N5)が発売されたようだが、それはレザーと言っても天然皮革ではなくPUレザーであることや、ボタンはやはりケースの上から押すような構造で、特に前面の3つのボタンはシリコンより硬い合皮ケースの上から押すために隣のボタンまで一緒に押し込まれたりするような場合があることが報告されたりしているので、そういう意味では「待ってなくてもよかった」。
DAPやポタアン、ICレコーダーのように持ち歩いて使うけれど、純正のケースがない、あるいは気に入らない、という場合は相談してみてもよいかも!そんな工房との出会いでした。
【ケース素材】
皮革:栃木レザー製オイルレザー 黒
裏地:豚ヌメ革 橙
Leather BaristaのHPでも本品が掲載されています(■160■ミュージックプレイヤーケース )
Leather Baristaのブログでご紹介いただきました
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購入金額
9,000円
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購入日
2015年11月05日
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購入場所
~手縫い&手作り革細工~Leather Barista
atsuo@tokyoさん
2016/01/09
しかもフルオーダーでこの値段はかなり安いですね。
私も子供が産まれるまでは、気に入ったPDAやノートPC等の小型ガジェットは必ず革ケースにしていたので、無いモノはフルオーダー等もしていましたが、結構高くついていました。
なんか、またフルオーダーしてみたいなぁ。
cybercatさん
2016/01/10
一般的には開き気味にならないようにホックなどをつけた方が使い勝手が良いと思うので、1万にはなってしまうと思いますが、それでも安い(革をケチれば逆に安くなる?)。
やっぱ、5万のDAPに3万のケース...というのもちょっと釣り合わないと思うので...
supatinさん
2016/01/11
(*・ω・)*_ _)ペコリ
フルオーダーならではの使い勝手の良さと高級感
本物志向でシック「大人アイテム」的な佇まいに憧れます
(*´ω`*)
ウチの安物防水スマホケースのダサさといったら・・
('A`)
cybercatさん
2016/01/11
これはお店の対応もよかったです。
広い日本、探せばまだまだいい店ありますね。