現在私が使っている高音質DAPとして、稼働率が高いのは以下の3台です。
普段使いには小型でバランスの良いAK70が使われることが多いのですが、ある程度音をきちんと聴こうとするときにはKANNかAR-M200を使うことになります。通常であればアンプが強力なKANNがあれば用が足りそうなものなのですが、KANNは意外と大型ヘッドフォンを苦手にしていたり、音質的に相性の良い組み合わせが狭かったりするという弱点があり、AR-M200の方が幅広く一定水準の音を出してくれることが多いのです。
AR-M200はAcoustic Researchの最廉価DAPであり、音質的には価格を超えたものといえる素晴らしさではあるのですが、操作性や快適性は市販レベルとは思えないひどさで、普段使いには少々不便過ぎます。音質がごく普通のレベルであれば絶対に使わないと思います。
AR-M200以外のAcoustic Research製DAPとしては、最上位のAR-M2、ミドルクラスのAR-M20が用意されていて、これらはOSにAndroid 4を採用していて、SoCも当時のメインストリームクラスのスマートフォンと同等のQualcomm Snapdragon 400を採用していたため、AR-M200とは全く別物といえる操作性、快適性を実現していました。いずれもアンバランス接続のみという弱点はあるものの、特に上位のAR-M2についてはいつかは使ってみたいと思っていたところに、ジャンク寸前の難あり品が格安で売られていたため入手してきました。
傷も無数に入っていますし、打痕などもあってお世辞にも良いコンディションとはいえません。一部ネジも欠品していますので、前ユーザーが無理矢理分解しようとしたのかも知れません。Wi-Fiが不調なので、これを何とかしようとしたのかも知れませんが。
画面を表示するといかにもAndroid端末という見た目になります。ちなみに見た目がスマートフォンに近いAR-M2ですが、搭載されているAndroidはタブレット用となっています。
購入時点では初期ファームウェアのままとなっていましたので、日本の公式サイトで公開されている(英語版の公式サイトではサポート情報も含め一切残されていません)、アップデーターを適用しています。
アップデーターを適用することで、再生アプリ「AR Music Player」に加えて「AR Music Player PRO」が用意されます。ちなみにAndroidの標準再生アプリは用意されていません。2つの再生アプリについては、「AR Music Player PRO」の方が他社製のアプリに近い使い勝手を実現しているため、こちらを中心に使うことになるでしょう。
操作ボタンは右側面に集中しています。電源、トラック送り、再生の各ボタンが用意されているほか、microSDカードスロットが用意されていて、このカードスロットにシャッターが用意されている辺りに決して安物ではないというところが表れています。
ちなみに電源投入時にトラック戻しボタンと電源ボタンを同時に長押しすると、ブートメニューが表示されますが、通常これを使う意味は無いでしょう。
アンバランスでこの水準の音が出るなら文句なし
ファームウェアを最終版に更新した上で、追加された「AR Music Player PRO」で試聴を行います。
なお、ここで使ったのはSanDisk Ultra 128GBで、現行のUltra 200GBまではこのモデルでも正常に認識することは確認しましたが、TEAM製の256GBを挿入するとmicroSDカードのスキャンを始めたところでフリーズしてシャットダウンされてしまいます。公式情報では128GBまでのサポートとなっていますので、そこまでにしておくのが無難そうです。本体内蔵メモリーも64GBと比較的大きめですので、合計192GBですから実用レベルになるでしょう。
注)代理店の最新サポート情報では、200GBまでのメモリーカードは動作確認が取れたことが公表されています。メーカー側では最大128GBという表記のままでしたが、代理店の独自検証により200GBはサポート範囲内と判断して良いでしょう。
試聴は主に64AUDIO U4+Brise Audio STR7-Stdに、Massdrop X MEE Audioの2.5mm4極-3.5mm3極変換アダプターを組み合わせて行いました。
アルバム「The Dream of The Blue Turtles / Sting」(LPから起こした24bit/88.2kHz WAV)を聴いてみると、音場の広さこそごく普通レベルではあるのですが空間の密度はかなり濃く、ヴォーカルや楽器の質感がとてもアンバランス接続のDAPとは思えない程見事なのです。同じ条件でAR-M200のアンバランス接続とも比較してみましたが、AR-M2と比較してしまうとAR-M200の表現もまだ表面的に聞こえてしまうほどです。
アンバランス接続の高音質DAPとしてはLuxury&Precision L5PROも持っていますが、低域方向の深みや響きの表現など、多くの部分でAR-M2に分があるように感じられます。L5PROでも充分高水準の音ではあるのですが…。
そして低域方向の表現はかなり充実しているのですが、ローブーストの傾向が強いU4との組み合わせでありながら低域が過剰に聞こえることがないのです。勿論量自体は多めであることに変わりはないのですが、圧倒的に強力なドライブ能力のためか無駄な音が出てこないことで、結果的にしつこさを感じないのでしょう。
強いていえば高域方向の解像度が低域方向と比べると僅かに物足りなく感じる部分があるのですが、これはバランス接続出来ない以上仕方ない部分もあるでしょう。逆に言えばこの水準の音を維持したままバランス接続に対応していれば、素晴らしい名機となった可能性も充分にあります。
なお、Massdrop X SENNHEISER HD6XXも少しだけ使ってみましたが、結構まともな音が出てくる事に驚かされます。正式に300Ωをサポートしているアンプを搭載しているだけに、HD6XX位に鳴らすのが難しいヘッドフォンでも何とかなってしまうようです。
※追記
この後、しばらく持ち歩いて使っていたのですが、どうやら私が買うまでかなり長期間通電すらされていなかった個体のようで、音が随分変わってきました。
当初さほど広さを感じなかった音場はかなりの広がりを見せるようになり、楽器の質感もより増してきました。実はAR-M2を使いながらeイヤホンの店頭で5~10万円前後クラスの現行モデル数機種(Colorfly U8、Questyle QP2R、HiBy R6 PRO、FiiO M11、iBasso DX160、HiBy R5)を試聴してきたのですが、そのいずれと比較してもAR-M2の魅力は全く劣っていませんでした。HiBy R6 PROは比較してもなかなか良い線だったと思いますが、他のモデルと比べればAR-M2の方がより魅力のある音です。しかも、他社製品はいずれもバランス接続で聴いたのですが…。
私が愛用する64AUDIO U4/U3のどちらで使っても満足度の高いDAPというのは、なかなか他にありません。今となっては得がたい高音質DAPだったのかもしれません。
恐らくバランス接続対応であれば文句なしだった
私が入手した個体は前述の通りジャンク寸前というコンディションであり、初期の性能をどの程度保てているのか疑問が残る、ひどい状態のものでした。
しかしそれでも音質ではAcoustic Researchの最上位モデルという貫禄を充分に見せつけてくれました。アンバランス接続である限りは、手持ちのDAPでこの製品に匹敵する水準の音を出すものはありません。発売当時138,000円という価格だったそうですが、その価格にも納得できるだけの実力は充分持っています。
ただ、AR-M200を不具合の塊のまま製品化してしまうようなブランドであるだけに、詰めの甘さは随所に見られます。恐らく多くの人が気になるのは、タッチパネル操作をしていると画面の動きに合わせてノイズが飛び込んでくるということです。また、曲間でファイルフォーマットが変わったときに、はっきりとノイズが入ってしまうのもマイナス要素でしょう。
そういった問題点に目をつぶることが出来て、アンバランス接続で高音質DAPを求めるのであれば、今となっては中古価格も安くなっていて文句なしにお薦めできる実力の持ち主です。Androidの古さ(最新でも4.3)という問題はありますが、ユーザーによるアプリの追加は不可能な仕様であるなど、セキュリティの観点では致命傷とまではならないものと思います。
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購入金額
10,000円
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購入日
2019年09月28日
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購入場所
eイヤホン
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