レビューメディア「ジグソー」

強烈な個性の持ち主

先日、eイヤホンの中古セールで異様なほど安いULTRASONE製ヘッドフォン、PRO900を見つけました。新品で4~5万円クラスだった製品で、1年半ほど前にマイナーチェンジを施されたPRO900iに置き換わったものの、基本構成はほぼ同等のまま継続されている状況で、型落ちというイメージもそれほど無い世代のものです。

 

もっとも、現物が届いてみると、異様に安い値段であっても買って後悔するほどひどいコンディションでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

一見するとハウジング表面の金属プレートに傷やへこみがある程度で、多少外装に難があるという程度のものですが、実は表面がベタベタなのです。

 

もっとも、べたつきがあることは商品状態に明記されていましたので、ある程度は覚悟していました。たばこのヤニ程度であれば、普段使っている洗浄液で何とかなりますので、掃除して使えば良いと思っていたのです。

 

ところが、このべたつきは洗浄液でいくら磨いても全く取れません。爪を立てて削るように擦ると汚れが層を作っていることがわかったのです。

 

このままではさすがに使う気になりませんので、最終手段として洗浄液を塗布した後で、耐水ペーパーで磨くという荒技を使ったところ、ようやく気になるレベルのべたつきがなくなりました。後でもう少し細かい目の耐水ペーパーを仕入れてきて、磨いて仕上げるつもりです。

 

 

なお、添付品は2枚目の写真で写っているカールケーブルのみです。このケーブルはプラグ部分にNEUTRIK製のものを採用しているなど、そこそこはコストがかかっているようですが、どちらかというと耐久性に振っている感はあります。

更新: 2017/10/09
音質

癖が強くモニター用には不適

いつも通り、試聴にはFOSTEX HP-A8を使います。リケーブルについては、本体側のコネクターはごく普通の3.5mmミニプラグであり、SONY MDR-1RやFOSTEX T50RP mk3n等と互換性がありますが、今回は標準添付のケーブルをそのまま使います。

 

 

 

 

メーカーの説明ではULTRASONE PROシリーズ密閉型のトップモデルとして、クリアなモニタリングを可能とする製品らしいのですが、実際に音を出すとはっきり言って突っ込みどころが満載としか言い様がありません。

 

 

私はヘッドフォンの音質評価をするときには、通常のリスニングよりも音量を結構上げるのですが、第一印象は「籠もっていて全くクリアさがない」となったのです。この製品ではULTRASONE独自技術の「S-LOGIC plus」という、「発音源であるドライバーを鼓膜の軸上から意図的にオフセットした位置に組み込む」というS-Logic機構を改良し、ハウジング形状などを細かく調整することで音響特性を寄り改善する機構が採用されています。理論的にはもっともだとは思うのですが、音量を上げたときにオフセットするための遮蔽板に直接音が反響してしまうのでしょう。音量が上がれば上がるほど、籠もりがひどくなっていくのです。逆にリスニング音量ではさほど気になりません。

 

そこで音質評価時も普段よりは音量を下げた状態で使ってみましたが、まず全体的なバランスとしてはベースの帯域が強調されるローブーストといえます。ドンシャリという評価を見ることが多いのですが、持ち上がり気味なのは中高域辺りであり、本当に高い周波数の方が持ち上がっている印象は受けません。

 

先に挙げた「S-LOGIC plus」の恩恵なのか、音像の定位はヘッドフォンとしてはかなり独特です。ただ、決してスピーカーに近づくという訳ではなく、ヴォーカルが頭の前方で定位して、それを囲むようにバックの演奏が展開されるという印象なのです。面白いと言えば面白いのですが、理屈通りではなく余計に不自然に感じられてしまいます。

 

 

さて、全体的な印象としては最近試聴用に使っている「Shape Of My Heart / Sting」のようなアコースティック系の構成の楽曲は全く映えません。ベースラインだけは妙に鮮やかなので、ベースの音色を追いながら楽曲を聴くような使い方であれば良いのですが、ヴォーカルや高域方向全般の音色の質が低いので、概ねどのようなソースでも聴いていて音楽に没入できるものではありません。強いて言えば、私の場合ベースの音色を追いながら聴くEarh,Wind & Fireなどであれば、そこそこノリが良く聴くことは出来ます。

 

フラットバランスもかなり独特なので、モニタリング用には全く適していません。このヘッドフォンで音合わせしてしまうと、他の何で聴いても著しくバランスを欠いた音に仕上がってしまうでしょう。

 

 

という訳で、現在リファレンスとして使っているSENNHEISER HD650に近いクラスのヘッドフォンなので、ある程度音質には期待していたのですが、残念ながら完全に期待外れと評して良いでしょう。実は今まで聴いたULTRASONEのヘッドフォンではGOが最も気に入っている(Edition系などは聴いていません)くらいですので、このメーカーと私の相性が極めて良くないのかも知れません。

 

好きな人はULTRASONEでなければ駄目という人も居るくらいのメーカーですので、人によってはこれが良いということなのでしょう。使い手を極めてシビアに選ぶ製品と言うべきなのかも知れません。

  • 購入金額

    5,000円

  • 購入日

    2017年10月09日

  • 購入場所

    eイヤホン

18人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • harmankardonさん

    2017/10/09

    Pro900で5000円だと,それくらいのコンディションになっていまうのは,しょうがないですね.

    特に密閉系のゾネホンは,モニター用には使えませんし,リスニング用としては曲を選びます.
    生音でもありませんし,アコースティック音源には無理だと思います.
    昔の宇多田ヒカルには合うと思うのですが,どうでしょう.

    PRO2900の方が,癖が少ない(十分なゾネホンチューニングですが)ので,オススメです.



    いずれにしても,ゾネホンがハマらない人には,全くダメな高いだけのヘッドホンになりますね.一度,Edition M Plusを試してみてください.
  • jive9821さん

    2017/10/09

    > harmankardon さん

    今まで聴いたULTRASONEの製品では、安い方が癖が少なく済むという印象はありました。Bluetooth版のGOなどは、むしろコストパフォーマンスは良いと評価していましたし…。

    PRO2900は以前NW-ZX1を使っていた時代に試聴したことはあったのですが、NW-ZX1で使う限りはピンとこないという印象でした。今ならもう少しマシな試聴環境を持ち歩けるのですが…。

    Edition系は細かい種類が多すぎて追い切れないということと、そもそも自分が買う価格帯ではないということから敬遠していたのですが、近々一度は聴いてみようと思います。
  • supatinさん

    2022/01/30

    jive9821さん、こんにちは
    (*・ω・)*_ _)ペコリ

    ちょっと話がずれますが「Shape Of My Heart / Sting」良い曲ですね
    私はこの曲が含まれるスティングのアルバムを持っていなかったので初聴きでした
    疲れている時に沁みるようなメロディー・・好きです
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