山下達郎。「職人」というのがふさわしいアーティスト。計算され尽くされた音の造り、構築された曲の構成、音質へのこだわり...(しかし音質<音楽の立ち位置の彼は、現在の中身を置き去りにしたハイレゾ万歳の風潮に棹さしているのが印象的)そんな「凝り性」の彼、デビューアルバム“CIRCUS TOWN”
から凝りに凝って海外レコーディングを行ったり、その時得られたノウハウを転用した作品を創ったりしていたが、評価と売り上げはあまり連動しなかった。
そんな彼が背水の陣を敷いて製作した3rdアルバム。デビュー時からプロデューサー的視点を持っていた山下はこれ以前も以後もアルバムカラーを統一した作品が多いが、この作品はかなりバリエーションに富んでおり、楽しい仕上がり。自分の才能を全てだそうとする気概と、どの分野で受け入れられるのかというのを計るてさぐり感とが両立した「若さ」を感じる作品。
「MONDAY BLUE」。のちの名曲「FUTARI」に通じるハチロク(6/8)のラヴバラード。やや鼻にかかる声~ファルセットの澄んだ声までを使って、♪閉まるドアの向こう/崩れ落ちる心の音/愛の終わる時は/いつも朝の光の中♪と愛の終わりが歌われる(「FUTARI」は静かな愛を歌っているので、曲調は似ているものの内容は真逆)。このアルバムでは唯一この曲にしか使われていないリズムユニット=村上“PONTA”秀一+岡沢章のゆったりとしたグルーヴが気持ちよい。
田中章弘による懐かしい感じのスラップ..というより「チョッパー」ベースのラインが気持ちよいファンキィチューン、「BOMBER」。椎名和夫のギターソロが気持ちよいノリの良い曲だが、実のところ拍裏を強く感じさせる山下のギターカッティングのリズムでこの曲のグルーヴを出している。
「PAPER DOLL」。タイトなリズムとカッティングが小粋な佳曲。ポロン..ポロンと入る坂本龍一のエレピで彩られる。キメ台詞?♪君は/待ってるんだ♪という部分の節回しと山下自身によるワウがかかったギターソロがファンキィ!まるでスガシカオが書きそうな曲で、彼を含めた後世に影響を与えているんだろうなぁと思わせるファンキィチューン。
どの曲もどの曲も完成度が高く、いわゆる捨て曲なしの状態。しかし、やはり「先」を行きすぎていたのか、アルバムとしての売上は前2作に及ばなかった。ただ「BOMBER」が関西圏のディスコで支持されたことで命脈を繋ぎ、次の“MOONGLOW”のヒットと5thアルバム“RIDE ON TIME”
の大ヒットにつながる。後に大御所と呼ばれる彼も売れない若き日はあった。
でも、そんなときでも自分のやりたい音楽をやる、そんな彼の職人魂を感じる作品です。
【収録曲】
1. OVERTURE
2. LOVE CELEBRATION
3. LET'S DANCE BABY
4. MONDAY BLUE
5. ついておいで
6. BOMBER
7. 潮騒
8. PAPER DOLL
9. THIS COULD BE THE NIGHT
10. 2000トンの雨
「PAPER DOLL」
※Amazonは再発盤(ボーナストラック有)へつないでいますので、一部曲が違います。
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購入金額
2,575円
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購入日
1990年頃
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購入場所
北のラブリエさん
2015/07/31
OPUSに選ばれた曲も多いですし、ライブでも定番曲だったり。
cybercatさん
2015/07/31