当時のオーディオテクニカ製VMカートリッジの主力シリーズであった、AT-MLシリーズの最上位がAT-ML180で、AT-ML170はその1つ下のグレードの製品となります。
このシリーズはその型式名が示す通り、ML(マイクロリニア)針を採用していることが大きな特徴でした。ML針はラインコンタクト針(深さ方向に大きい曲率と、小さな実効針先曲率で音溝に接触させて諸特性を改善する)の一種で、メーカー公称の針先寿命が1,000時間と、一般的な楕円針と比較して数倍もの長寿命を実現しているのが大きな長所となっていました。もちろん、レコードの溝に対する追従性も優れ、音質面でもチャンネルセパレーションや高域特性などが大きく改善されていました。
上位モデルとなるAT-ML180は、VM型にしては力感がやや乏しいという弱点があったものの、細身ながらしなやかさを感じさせる傾向の音質を持った製品でしたが、このAT-ML170は方向性がやや違っていました。
力感の乏しさはこちらも感じられるのですが、それ以上に目立つのは表現の淡泊さでした。AT-ML180ではアコースティック系の楽曲の雰囲気などは悪くないのですが、AT-ML170の方は妙に冷淡な音に聞こえてしまうのです。特にKENWOOD KP-9010との組み合わせでは顕著でした。YAMAHA GT-2000との組み合わせでは、淡泊さは残るものの低域方向の重量感が大きく増し、バランスは割合良くなります。
約20年前に新品で購入したカートリッジですが、未だに総使用時間は100時間にも満たないはずです。これより安い製品と比べても、何故かあまり積極的に使いたいと思うことが無い製品なのです。
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購入金額
0円
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購入日
不明
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購入場所
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