レビューメディア「ジグソー」

姉妹機1000Mとスペックは似てますが、音は全然違います

最初期モデルは1973年のNS-690にまで遡ります。当時の定価は6万円

1976年に690−2となり69,000円。その2年後に89,000円に値上がり。

世に言うオイルショックの影響だと思われます。

1980年に、この690−3最終バージョンがリリースされました。

定価は79000円に値下がりしています。

それぞれ、突板の種類が異なりますが、所有者でなければ判別し辛いかもしれません。

 

私の手元にあるのは、最終バージョン3シリーズ。

1974年発売の銘器NS-1000Mの影に隠れがちですが、

このNS-690シリーズも良いスピーカーです。

一回り小さな密閉型3ウェイシステムですが、サウンド傾向は全く異なります

 

ウレタンエッジを採用しているために、良い状態の個体は少ないと思われますが、補修業者に依頼して再生する価値があります

 

家具としての存在感 鳴らしやすさは、NS-1000Mより上です

更新: 2015/10/17

我が家へやってきた経緯

最初の購入者が家の建て替えを機に、このスピーカーを手放すことになり、それが友人宅に移されたのが今から15年と少し前のこと。

新しいオーナーは、既にウーファーユニットのエッジが破れていたので、ヤマハ本社修理部に送り、純正品と張り替えたそうです。

エッジの破れは、ウレタン系素材が使われている以上避けられない問題です。 決して保存・使用状態に問題が有ったわけではありません。

そのお家で5年ほど使われた後、リフォームを機により小型のスピーカーと交換することになります。

キャビネットの状態はネットも含めて、非常に良かったので、捨てるに忍びないと思った友人が

次の嫁ぎ先として白羽の矢を立てたのが、ウチでした。

 

もともと現在の愛用機たる1000Mの購入時にも、TechnicsのSB-7000、SANSUIのSP-G300と共に(JBLは高値の花でした)比較候補に上がっていたスピーカーです。

当時、お店の方が、

「690がイチバン鳴らしやすい。 でもキミが好きなJBL4343に似ているのは1000Mやな。」

と仰っていたのを思い出します。

居間に置き場所が有ったので、早速受け入れることになりました。 

更新: 2015/10/17
デザイン性

初代は、おそらくスプルース材。 ver2は栓材。 このver3は、アメリカンウォールナット。 

いずれも本杢突き板仕上げで、楽器製作のヤマハの面目躍如といえる素晴らしい仕上げです。

 

今は少なくなった5面仕上げ大型ブックシェルフスピーカー。

サランネットは紺系のシックなモノですので、ちょっと広めのリビングに家具として設置する

に十分な資質があります。

もちろんネットを外して設置しても、ノーブルな雰囲気は崩れません。

 

中高音部それぞれに付属するダイヤル式アッテネーターのデザインも、1000Mのそれとは微妙に異なります。

更新: 2015/10/17
スペック

大型ブックシェルフ

再生周波数帯域 35Hz~20kHz

最低共振周波数 40Hz インピーダンス 8Ω 出力音圧レベル 90dB/W/m

最大許容入力 80W

クロスオーバー周波数 800Hz、6kHz ネットワーク 3way、12dB/oct

レベルコントロール 中域、高域連続可変型

外形寸法 幅350×高さ630×奥行314mm

重量27kg

 

 

 

体積、重量ともに1000Mより一回り小さめです。 

対して再生周波数帯域は、5Hzだけ下方向に伸びています。 音圧レベルは同じ。

これは比較試聴すると、実感として感じることができます。

というのは、、(使用感につづく)

更新: 2015/10/17
使用感

音質を言葉であらわすと

同じアンプで駆動すると一聴瞭然なんですが、低音過多と言っても良い鳴り方です。

1000Mが中高音ユニットの振動板に、固いベリリウムを採用しているのに対して、この690番は

どの年式でも複数の繊維素材に粘弾性薬液をコーティングしたソフトドーム素材を採用しています。

 

少し前にベストセラーを記録していたVictorのSX-3は、シルクドームと呼ばれる、より柔らかい素材を採用していましたが、同傾向のソフトサウンドでした。

 

マイルスの叫びや突き抜けるソニー・ロリンズより、MJQのビブラフォンの再生を得意とします。

 

ヤマハのスピーカーは、その出自からピアノ再生が得意だと聞くことがありますが、やはり1000番と690番とでは、全く異なる鳴り方が楽しめます。

 

1000番が、グランドピアノの内部で屹立している金属フレームや、太いピアノ線の響きを思い起こさせる、解剖的なサウンドを見せてくれるとします。

対する690番は、グランドピアノというよりアップライトピアノ。

イメージは、学校の音楽室。 油引きの床、壁に寄り添う形で鎮座する黒色ではなく木目を生かしたピアノ。

鳴る音は、ガンガンではなく、「コンコン」。 ポロンポロンではないんです、コンコンとなるピアノ。 私の脳内と同じイメージを共有して戴ける方は何人おられるでしょうか?

 

あくまでも柔らかい音調に終始しますが、1970〜80年代の周辺機器やソフトのあり方を思い起こすと、調度良い調律だったような気がします。

弦の響きがキンキン、人の声が胴鳴りを伴う、トランペットは騒がしい。

そんな印象を聴き手に与えてしまいがちだった、当時の環境下で、どんなソフトも 品よく表現できるスピーカーだったのかもしれません。

 

ただ、現在の駆動力の強いアンプで鳴らすと、低域過多の印象が強いです。

設置場所、脚の高さに留意し、場合によっては天地を逆さまにするのも良いと思っています。

更新: 2015/10/17
実用性

エッジが破れていたらどうする それが問題だ

現行商品ではありませんので、私のように人様から譲り受けるか、中古ショップで入手されると思います。

まともな店舗でエッジが破れている状態で売られていることは無いと想像しますが、ジャンク品扱い、オークションモノで、購入後自分で修理を考えなくてはならないケースもあるでしょう。

 

10数年前ならヤマハ本社扱いでの修理を受け付けてくれたことが確認できますが、今はどうでしょ?

広島のサウンドデンさんなど、その種の修理を専門的に扱っておられる業者さんは全国にたくさん存在するようですが、30センチ口径の製品だと、一本あたり3万円以上かかります。

 

遺品など思い入れのある製品なら別ですが、今の御時世に量産品に対して支払える金額として、ちょっと大きめですね。

 

人口セーム皮やウレタン素材をDIY。 ダメ元でトライしてみるのも面白いかもしれません。

DIYする場合は、中高音ユニットやアッテネーター、ウーファーユニットのボイスコイル周辺の錆なども調べておかないと、泥沼にハマってしまう可能性が高いです。

 

ウチの690は、エッジ張替え後10年以上が経過していますが、現在健康体です。

人の住める環境下と、物置放置では、状態に大きな差が出ると思われます。

 

ブックシェルフ型スピーカーを床に直置き それだけはご法度。

 

スピーカー台が必要になると思うのですが、私の愛用スタンドは、片側で千円を切ります。

ケイヨーD2で売られている「踏み台」「縁側台」の類です。

適当なサイズが見つかったので、天地を逆さまにしてスピーカーとは4隅の点接触。

その接触部には、おのおの10円玉を配置してます。 最も安価なインシュレーター。

もし、設置する床が柔らかい場合は、スピーカー底部面積の2〜4倍程度のコンパネを敷く手法が、

安上がりで一定の効果を期待できます。

 

端子は昭和の匂いが漂うワンタッチ方式なので、太い芯線のケーブルは向きません。

AC電源ケーブルでも良さそうな時代の製品ですが、ベルデンなら1m・200円前後で買えます。

精神衛生上専用ケーブルが欲しい。 そんな時におすすめです。

更新: 2015/10/17
総評

愛する価値のある良品です できれば長く使って欲しい

現在の標準からすると、余りに重たく、大きなブックシェルフ型スピーカーです。

多くの場合、ウーファーのエッジに痛みが出ているでしょう。

 

しかし天然木突板仕上げの美麗な外観は、プアマンズタンノイと呼べるかもしれません。

音調も、クラシック室内楽を楽しまれる方におすすめできます。

 

スコーカー・ツィーターのタンジェンシャルエッジや振動板は、経年変化とは無縁そうに見えます。

今、このサイズで天然木突板仕様のキャビネットを入手しようと思えば、軽く数十万円は必要。

 

できれば、お手入れの上 長く使って欲しい。

愛される価値のあるヤマハの魂がこめられた良品だと思います。

  • 購入金額

    89,000円

  • 購入日

    2005年頃

  • 購入場所

    友人から譲り受けたものです購入金額は販売当時の定価です

20人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • げるねおさん

    2015/10/17

    フェレンギさん、はじめまして。

    おっしゃるとおり、センモニとは全然違う音がしますよね、このモデル。センモニよりも親しみやすい音が身上のスピーカーだと思います。特に初代はその傾向が強いと感じております。

    ウレタンエッジは経年劣化が避けられませんが、他の素材にしてしまうと全然違う音になってしまうのでやむをえないですね。環境に気を配って長持ちさせるぐらいでしょうか。

    使っている素材やパーツがセンモニより安価ではありますが、うまくまとまっている素敵なスピーカーだと思います。
  • フェレンギさん

    2015/10/17

    おぉ、超弩級スピーカーを所有なされているげるねおさんではありませんか。
    はじめまして。
    お越しくださいまして、ありがとうございます。 

    やはり他の素材に張り替えると、ぜんぜん違う音になってしまうんですね。
    なるほど。
    2000年の年越しを迎える頃、80年代にたくさん世に出たウレタンエッジ仕様のスピーカーの修理に関して、多くの相談を受けたことを思い出しました。
    ほとんど、廃棄処分。 泣けてきます。 

    今のところ、この690は健康体なので、上手く付き合っていければ良いなと思っております。
  • タコシーさん

    2015/10/17

    NS-690は微かに記憶があります
    ヤマハのデザインに参ってしまってCA-1000が欲しいときもありました
    イタリアのデザイナーを起用したカセットデッキも有りましたね
    でも購入したのはCT-1000チューナーだけです 今でも所持しています 
    飲み屋で散在してしまってオーディオに投入できませんでした...笑えます
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