所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。声に魅力があるシンガーがいます。一声聴くだけで誰だかわかる、特徴ある声。深く包まれるような、心地よい声。玉を転がすような澄んだ声．．．そんな声の魅力を持つシンガーの作品をご紹介します。

平井堅。久保田利伸が、ややディープな方向性に半身引いて活動している今、ファンク系の男性J-POPシンガーでは第一人者かもしれない男。

彼の声は低い声も出るが、真骨頂はファルセットへ移行した高音域。綺麗な声とも、美しい声とも違う、なんとも味がある声。少し女性っぽい高音と男らしい低音の移行がスムーズなのが魅力だろうか。

そんな彼の5thアルバム、“LIFE is...”。4枚のシングルが内包される（1、5、6、12曲目）ヒットアルバム。これらのシングルは、それぞれかなり風合いの違うものだったので、それを含めて彼のイロイロな面が見える作品となっている。

「Strawberry Sex」。平井堅だからこの歌をカラッと歌えるのだろう。曲調も違うが、広い意味では同じファンク系J-POPのフィールドにいるスガシカオ

の昏いエロではなく、明るいH。♪どこにいるの？／何してんの？／愛の言葉伝えたいよ／だから／100万回のメールより／たった／一度の／リアルなぬくもりを／君とStrawberry Sex／It's a wonderful word／魔法のキスではじめよう1、2、3／Strawberry Sex／It's a wonderful word／なんだか胸がドキドキ／baby／君と朝までずっとずっと手をつないで♪スガが歌う性と、平井が歌う性は違う。なんともあっけらか～んと、ポップに歌う。無機質な打ち込みのバックに、ラッパ系だけゴージャスに生ブラス隊、というのがイイ。

つづく「REVOLVER」は、か～な～り、Deep。安室奈美恵やEXILEへの楽曲提供もするT.KURAの筆だが、日本語をこのリズムに乗せて「歌う」のは平井ならでは。ラップでもない、緩やかめの曲調で、ヘタをすると「朗読」になってしまうような抑揚のないメロディと単調なリズム。ある意味ビートが効いたノリの良い曲を歌うより難しいかもしれない。

このアルバムに触れたら触れなければならないだろう、紅白歌合戦でも歌われた「大きな古時計」。NHKの「みんなのうた」で歌われた曲で、保富康午の訳詞によるそのやさしい詞から「子供向け」のような位置づけの曲だったが、平井のソウルフルな歌声によるリバイバルで、もともとのアメリカポピュラーソングとしての立ち位置を確保した。特に無機質な機械仕掛けのぜんまいのようなリズムと、ブリッジの♪Wooo,Grandfather's Clock.. Tick-Tuck,Tick-Tuck♪というコーラスの対比の妙、平井の沁みるヴォーカルと、名手古川昌義のギターのアルペジオがつづる人生を描き出すような曲でよさを再確認。

打ち込みを上手く使って、でも「Strawberry Sex」のようにそれを前面に出したもの、「大きな古時計」のようにバックでしんしんと静かに使われるもの、とさまざまながら、それを覆い隠すほどの存在感がある平井の声に酔える。

線画の装丁が無機質でCOOL!

 

ファンク、ポップス、バラード．．．イロイロな曲調でキカイを凌駕する声の力が感じられる作品集です。

【収録曲】
1. Strawberry Sex
2. REVOLVER
3. ex-girlfriend
4. Ring
5. Come Back
6. somebody's girl
7. I'm so drunk
8. Missin' you ～It will break my heart～
9. 世界で一番君が好き？
10. メモリーズ
11. LIFE is...
12. 大きな古時計

「大きな古時計」