レビューメディア「ジグソー」

RemoteでPowerON

Antecが過去に得意とした、3チャンバー構造HTPCケース"Fusion"シリーズ最後の製品。
これを最後にAntecはHTPCケースを作らなくなったのだが、それというのもコイツの評判が非常に悪かったせいとも言われる。

Antec最後のHTPCケース、MicroFusion Remote
発売当時のお値段、なんと29800円。

こいつの評判が悪かった理由はいくつか存在するが、何と言っても問題だったのがその価格。
原型となったNSK1480からして強気過ぎるお値段(18800円)であったが、iMON VFDを内臓しただけで11000円UPの29800円という論外の価格設定が為された。

結果、コスパの悪さが問題視された上に、兄弟機であった無印Fusion Remoteと比較して色々と不出来かつ機能が削られているにも関わらず、価格が7000円も高いという意味不明な状態となり、最終的に見切り価格(7~8000円)での叩き売りという憂き目を見るに至る。


なお、不出来とされた点は以下の通り。

・VFD装備のため、ただでさえ少ないHDD搭載数(2台)が、たったの1台に。
・肝心のVFD自体、出来がイマイチ。輝度も不足気味。
・搭載されている8cmファンが、HTPCとしてはかなり五月蠅い。
・光学ドライブの装着時、構造的にフロントパネルケーブルなどを挟み込み易い。
・天井が低すぎ、CPUクーラーの選択肢がかなり少ない。

ただ、これらの問題も結局のところ製品特性の裏返しというか、無印FusionRemoteの出来が良すぎたが為の辛口評価という側面も強い。
実際、私が入手したのは二度目(一度目に入手した製品はVFDが4日で死亡したため、即座に返品した)になるが、一度目の入手時に感じた「悪印象」は随分と和らいでいる。

そういうわけで、Antec史上稀に見る駄作と評される本製品、本当に駄目なのかレビューしてみるとしよう。

こちらは、製品の内部写真となる。
ごちゃっとしたケーブルが目に付くが、VFD用のケーブルやファン単体での速度調整など、当時のAntecが得意としたギミックの代償でもあり、ある程度は仕方ない。

マザーボードは5inchベイの右側に収まる格好で、MicroATXまでの対応となる。
固定用のネジ受けは半固定式で、MicroATXとMiniITXで位置が共通の3箇所が底板をプレスで盛り上げられており、残る部分がお馴染みの六角ネジでの固定。
面白いのは付属の六角ネジが双方♂となっていること。
マザー装着後に付属の手回しナットで固定する構造で、これはマザーを押えることなく、セットするだけで位置出し出来るという利点がある。

筐体側面に並んで搭載された、8cm排気ファン。
CPUの真横という好配置で、風量も割と大きい。

ファン自体にLoーMiddleーHighの三段階速度切替機能があり、その為の切替えスイッチがファンからケーブルで伸びている構造を持つ。

ただし、その音量はHTPCとしては少々大きく、Loに設定してもそこそこノイジー。
また、電源がペリフェラル4PINでしか取れない構造なので、マザーボードからのファンコントロールも回転数監視も出来ない。

このファンは当時から評価が分かれ、マザーの機能が生かせない事から普通の8cmファンへ交換してしまう人も多かった。(私もその一人で、今回も速攻で交換した)

HDDは、一基のみ搭載された3.5inchベイに積む形となる。
3.5inchベイはネジ2本で本体に固定されており、HDDを装着する際は一度本体から取り出す必要があり、少々面倒くさい。

なお、このドライブベイを取り外す際はVFDパネルユニットを先に外す必要がある。
ドライブの固定はベイ下側より、シリコングロメットを貫通させるネジで留める方式で、HDDの振動を吸収する構造となっている・・・・のだが、実際にHDDを搭載するとかなりアクセス音が響く。
筐体とドライブベイのメタルタッチ精度は割と良好なのだが、どうもシリコングロメットだけでは振動を殺し切れていないようだ。

こちらの写真はVFDユニットの裏側。
本来はここに、もう一つHDDベイ金具が収まる構造なのだが、VFDパネルの配線や樹脂製の固定部品が干渉するため、金具がオミットされている。
VFDパネル裏の配線をフロントパネルに内装するなり、基板側面に端子が出るような構造にすれば回避出来たと思うのだが・・・・

こちらが、HDDベイを犠牲にして搭載されたVFD。
右側の小さい丸窓はIRリモコン受光部で、感度は割と良好。
VFDは専用アプリケーション"iMEDIAN HD"か、Windows Media Centerに対応しており、再生中の映像や音楽、システムの情報やイコライザなどが表示出来る。

最も、殆ど無意味な機能で、メインとなる機能はほぼIRリモコン操作。
この当時としては珍しく、完全シャットダウンからのリモコンによる電源ON/OFFを実現しており、これは本製品というかFusion Remoteシリーズ最大のウリでもあった。

HDDベイの真横には、CPU側面に設置されたのと同じ速度切替機能つきの8cmファンが、吸気方向で設置され、ドライブを直接外気冷却出来る構造となっている。

ただ、このファンの風量とドライブベイの構造から風切り音が割と大きい。

付属の電源ユニットは、80+認証品。
電源も手がけるAntecの製品ということで品質は割と良く、ケース側面から直接外気冷却しつつ直接後方に排気することで、エアフローが電源だけで完結するよう配置されている。

なお、やはりというべきか吸気音は少々大きめ。
ペリフェラル4PIN x2、SATA電源 x3、FD用4PIN x1とドライブ搭載数からすれば十分というか、確実に余るだけのコネクタが搭載されている。

12vは2レーンで、18Aずつ。5vと3.3Vが20Aというあたりに、時代を感じる。

 

さて、ざっと中身を見てみたが、ぱっと見ではそこまで悪い印象のあるケースではない。
むしろ、HDD、CPU、電源のエアフロー分離や、取付作業に配慮したマザー固定方法など、効率的な冷却と組立てやすさが考慮された製品と言える。

結局のところ、本製品最大の欠点は現実を無視した価格設定そのものにあったと言えよう。
正直、私もこれを出始めの頃の価格で買おうとは絶対に思わないし、今回の再入手にしても、

『オークションで未使用1000円(送料別)』

だったから、手を出したようなものだ。

高級路線で強気過ぎる価格設定で、壮大な自爆をやらかした本製品以降、AntecはHTPCケースを手がけなくなってしまったが、見た目の良さや冷却構造は未だ他メーカーのHTPCより優れた点も多く、見切りを付けたのは少々残念。

是非とも再販してほしい。Fusion Remote BlackMAX を!

MAXは、出来ればBlack Versionで、電源はPlatinum対応にリニューアルとかね。
・・・ああ、レビューしといて何ですが、Microはどうでもいいです。

  • 購入金額

    2,008円

  • 購入日

    2014年07月26日

  • 購入場所

    ヤフオク

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