以前から興味があったのですが、色々な販売店で試聴してもイヤーピースが上手く合わずにきちんとした条件で聴くことが出来ない製品が、このPanasonic RP-HDE10でした。
そのうち安くなったら買ってみようと思っていたのですが、中古セールでまずまず手ごろな価格のものを見つけたので買ってみました。
以前取り上げたアラウンドイヤー型のRP-HD7と同じ、MLF振動板を採用しているダイナミックドライバーを搭載しています。
RP-HDE10という型番が示している通り、Panasonicブランドのアラウンドイヤー型としては最上位となる、RP-HD10と同等の音質をインイヤー型に収めたような造りとなっているようです。
Panasonic製ヘッドフォン・イヤフォンに共通する音質傾向
RP-HDE10はMMCX端子を採用していてリケーブルが可能となっていますので、リケーブルにより2.5mm4極バランス接続でも試聴します。試聴には以下の2台を使いました。
また、バランス接続時はこちらのケーブルを利用します。
まず、基本的な音質傾向はベース帯域の厚みがかなりある、低域重視型です。そこそこ締まった低音ですので不快というほどではありませんが、バランスはやや偏っていると言うべきでしょう。
ただ、音質を語る前に触れておく必要があるのですが、ハウジングが重く形状も特徴的なものであり、装着感が非常に良くありません。純正ケーブルを利用する限りはSHURE掛けではなく順方向の装着を想定していると思うのですが、色々なイヤーピースを試してみてもきちんと装着出来るものはありませんでした。すぐに外れてしまうのです。
SHURE掛けであれば安定はするのですが、今度はこの状態で音質がまとまるイヤーピースを見つけるのがなかなか困難です。今回はSENNHEISER IE60の添付品を使いましたが、これでもまだマッチングは良好とはいえません。
さて、音質の方に戻りますが、もっとも大きな特徴は響きや音場の広がりといった要素が著しく少ないということでしょう。これは以前RP-HD7のレビュー内でも記載したのですが、Panasonicブランドのヘッドフォン・イヤフォンでは意図的にこのような音にしているということなのだそうです。開発者の方のコメントによると、ありもしないような空間を勝手に広げるのであれば、最初から直接音だけの方が正解に近いという考えに基づいています。Technicsブランドのようにコスト面での制約が少ない製品であれば響きといった要素も追究するが、コスト面での制約が厳しいPanasonicブランドでは「正確な直接音」を最重要視するということです。
実際に私が以前RP-HD10を試聴したときの感想が「2次元的に正確な音だが魅力に乏しい。また低音は少々盛りすぎ」であり、これは今回のRP-HDE10でも全く同じなのです。その意味では、開発者側から見れば狙った音がきちんと出ているということでしょう。
ただ、それがユーザー側から見て魅力的な音であるかと言われれば、残念ながらそうとは限らないのです。低域の盛り方がきつい時点であまり常用には向かないと思っていたのですが、それ以上に気になるのはどんな曲を聴いてもとにかく味気ないということです。細かい音はよく出ているのですが、特にライブ音源などは全く臨場感がありません。
このような音が好きな人もきっといらっしゃるのでしょう。しかし、私が普段聴くような音楽は楽しめませんでした。他の製品との組み合わせでは音場の広がりがあるDAC-HA300で使っても大して変わらないのですから、ある意味本物です。
さらに、AK100IIのバランス接続でもこの傾向は殆ど変わりません。低域がやや締まったり、緻密さは向上するのですが、空間は全く広がりません。
というわけで、この製品を気に入るかどうかはこの徹底的にユニットからの直接音だけで構築される音場を許容出来るか否かにかかっているといえます。私はどちらかと言えばBA的なふわりと広がる空間の方が好きですから、残念ながらこの製品は好みからは外れるということになります。ソースによっては空間の広がりなど不要と言うこともあるでしょうから、そのような音楽を好む方には価格以上に優れた音と感じられるのかも知れません。
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購入金額
7,500円
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購入日
2017年05月07日
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購入場所
eイヤホン
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