レビューメディア「ジグソー」

CASIOPEAのもっともALFAらしい時代のベスト盤

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。長い歴史を持つグループやアーティストは、その活動歴の中でレーベルやレコード会社を変わることは少なくありません。なかにはプロデューサーやエンジニアとがっちり組んで音作り・曲作りをしていて、レーベルの影響をあまり感じさせないアーティストもいますが、レコード会社の意向というものもあってレーベルを移った際に音や曲の傾向が変わってしまうアーティストも少なくありません。現在まで多くのレーベルを渡りつつ活動を続けるアーティストの初期を支えたレーベルでのベスト盤をご紹介します。

CASIOPEA。現在は「CASIOPEA 3rd」として第3世代?のメンツであることを明示して活動している彼等だが、

そういう意味ではこの盤は「CASIOPEA “1st”」のもの。この第1世代の後半が彼らのいわゆる「黄金期」と呼ばれる時代で、世の中のフュージョンブームもあいまって、一番人気が高かったとき。

その時のメンツは、ギターが野呂一生、キーボード向谷実、ベース櫻井哲夫というメジャーデビュー時のメンバーに、3作目から加わった神保彰がドラムスという布陣。海外のクロスオーバー~フュージョンシーンの音楽を吸収し、理論とテクニックに裏打ちされた野呂の曲、「向谷ブラス」「向谷エレピ」など名前が付くほど特徴的な音色の煌びやかな向谷のキーボードヴォイシング、キレがスルドイ櫻井のチョッパー(当時はスラップという言葉はなかった)、正確無比でタイトな神保のドラミングが渾然一体となって、これに若い彼等の情熱とが合わさってものすごい勢いだった。

そんな彼等の初のベストが本作、“THE SOUNDGRAPHY”。10作品(ライヴ盤を除くオリジナルアルバムは8作)経過後のもので、彼等の初期の名曲が多く収められている。選曲としてはドラマーが前任者(佐々木隆)であった1st、2ndと「ライヴ録音らしいライヴ盤」である“THUNDER LIVE”からは選ばれず、オリジナルアルバム3~6枚目から各1曲、ライヴ盤といえどオーディエンスノイズをほとんど消し去り、積極的なアフタープロダクションでの音加工を加えて、まるでスタジオ盤のようなクオリティのライヴ盤“Mint Jams”

から1曲、そして当時直近のオリジナルアルバム2作から2曲ずつと、発売時点での近作重視になっているので、選曲的には黄金期の中でも最初期の「CASIOPEAらしい」曲ばかりではというワケではないが、彼等の曲の中でも「通りの良い」曲が並んでいる。

「THE SOUNDGRAPHY」。このアルバム唯一の新曲(←こういう売り方やめてホシイ..)。他の曲が「ASAYAKE」や「EYES OF THE MIND」といった「超」がつくほどの有名曲なので、印象が薄いが、噛めば噛むほど味が出るスルメ曲。時代を反映してか懐かしい感じの「エレドラ」や「リズムマシン然としたハンドクラップ音」がフィーチャリングされていて最初期の曲とは違う傾向だが、弱歪みの野呂音色のメロにベンドの使い方がうまい向谷のシンセのオブリが絡み、正確無比な櫻井+神保のリズム隊が支える、というのはカシオペア王道。

「GYPSY WIND」はサンバ調のリズムなのにこの「熱を持たない」COOLさはどうだ。初期CASIOPEAらしいキメッキメのタイトなリズム。非常に凝ったリズムで分解された音符がドラムスとベースの緻密な組み合わせで一つのリズムフレーズになるという感じの曲。まさに「マシンのような」正確さだが、マシンではなしえないグルーヴが彼等ならでは。

「FABBYDABBY」はこの作品発売当時ファンキィさを前面に出してきていた彼等がスキャットをいれてクロっぽく仕上げた作品。リズムが非常に凝っていて、2小節1パターンのともすれば間延びするような感じのリズムパターンだが、16分のウラを上手く使って引っかけるようなフレーズにしてあり、とてもスリリング。やっぱりこれは正確無比なリズムに尽きるかな。ときどき挟まれるブレイクが印象的。

ベストといっても、やはり商業的なことを考えたのか近作重視の選曲で、最初期の名曲「Take Me」や超テクニカルチューン「Black Joke」、ライヴでのシカケが楽しい「Domino Line」などが選ばれていないのは「ベスト盤」と言えるのか?という気もするが、この作品から入ってきた新規ファンにとっては良い配置かもしれない。当時彼らが所属していたALFAではあと数作オリジナルアルバムを出すが、新規性を出そうと?少し迷走した感もあり、あとから俯瞰するとちょうど良いタイミングだったのかな、と。
裏ジャケは海の中での撮影。楽器へのダメージはどうなんだ..(^^ゞ
裏ジャケは海の中での撮影。楽器へのダメージはどうなんだ..(^^ゞ
当時初期のアナログ盤購入のものも含めると全部彼らの作品を網羅していた購入当初は、『「THE SOUNDGRAPHY」1曲のために3800円か―』(←当時CDはLPレコードより高価で発売日も遅れることの方が多かった)と思ったけれども、選曲的にちょっとひねりが効いていて自分でなら選ばない曲も入っていたりして、意外に何度も聴いたのを思い出します。

.....単に所持するCDの数が少なかったからかもしれませんが(爆

【収録曲】“”内収録アルバム
1. THE SOUNDGRAPHY
2. GYPSY WIND “Make Up City”
3. EYES OF THE MIND “Eyes Of The Mind”
4. SUNNYSIDE FEELIN' “Cross Point”
5. ASAYAKE “Mint Jams”
6. MID-MANHATTAN “4x4”
7. LOOKING UP “Photographs”
8. MISTY LADY “Photographs”
9. WHAT CAN'T SPEAK CAN'T LIE “Jive Jive”
10. FABBYDABBY “Jive Jive”

「THE SOUNDGRAPHY」

  • 購入金額

    3,800円

  • 購入日

    1984年頃

  • 購入場所

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