村松健。何度がご紹介しているが、ジャンルとしては時期によってかなり違う。デビュー当初はペダルを踏んだサスティーンの長い音色が特徴のバンド構成のフュージョン。その後童謡的な郷愁を誘うメロディをアコースティックな構成で奏でるニューエイジに。クラシカルな雰囲気を持つ残響をあまり感じないザクッとした録音の曲たちを経て、ニューエイジ系のソロピアノに戻る。一時期実験的で環境音楽的なヒーリング系に行ったあとは、奄美に移り住んでから本格的に始めた三線とピアノが織りなすアジアンヒーリング系へと変化している。
本作は以前ご紹介した“夢の扉~bells of my heart~”
と“雪催-ゆきもよい-”
の間に位置する1995年の作品。ジャンル的には日本的な旋律とジャジィなテイストが混じったニューエイジ系。ただ積極的にリズムマシンを使って、無機質な淡々とした感じを出している曲があるのが彼らしい。
“水の中のピアノ”、英題として“Melodies in the Stream”とつけられたこの作品は彼がデビュー当時から持っている雰囲気、「夏」を感じる曲が多い。でもそれは「イケイケの夏」ではなくて、遠い幼い頃に水辺で遊んだ想い出だったり、夏祭りの終わったあとの静けさだったり、浜辺の木陰で眺める海面にたつ蜃気楼だったり...という「静かな(そして郷愁を誘う)夏」。
「森へ行こうよ」は近年はあまり聴かれなくなったリズムマシン+ピアノ+ヴォイスにピアニカの調べがかわいらしい曲。ただ生ピの伴奏?はかなりフェイクしていて、無機質になりがちな構成の曲に息吹を与えている。通しで入るスキャットというかヴォイスはピアニストが演奏中に感極まってメロをなぞっている..というのではなくて積極的に主旋律をとっているのが、他の作品にはあまりないかな。
「水の中のピアノ~Piano Splash!~」は同様にリズムマシンが刻む作品だが、ダンパーを踏んだ流麗なピアノで全く表情が違う曲。流れるような村松のプレイはしたたり落ちるような水の流れを表しているようだ。
ラストの「輝く水、そらへ」はピアノの高音域を多用した輝くようなイントロから、寄せては返す波のような左手の伴奏に右手の分散和音が絡むピアノソロによる作品。たゆたい、はじけ、流れ..きらめき、輝き、映し...という強く水がイメージできる曲。
初期ほどペダル踏みっぱなしで流れてしまってはいないし、近年のようにエスニックの香りが強いわけではない。ジャズ~フュージョン~イージーリスニング~ヒーリング~クラシック~エスニックを行きつ戻りつしつついろいろな作品を発表している彼の「ちょうど聴き頃」の作品。夏、涼しい風を感じる木陰で水面を眺めながら聴きたい作品です。
【収録曲】
1. 瞳の中の夕なぎ
2. Early Tea Morning~めざめの水~
3. 森へ行こうよ
4. 水の中のピアノ~Piano Splash!~
5. 森の精と水神様
6. RU・PESHU・PE~峠みちのふもと町~
7. 僕らは明日に向かって流れる
8. 自由の河~Waltz In The Stream~
9. 輝く水、そらへ
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購入金額
3,000円
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購入日
1995年頃
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購入場所
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