20世紀末一時DIVAブームなるものがあった。MISIA、
倉木麻衣、
少し遅れてCrystal Kayなどソウル~ポップスまで幅広く魅力的な女性歌手が登場した時期だ。その時期に出たシンガーはブームなだけに一発屋で終わる人達も多かったが、今でも活動を続ける実力派も多くでた。
その中でもバラードを得意とするとびきりソウルフルな歌唱力をもったシンガーが、小柳ゆき。本作「remain~心の鍵」は「あなたのキスを数えましょう 〜You were mine〜」、「my all..」、「誓い」などバラードを得意とし、感情豊かな深い声で魅了してくれた彼女の中期(10作目)のヒット作。実は最大のヒットはアップテンポな「be alive」なのだが、音程が下降するときに少しこもるようになる彼女の声の表情が最も活かせるのはスローテンポで朗々と歌うバラードだと感じる。
表題曲の「remain~心の鍵」がやはり心に沁みる。定番のヴォーカルレス(5曲目)に加えて「Rhythmless」と銘打たれたドラムとパーカッション抜き(と言っても打ち込みだが)も収められて(4曲目)それはそれで彼女の上手さを堪能できるのだが、ドラマチックさではやはり1曲目か。♪忘れない優しいあなたの顔♪という最も盛り上がった部分の声の伸びとその張り上げ方が好き、という人が多いがむしろその前の♪留守電なのに切れないすぐに/その懐かしい声♪と少し下がる部分の声の深さが印象的だ。ここがあるので、パァーッと開けたようなサビの良さが活きるというか。
「Flyin’」はビートが強いのにもかかわらず、音符の割り方がゆっくりで、朗々と歌える造りになっていて、どこかRosemary Butlerの「汚れた英雄(Riding High)」を想い出させる様な曲。こういうビートが効いた曲でも彼女のちょっと鼻にかかったようなパワーある中域が一番の魅力だな。
「always」もバラード系だがミディアムテンポでリズムの盛り上げ方と厚いコーラスでゴージャスでソウルフル。1コーラス目はほぼリズムレスで、2コーラス目からリズムが入り、ストリングスも被さってくる...といういわば「定番」の造りなのだけれど、彼女の声が負けていない。イントロで入るツリーチャイムは、まぁ、ありきたりなんだけれど、途中のブレイクのところに右から左に流れるツリーチャイムははっとするね。
この3曲いずれも作曲者が違うのに(清水泰明、Michael Becker&Bird York、笹本安詞)見事に「ゆきカラー」になっているのは彼女の声の魅力(ちなみに編曲者もバラバラなのでアレンジの統一感というわけでもない)。
2000年代後半から活動が低調だったが一昨年(2012年)ごろから再び作品発表が上がってきた。今年はPeabo Brysonとのデュエットでの作品発表も予定されている(9月)。歳を経てより深みを増した彼女の中域、また色々なところで聴けると嬉しいな。
【収録曲】
1. remain~心の鍵
2. Flyin’
3. always
4. remain~心の鍵(Rhythmless)
5. remain~心の鍵(Instrumental)
「remain~心の鍵」(Live/オリジナルのストリングス入りとは違いピアノのみのヴァージョン-ややRhythmlessに近いがこちらは元々ピアノだけで歌うように設定された編曲なので、「足りない」感じはない)
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購入金額
1,200円
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購入日
2001年頃
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購入場所
TOWER RECORDS
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