レビューメディア「ジグソー」

聴き直したら結構気に入った

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。普段は裏方的存在のスタジオミュージシャンを中心に結成されたバンドというものがあります。TOTOの例をひくまでもなく、卓越したテクニックと幅広い音楽性、メンバーの経験値が曲の完成度を高め、大変良質な音楽を届けてくれることがほとんどです。“和製TOTO”とも呼ばれたバンドの再始動時の作品をご紹介します。

SHŌGUN。芳野藤丸を中心に組まれた腕利きスタジオミュージシャンバンド。1stは沖雅也主演のテレビドラマ「俺たちは天使だ!」の主題歌「男達のメロディー」、2ndは松田優作主演のTVドラマ「探偵物語」のオープニングテーマ「Bad City」および エンディングテーマ「Lonely Man」といったドラマ連動歌が多かったため、一時期かなり街に流れた。つづいて、初のノンタイアップアルバムとして芸術性を高めた3rdアルバム「YOU'RE THE ONE」を出すも、メンバーの不祥事(大麻所持)で活動停止した。

その後間歇的に何度か「SHŌGUN」の名を持つバンドは再結成されるが、フルオリジナルメンバーで再結成されることはなかった。その中でもっともオリジナル

に近かったのが本作を出したときの構成。

もともとオリジナルのSHŌGUNはギターとヴォーカルを担当する芳野藤丸とCasey Rankin(ケーシー・ランキン)によるツインギター構成にヴォーカルもとれるベーシストミッチー長岡、ピアノに大谷和夫、ドラムスは山木秀夫、パーカッション中島御と言う構成。なにより芳野藤丸とCaseyのツインギターのアメリカンな構成がCaseyの書く英詩の歌詞と合わさって特徴をなしていた。本作に先立ち再結成されたときにはCasey中心で他のメンツは参加してなく、本作以降はCaseyが不参加なので、芳野+Caseyコンビは初期の3作と本作のみとなる。本作は打楽器担当が替わっているだけで(ドラムスが山木⇒Eric Zay(実はCaseyの息子!)、パーカッションが中島⇒不在)、後はオリジナルメンバー。

しかし最初に聴いたときは「これ、SHŌGUNちゃう!」と少し聴いた後投げ出してしまっていた。でも本レビューを書くために引っ張り出して改めて聴いてみると結構よかったw。SHŌGUNがTVタイアップ曲を多く手がけ、活躍したのは1970年代末。そして本作は1997年の作品。20年近く開いている。その間のメンバーの音楽性の変化、時代の求める音楽の変化、録音技術の流行り廃り...そんなものを抜きにして「20年前のアノ音」を期待して聴いたからダメだったのだ。確かに初期のアメリカンな明るさはない。またTV受けするようなキャッチーさもそこまで強くはない。でもかみ締めるといい味出している。

「Baby You」は重い山木のドラムスだった初期の曲に比べて、硬い打ち込みのリズムが目立つ(あわせるドラムも硬い)し、途中のラップ(Caseyかな?)などもあり、芳野とCaseyのツインヴォーカルが聴けるにもかかわらず、ちょっと違う印象。曲も初期にはなかった、ヨーロッパ的暗さを持つし。似ているだけに「似て非なるもの」の印象が強かったが、改めて聞くと絡む芳野+Caseyのツインボーカルや、やや遠くで鳴る泣きのギターソロ、ミッチー長岡のベースラインの美しさなど出色のでき。

続く「俺たちは天使じゃない」は一転して明るめの曲調になり、ドラムスは(山木とはリズム感が異なるが)生っぽい録り方で、ミッチー長岡のドライヴィンなベースが気持ちいいアメリカンテイストな曲に。芳野のヴォーカルと曲間に挟まれるそこだけマイナー調のギターのリフが特徴。この曲名はデビュー曲「男達のメロディー」が使われたドラマ「俺たちは天使だ!」をオマージュしてるんだろうナァ。

「Rainy Day Lady」はフュージョンタッチの小粋な曲。Casey作詞、芳野作曲とある意味SHŌGUN王道。ギターのカッティングとセカンドコーラスから目立つようになるオブリガード、ギターソロも味わい深く、カッコイイ。コーラスのつけ方がSHŌGUNっぽさぷんぷん。

購入当時は「アレ?」ってな感じだったものが、聴きなおしてよさに気づいた。彼らに流れた20年の年月、それを許容して聴くと良い曲が多い、それに気づくのに15年もかかって損した気分。

ただ、このアルバムの翌年Caseyが脱退、彼らはその後も活動するも内容的にはオリジナルの雰囲気ととは違ってくる。そして2013年現在、ツインギターの一方で作詞の多くを手がけたCaseyとオリジナルメンバーでアレンジの中核だった大谷がすでに鬼籍に入りオリジナルメンバーでの復活は望み得ない。

もう少しこのメンツで活動して欲しかったな、と今頃思っている次第です。

真ん中の丸いマークのようなものは実は「栓」
真ん中の丸いマークのようなものは実は「栓」

【収録曲】
1.Baby You
2.俺たちは天使じゃない
3.Puzzle
4.My Only Love
5.Starting All Over Again
6.Summer Rain
7.Here Come Leroy
8.Why Don't You
9.Rainy Day Lady
10.Shame On You
11.La La La…
12.Party Line
13.風の時間

「Rainy Day Lady」


SHŌGUN Official Website

更新: 2018/01/06
必聴度

豪快でオープンなSHŌGUNではなく、COOLで哀愁ある彼等が聴ける

かつてと同じ「SHŌGUN」を求めてはいけない。アメリカンな豪放さからシティタッチの洗練へ。

時代の流れか、歳のなす業か。

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    1997年頃

  • 購入場所

11人がこのレビューをCOOLしました!

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