所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。歌というものは「なにかを伝えるもの」です。自分の想い、主張、感情を、他者に、世間に伝えたい...それが歌の原点です。でも最近はストレートに感情を想いを顕すのが避けられる風潮があります。そんな人間関係が希薄になる時代の中、自分の想いをストレートに伝えるアーティストもまだいます。そんなアーティストの想いが伝わる歌をご紹介します。
山崎まさよし。20世紀末の比較的初期から識りながら、この独特の世界を持つ男の作品にはあまりきちんと触れてこなかった。彼を識ったのは「福耳」というユニットから。現在では元ちとせやスキマスイッチ、さかいゆうに秦基博らまで加わった、まるで音楽プロダクション「オフィスオーガスタ」の同窓ユニットのような様相を呈しているが、最初は元BARBEE BOYSの杏子とスガシカオ、それに山崎まさよしの3人のユニットだった。もともとスガから入ったcybercatとしては、メインヴォーカルでもない彼を聴きこむことがなかったのだ。ただ、一般的な「流行歌」には疎いとはいうものの、ほぼ同時期に売れたシングル「僕はここにいる」は耳にすることがあり、どんな傾向のアーティスト化は大雑把には識っていた。傾向としてはキライじゃない。でもイマイチのめり込むほどのことはなかった。
声が独特のこもった様な鼻声のような声で、どちらかというと「滑舌いい系」のシンガーが好きな自分としては、ちょっと嗜好とずれるなというのもあったので。
でも、ジャンル的には結構好きなあたり。カントリーロックやブルースをベースにしたJ-POPで同じ事務所だったスガシカオのようなファンキィさはなくてもっとフォーキィ。でも共通しているのは詞の世界の独特さ。まるで自分のキモチを、その変化を、そのまま声に出して歌ったような曲が多い。
本作はそんな彼の6枚目、かなり初期のシングル。ギターとブルースハープを中心とした楽曲で、リズム楽器やキーボード系の音も入るが、メインは弾き語りが核(決して静かな曲というわけではない⇒ギターかき鳴らしとブルースハープで基本はできると言うこと)。装飾が少ないため、彼の独特な詞の世界が堪能できる。
「振り向かない」。結構別れた女性のことにこだわってる主人公の心の動きがそのまま歌われる。♪君の気持ちが揺れたのは/ごく自然なことなのさ/分かってたつもり/君からのさよならは/今頃になって/なぜ/胸を焦がす/不甲斐ない僕に/ささげてきた/君の時間は/取り戻せたかい♪と訊き、そして♪すれ違った後/立ち止まらない/どこかでもし出会っても/幸せ祈るだけで/振り向かない/君を見つめない/変わらぬ面影見つけても/言葉は交わさずに/振り向かない/君を見つめない/確かに歩きだすよ♪と結ぶがホントにできんの?って感じがする女々しさ。女っぽさのかけらもない山﨑の声で歌われるとオトコの中に住む優柔不断ってやつと対面させられたりして。あとこの曲編曲に中村キタローが加わる(他にスガシカオの初期のブレーン、森俊之)。中村は実は久保田利伸の初期を支えた名ベーシスト。その情報を得て聴くと、違う畑で声質も違うのに、久保田と山﨑にはそのありよう、というか、存在に何となく共通点があるように思えるから不思議だ。
両A面と言うが「ガムシャラ バタフライ」はまったく1曲目とは違う。ブルースハープとアコギフィーチャリングで、音造りはなんかThe Beatlesを彷彿とさせるような雰囲気だが、実はバックは打ち込み。編曲は同じく中村キタローが加わる。そのせいか打ち込みとはいうもののベースラインは結構重要なアクセント。歌詞詰め込み系の不条理ソングで、♪Everyday/またとりとめもなく幻像追って/誰もまだ見えない/桃源郷/Every time/また高カロリーな願望抱いて/頭にはみだしてるコレステロール/これは俺じゃない/そんなはずじゃない/それは君じゃない/せとぎわガムシャラバタフライ ♪ときたもんだw
「mud skiffle track Ⅳ」は山﨑のシングルに入れられる曲の断片というか即興というか。これが結構イイ味出している。今回は1分少々のフレーズにしかすぎないが、ブルースパープとボトルネックを使ったスライドギターのブルージィな風合いがイイ感じだ。
「振り向かない」は前世紀的女々しさを歌い、「ガムシャラ バタフライ」はリフに載せて不条理な言葉の羅列を並べる。どちらが山﨑なのか?でも、どちらも山﨑。面白い詞の世界を持つ男と聴き込んで発見。
本品入手は某オークションでの一括出品。好きなアーティスト(実はスガシカオだったりもするのだが)のお目当てのモノと一括出品されていたので、抱き合わせ落札。この時落とした数枚が、彼をしっかり聴いたきっかけに。聴いてみると「噛めば噛むほど」系のじわじわくる良さ。
今となっては懐かしい感じのする縦長8cm CD。右端の折り込みは「背」の部分を形作る
最初はちょっと耳触りな感じがした鼻にかかった声も、こういったアコースティック系のセットには合うかな..と歌詞を聴きつつ感じた作品です。
【収録曲】
1. 振り向かない
2. ガムシャラ バタフライ
3. mud skiffle track Ⅳ
4. 振り向かない(karaoke)
5. ガムシャラ バタフライ(karaoke)
TVライヴだけれど「振り向かない」
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購入金額
290円
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購入日
2012年09月30日
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購入場所
Yahoo!オークション
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