レビューメディア「ジグソー」

YouTubeやニコ動..個人が発信できる環境の整備で、知らなかったアーティストを識る

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。CD(以前はレコード)ショップで今まで識らなかったアーティストを発見する、というのは結構スキルが必要でした。試聴盤を聴いたり、店内で流れている曲名を確かめたり、平積みをひっくり返したり、好きなジャンルのコーナーをあさって帯の謳い文句を眺めたり...そういった「偶然の出会い」は今でも有効ですが、そもそも識らないアーティストに着目するには曲が流れてでもない限り、なかなかできません。それが今はインターネットでの曲の配信とそれを縦横につないだリンクにより、関連があるアーティスト、方向性が似ているアーティストを次々と見つけることができます。そんな風にして出逢った同人CDをご紹介します。

 

インターネットのリンクやおすすめって面白い。なかには気を付けなければいけないサイトもあるけれど、YouTubeやニコ動のリンクで新しいジャンルやアーティストを識る、ということが最近では多くなっている。この同人CDもそんな風にして出逢ったもの。

 

ルートとしては(自分はドラムをやっていたので)上手いベーシストのプレイが好きで時々Youtubeなどを見ているのだが「【次世代スーパーべーシストプロジェクト】PROJECT B. [3rd] 」という若手ベーシスト15人のソロ回しの動画で一番ブッ飛んでるラインを弾いていた小林修己に注目⇒彼が参加しているLowland Jazz

を識る。そこで1曲目に演奏されていた「からくりピエロ」がハッピーなビックバンドアレンジで、「たしか元は結構切ない曲だったよなぁ..」とリンクをたどりオリジナルの40mPのページに飛ぶと、その横の関連動画のところにこのおさむらいさんのボサノバアレンジがあったのだ。

 

聴いてみると実によい。一人八役の多重録音で、6本のギターとボディをたたいた音でバスドラとスネア(リムショット)の音を創り、他の楽器はシェイカーだけ。乾いた生ギターの音がとても心地よく、CDを手に入れる気になった。

 

演奏しているのは「おさむらいさん」というハンドルネーム/芸名のギタリスト。「アコギでロックしてみた」という動画を多数あげている。その名の通り、基本使うのはアコギ(スチール弦のいわゆるフォークギターのほかにガットギターも使用)、ウクレレ、ブルースハープ、シェイカー程度のアンプラグド系。

 

それでいながら演奏は結構アツい。自分はつい数か月ほど前まで知らなかったが、そのプレイは海外でも識られているらしい。特に台湾で人気が高いそうな(定期的にライヴをやり、2013年、2014年は追加公演もやってる)。←トレードマークのパンダと関係あるのかな?ww

 

もちろんオリジナル曲も演る彼だが、今回のものはボカロPとして高名な40mP(40㍍P)の楽曲の演奏を集めたもの。前述の「からくりピエロ」も入っている。もともと40mPは「ボカロ」というワクを外しても良質な曲を書き、「歌ってみた」の投稿が多いPとしても有名(ちなみに奥様は歌い手としても有名なシャノさんらしい)。それをあえてインストアレンジ、ということで入手してみた。

 

まずその「からくりピエロ」。もともとかなり物悲しい(詞の内容も哀しい)曲だったが、ボサのツー・スリーのリズムで哀愁はありつつも小粋に仕上がっている。時折挟まれるハーモニクスがいいアクセントになっていて、元曲のドラマチックさより、淡々としている分メロディの良さも活きている。

 

「シリョクケンサ」は比較的原曲に忠実なアレンジ。「ギター曲!」感じに仕上がっている。このCDには同人CDらしく?40mPとの電話対談が収録されているが、彼らが共通で好きなのがゆず

やミスチルということで、それらを彷彿とさせるようなメロディであり、アレンジ。40mPの心がけていることとして「たとえばオルゴールで演奏されたとしてもいい曲と思える曲」を目指したいと、アレンジに頼らずメロディラインで勝負したいと対談で語っているが、まさにそれがシンプルなアレンジでよくわかる形に。

 

そしてその対談で40mPが一番意外なアレンジ、と言っていたのが「キリトリセン」。投稿の表題には「アコギとかでラテンしてみた」となっているが、ラテン...というより結構フロア系だなーと思っていたら、実は「MONDO GROSSO」を意識した、とのこと。強いビートがダンサブルなこの曲は言われてみると初期のbird(MONDO GROSSOこと大沢伸一がプロデュース)

に通じる薫りがある。これも一人八役でギターは5本(うち1パートはベースライン)。他はシェイカーとギターのボディをたたく音のコンガにブルースハープと20フレット付近の弦をたたいたスネアの音を両立させたパート。原曲のオルガン系の音のバックを得てスピード感あふれるものとは完全にイメージが違い、4つ打ちの縦ノリが心地よい。

 

おさむらいさんはオリジナル楽曲も演奏するアーティストだが、RPGゲームミュージックやアニメの曲の「弾いてみた」作品も多い。やりたい本筋とは違うのかもしれないが、なんせ知ってる曲が多いのでとっつきが良い。今回購入したものも結構気に入って、おさむらいさんのオリジナルにも興味が出てきたので、それはそれで成功?

ケースのCD保持面にはトマトジュースが好きだの嫌いだの他愛もないことが書かれている。それも同人っぽくてヨイカモw
ケースのCD保持面にはトマトジュースが好きだの嫌いだの他愛もないことが書かれているw

 

音楽との出会いはいつも偶然。今まではたまたまCDショップやラジオでかかったもの、通りかかったイベントで演奏されたものしかチャンスはなかったけれど、今はリンクやおすすめからの発見もある。閲覧履歴から広告が表示されるリターゲティング機能はプライバシーを覗かれているようでヤだけれど、こんなおすすめなら、アリ、かな?

 

【収録曲】(各曲のリンクは40mPのオリジナルに接続)

1. 夢地図
2. STEP TO YOU
3. からくりピエロ
4. 夏恋花火
5. シリョクケンサ
6. タイムマシン
7. キリトリセン
8. 少年と魔法のロボット

おまけ
・「夏恋花火」 歌ってみた
・おさむらじお出張編~おさむらいさん×40mP対談~

 

「キリトリセン」

 

「おさむらいさんせれくしょんvol.40mP(SPOT)」

更新: 2014/12/28
コレクター性

価格と言い、おまけと言い、「同人CD」で、入手も少し難易度高し。

おさむらいさんの作品自体はAmazonでも取り扱いはあるが、本品は(2014年12月現在)なし。もともと、C85で販売された「同人CD」で、おさむらいさんのHPでも「ディスコグラフィ」のページではなく、「グッズ」のページに記載されている。販売経路がやや限られ、入手性は少し悪い。

  • 購入金額

    1,500円

  • 購入日

    2014年12月10日

  • 購入場所

    THREE!(株式会社ラゴア)

16人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (12)

  • cybercatさん

    2014/12/29

    ラブリエさんならこっちの方が好み?
    「夜咄ディセイブ」 by おさむらいさん

  • 北のラブリエさん

    2014/12/29

    あー、たしかに!
    でもキリトリセンも好きですね。
    ああいうのりも好物なので!
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