以前から書いている通り、私はカナル型のイヤフォンをあまり好んでいません。カナル型のメリットは外界と遮断される遮音性の良さですが、外出時に遮音性が良すぎるのは危険でしかありませんし、音質的にも閉塞感を感じさせられるものが多いためです。
かといって室内で聴くのであれば別に可搬性は重要視されませんから、オーバーヘッドタイプのヘッドフォンを使えばより音質面で有利ですから、使い道を思いつかないのです。
しかし、先日秋葉原のeイヤホンで色々普及価格帯の製品を試聴していて、なかなか感心したのがこのMUIX IX3000です。MUIXとは韓国iSOUNDのブランドであり、この会社は自社ブランドよりも大手メーカーへのOEM/ODM中心のメーカー(実際公式サイト上に自社がOEM/ODMしている他社製品も掲載されています)です。ここが自社ブランドとして立ち上げたのがMUIXであり、その第一弾製品がIX3000です。
IX3000はごく普通の低価格帯カナル型イヤフォンで、私の購入時点で税・送料込み4,000円というローエンドに近いクラスの製品となっているのですが、他社製の近い価格帯の製品とは一線を画す音質だったのです。
デザインはシンプルかつ地味ですが、最初からこの製品に求められる要素でもないでしょう。
ドライで解像度重視の音質
最初に試聴した際に利用したのは、SONY Walkman NW-A865です。
IX3000はiOS対応のリモコン機能を持っていますので、一応iOSのデバイスとしてiPhone 5sとも組み合わせています。
また、単体のヘッドフォンアンプとしてはRATOC REX-KEB02AKを利用しました。
どの環境でもまず一聴して判るのが、出来の悪いカナル型にありがちなこもりが感じられないということです。中低域辺りの密度感が抜けてしまうという弱点はありますが、クリアで見通しの良い音と表現するべきでしょうか。
レンジは欲張らずに可聴範囲をしっかりと鳴らそうとするタイプでしょう。低価格帯の製品としては珍しいぐらいに、全域にわたって解像感の高さを感じます。
私が低価格帯のイヤフォン・ヘッドフォンで不満を感じることが多い、ヴォーカルや管楽器の質感も、少し痩せてしまう感じはあるものの及第点は付けられます。主に試聴ソースとしては「Chicago XXXVI "Now”」を利用していますが、充分に曲を楽しめるだけの水準を保っているだけでも賞賛に値します。
iPhone 5sでは、元々低域方向の量感や解像感に乏しく、正直いってIX3000との音質的な相性は良くありません。iPhoneで使うならもう少し量感を稼いでくれるタイプの製品にするべきでしょう。
逆に低域方向の厚みと馬力があるREX-KEB02AKとの組み合わせでは、重心が下がって音の芯が出てくることから、クラスからは想像も付かない堂々とした鳴りっぷりをみせてくれるようになります。まだエージングが進んでいないので少し角が感じられますが、これも使い込んでいくうちに落ち着いてくれるように思えます。
さすがにREX-KEB02AKでも最低域部分はかなり軽くなってしまいますが、それでも他の同クラスやもう少し上の製品と比べても、質的にはかなり高い音ではないでしょうか。その楽器がその楽器の音に感じられるという、当たり前でありながら難しい要素をきちんと実現出来ています。
好みが合えば最強のコストパフォーマンス
音質傾向がはっきりとドライな解像度型ですから、しなやかで優しい音を求めている人には全く向きません。しかし、手頃な価格帯でモニター型の音質を持つ製品を探しているという方であれば、まずは使ってみて損はありません。
先程からドライな音と書いていますが、雰囲気を全てそぎ落としてしまうようなドライさではなく、控えめながら空気感はしっかりと表現しています。
実はeイヤホンではこのとき十数種類のカナル型を試聴してみたのですが、音質でこれをはっきりと超えているといえるものは1万円以下には見当たらなかったというのが本音です。傾向の違いから来る好みの差で、これより気に入る可能性がある製品が無い訳ではありませんが…。
もちろん、価格を無視すればIX3000以上の音質を持つ製品はいくらでもあります。しかし、とりあえずプレイヤー付属のイヤフォンから手ごろな価格でアップグレードしてみようという程度の購入動機で、高額製品をいきなり買う人はあまり多くはないでしょう。そのようなユーザーには最適な製品ではないかと思います。
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購入金額
4,000円
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購入日
2014年12月15日
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購入場所
eイヤホン
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